2015/10/16    08:00

アメリカの空母は台湾を守れるか? 次第に強まる中国の潜水艦能力

来年1月の台湾総統選をめぐって、このほど2つの大きな動きがあった。
 
1つは与党・国民党の候補者の交代。台湾では馬英九政権下の親中路線への反感が高まっており、学生が国会を占拠するデモにまで発展した。そうした中で国民党の洪秀柱候補が、中国との統一を目指すと示唆するような発言をしたことで支持率が低下し、「勝てない」と判断されての降板となった。
 
もう1つは野党・民進党の蔡英文候補の訪日だ。中国が周辺国への威圧を強める中で、親中よりも「現状維持」を路線とする民進党政権の方が、日本にとっては国防の面において心強い。蔡氏の訪日に中国が「断固として反対する」としたのは象徴的だ。“次期政権”との関係を深めるためか、安倍晋三首相も訪日中の蔡氏と面会したのではないかという噂も飛び交っている。
 
東アジアでは、覇権を維持してきたアメリカと、軍事力の拡張が著しい中国との勢力争いが始まっている。大陸中国が建国以来、奪還を悲願とする台湾が、その焦点であることは間違いない。先月の米中首脳会談では、オバマ米大統領が、アメリカの台湾支援を定めた「台湾関係法」に言及して、習近平・中国国家主席を牽制した。中国を封じ込める必要に迫られ、アメリカは今後、台湾との関係強化に動かざるを得ないだろう。
 
台湾をめぐる米中の駆け引きで思い出されるのは、1996年の台湾総統選の際、中国がミサイル発射などの軍事演習を行ったことである。初めての直接選挙で、独立志向の李登輝総統が当選する見通しだったため、これを威嚇しようとしたのだ。
 
これに対して、アメリカは2隻の空母を海域に派遣して、中国の脅しを止めさせた。中国側は「台北よりもロサンゼルスを心配した方がいい」などと、核攻撃さえチラつかせたが、アメリカは屈することなく、台湾との連帯を示したのだ。
 
この時の雪辱を期して、それからの20年の間に、中国は毎年、1割増しで国防費を増大させ、軍隊の近代化を急いできた。1996年にアメリカの空母は悠々と台湾近海を進むことができたが、今後、似たような状況が起きたとして、中国を制止することは次第に一筋縄ではいかなくなる。アメリカのランド研究所はこのほど、空母に対する中国の攻撃能力が高まっているという懸念を、レポートに記している。
 
レポートは、中国が20年前、「いかなる理性的な定義でもってしても、近代的と言えるような潜水艦は、たった2隻しか持っていなかった」と指摘する。しかし、2017年にその保有数は49隻となり、巡航ミサイルや魚雷を備えて、攻撃距離が増す。報告書は「ほとんどの中国の潜水艦はディーゼルで動いており、アメリカの基準に達しているものはないが、それでも、アメリカの水上艦船への脅威になる恐れがある」と論じている。
 
報告書は、中国による台湾侵攻の7日間にわたる軍事作戦を想定。潜水艦がその期間に、アメリカの空母を攻撃できるポジションに就くチャンスが何回あるかをシミュレーションした。1996年時点での中国の潜水艦は、レーダーや衛星、索敵機からの外部情報の有無にかかわらず、アメリカの空母を攻撃できる可能性はほぼなかった。しかし、2017年には、前記のようなレーダーなどの助けを借りれば、攻撃のチャンスは5回弱に高まるという。
 
この報告書はあくまでもシミュレーションであり、中国の潜水艦が実際にどのくらいの脅威になるかは、実戦にならなければ分からない面もある。だが一つ言えるのは、中国軍の作戦能力は着実に高まっており、台湾を防衛するための取り組みの強化の必要性が日増しに高まっていくということである。
 
日本にとっても、1月の総統選の行方と台湾の動向は、他人事ではあり得ない。安倍首相が次期総統候補と接触したと噂されていることが、その何よりの証左だろう。

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