2016/05/05    08:00

沖ノ鳥島を「岩」と言い始めた台湾の背後に中国はいるか?

5月20日に民進党の蔡英文氏が台湾の総統に就任することは、日本と台湾の絆がさらに深まる時代の幕開けを告げることになる。
 
新政権の発足の日が近づく中で、目立っているのは、退場する国民党政権によるけん制とも見られる動きだ。特に、先月、沖ノ鳥島周辺で台湾漁船が違法操業によって拿捕された問題について、馬英九政権の強硬な抗議の姿勢が目立っている。
 
沖ノ鳥島については日本がこれまで護岸工事を行ってきたことで、中国や韓国が同島を「島ではなく岩だ」と主張してきた。台湾はこの問題について見解を示してこなかったが、馬政権は今回、「国連海洋法条約にある居住に適応するとの条件を満たしていない」などとして、「島ではなく岩」と主張し始めた。
 
周辺海域には、巡視艇を派遣して「漁民の保護」に努めるという。軍艦の派遣も検討しているという。
 
新たに就任する蔡政権のもとで、日台関係が前進するものと見られていたこともあり、馬政権は最後の最後で日本との火種をつくって新政権の足を引っ張りたいのだろうか。国内の政争としてだけで見れば(少々、事が大きいにしても)、理由は分からないでもない。
 
しかし、これはあくまで状況証拠のみの推測でしかないが、もし万が一、馬総統が中国側と結託して、日台関係を妨害しようとしているのならば、日本にとっても見過ごせない問題だ。
 
中国はこれまで、民進党政権を阻止しようという露骨なまでの野心を見せてきた。総統選での国民党の劣勢が伝えられる中で、昨年11月には習近平・国家主席が馬総統と首脳会談まで行って見せた。中国政府が台湾を国として認知していないことを考えれば、中国は異様な執念を見せてまで、国民党の勝利にこだわったということになる。
 
総統選が終わってからは、台湾に対して冷たい態度を取って、民進党政権に圧力をかけている。OECDが先月開いた国際会議では、中国の抗議によって台湾の代表団が一部の会議に参加できなかった。また、外国で強制送還の措置を受けた台湾人が、台湾ではなく中国本土に送還される問題も起きており、中国側からの圧力があったのではないかと指摘されている。
 
こうした状況を踏まえれば、台湾の馬政権が日本に強硬な姿勢を取っているのは、背後で中国が意図を引いていることも一因ではないかという疑いが湧いてくる。しかも、問題の焦点は、何を隠そう沖ノ鳥島の問題なのだ。
 
中国は南シナ海で人工島を建設し、軍事拠点に変えようとしていることで、国際的な批判にさらされている。アメリカは「航行の自由作戦」と名付けた艦船の派遣などを行っており、日本も今後、この作戦に加わる可能性がある。そこで、日本に二の足を踏ませるカードともなり得るのが沖ノ鳥島だ。
 
日本が護岸工事を行うなど保全に努めてきた同島をめぐって、台湾との間で「島か岩か」という論争が大きくなり、国際社会の注目を集めるようになれば、中国にとっては、南シナ海で自身が行った人工島建設を日本も行っていると強弁することができる。それによって、南シナ海のパトロールに日本が加わることをけん制することもできるだろう。
 
実際に昨年、南シナ海の埋め立てを批判された中国の王毅外相が、沖ノ鳥島を引き合いに「日本は他国のことに口を出す前に、まず自国の言ったこと、やったことを省みたほうが身のためだ」と発言している。
 
台湾が他でもない沖ノ鳥島をめぐって日本と騒動を起こすのは、中国にとってはとても都合の良い話だと言うことができる。台湾の馬政権が実際に中国本土のために日本に対して強硬姿勢を取っているのかは分からないが、疑ってみるべき理由はある。
 
中国本土による嫌がらせは、蔡総統が発足した後には、さらに本格化していくことだろう。それはつまり、台湾が日本やアメリカと接近していくことが、中国にとっていかに脅威かの裏返しでもある。新政権の発足を契機に、日米と台湾がさらに結束を固めて、アジアの平和と安定のために取り組む時代が来ることを期待したい。

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