2016/10/30    08:00

人権外交はどこまで"得"か――ドゥテルテ大統領をきちんと迎えた安倍首相

フィリピンのドゥテルテ大統領が、中国に続いて日本を訪問した。

就任以来、オバマ米大統領を「あばずれの息子」といった汚い言葉でののしるなど、アメリカに対する反対姿勢を明確にしているドゥテルテ大統領は、今回の訪中でも「アメリカとの決別を宣言する」と発言。しかも、「ロシア訪問でプーチン大統領と会談し、中国とフィリピン、ロシアの3国が世界と対峙していると伝えるかもしれない。それが唯一の道だ」とも語り、“新たな外交機軸”について語るほどの気合の入りようだった。

国内で多数の死者を出しながら麻薬撲滅を進めていることを、アメリカが人権問題だとして批判することが、よほどしゃくに触るらしい。

フィリピンはアキノ前大統領の時代に、中国が南シナ海の領有権を主張している問題で、国際仲裁裁判所から勝訴の判決を勝ち取っている。国際司法が、中国の主張をまったくの無効と認めたのだ。にもかかわらず、ドゥテルテ大統領はむしろ中国との対話路線を進め、アメリカを挑発。米比関係の先行きは見えなくなっている。

そのドゥテルテ氏は、日本に対しては好意的だ。安倍晋三首相との会談では、仲裁裁判所の判決には法的拘束力があると認め、南シナ海問題では「日本の側に立つ」と語ったという。日本側は海上安全保障を支援するために、大型巡視船を提供することなどでフィリピン側と合意した。

しかし、中国包囲網づくりを進めたい安倍首相にとって、フィリピンが中国寄りの外交政策にかじを切ったのは、頭の痛い問題だろう。アメリカの同盟国として、いかにフィリピンを「こちらの陣営」に引き留めるかという課題が生まれている。

一方で、ドゥテルテ氏が人権を無視した「麻薬との戦い」を繰り広げていることについて、日本は民主主義や人権といった価値観を重んじる国として批判すべきだという意見が出ている。

新聞各紙も論評しているが、中でも強烈な主張を展開したのは、ニューズウィーク日本版。11月1日付の号では編集長の署名記事で次のように主張している。

外国との軋轢を覚悟してでも、原理原則を守る度量があるかが問われている局面だ。ここで問題提起すらしなければ、日本のこれまでの主張に疑問符が付くだけでなく、安倍は「暴言王」ドゥテルテの前に屈した弱腰指導者のように映るだろう。

安倍はこれまで、国際舞台で民主国家としての価値を守護するとアピールしてきた。ましてや、日本は中国と対峙する上で民主主義の価値観を前面に出してきた。それを軽んじることは許されない。

オバマのように、安倍は「売春婦の息子」と罵倒されるかもしれない。だが、何も言わなかった場合に、日本が失うものは、あまりに大きい。

この論評のようなトーンで接すれば、ドゥテルテ氏との関係ははやくも決裂するだろう。記事が述べているように、オバマ大統領と同様に、安倍首相もまた「あばずれの子」などとこき下ろされるかもしれない。確かに、人権外交が政策のすべてだとすれば、こうした姿勢でドゥテルテ氏に臨む以外にあり得ない。

しかし考える必要があるのは、人権と安全保障のどちらをより重視するか、そしてそのバランスだろう。中国の覇権主義を封じ込めていく上でフィリピンとの関係が重要なのであれば、人権問題をある程度たしなめつつも、ドゥテルテ氏とも柔軟に関係強化を進めていく必要がある。

そして今回のドゥテルテ氏の訪日で、安倍首相もうまく立ち回り、フィリピンとの関係を進めることができたようだ。人権や民主主義といった価値観で、ドゥテルテ氏の国内政策を切り捨ててしまうことは簡単だ。しかし、「親日家」をアピールしている就任間もないドゥテルテ氏を、いきなり門前払いしてしまうことで、日本は何を得られるのだろうか。フィリピンを完全に中国の側に追いやってしまえば、それこそ、「日本が失うものは、あまりに大きい」。

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