2015/08/26    07:00

「SEALDs」と仲間たちの亡国戦略 核の話はどこへ行った?

日本で核兵器の議論となれば、広島・長崎の平和運動や、「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則の問題になる。いずれも、被爆国として核兵器の廃絶という人類の悲願に対して、一歩の後退もなく進んでいかなければならないという文脈で議論される。最近では、ロシアのプーチン大統領がクリミア制圧時に核兵器の使用も想定していたという報道があり、これに対しても「被爆国としての日本の国民感情を傷つけた」といった論評があった。

国会で議論されている安全保障関連法案の審議においても同様だ。5日の参院特別委では、民主党の白真勲議員が、自衛隊が米軍の核ミサイルを運搬することはできるかと質問。中谷元・防衛相が「法令上は可能だ」という見方を示すと、翌日からはやはり、「被爆者たちの思いを逆なでするような発言」(毎日新聞社説)といった批判が相次いだ。

核兵器の使用が甚大な被害を及ぼすことは実証済みであり、「被爆国としての日本は、核廃絶とどう向き合っていくべきか」という議論そのものは、大切なものと言える。しかし、「核廃絶は人類の悲願」とばかり言っていては、見落としてしまう現実もある。今日の国際社会で、核兵器は依然として国防のための最重要の道具であるからだ。

米ウェブメディアの「ワシントン・フリー・ビーコン」が報じたところによると、中国は広島原爆の日である6日に、大陸間弾道ミサイル「東風-41(DF-41)」の発射実験に成功した。3年間で4回目の成功だという。米国防総省が早ければ今年にも実戦配備されると見込むこのミサイルは、12,000kmから15,000kmの射程を持ち、アメリカ本土を脅かすことができる。複数の核弾頭を搭載して、攻撃の威力を高めたり、複数の対象を狙えるタイプだ(MIRV)。

記事では、国際分析戦略センターのリック・フィッシャー上級研究員が「つまるところ、中国は新たな段階に入った可能性があり、核弾頭の数は急速に増加するだろう」と述べている。

安保法案をめぐる議論では、賛成派は東シナ海や南シナ海での「中国の軍事的な脅威」を強調しているが、それに対して反対派からは「対話を通じて解決すべきで、軍事に頼るべきではない」という意見が聞かれる。しかし、議論から抜け落ちているのは、「中国の脅威」というのは、その最大の要素である核戦略を措いて議論できないという点だ。中国が南シナ海に触手を伸ばすのも、同海域に原子力潜水艦を配備して、アメリカを核ミサイルで脅そうするという戦略の一環でもある。しかし、アメリカの核の密約はやり玉に挙がっても、「中国の核」についての話は一向に聞こえてこない。

法案反対派は、「アメリカの戦争に巻き込まれる」というリスクについて、盛んに議論している。しかし、日本が自前の核抑止力を持たないのならば、現時点で、アメリカの「核の傘」に頼るほかに日本を中国の核の脅威から守る選択肢はない。こうした大きな戦略もあって、日本はアメリカと同盟を組んでいる。そうであるなら、核戦略について何も触れることなく、「アメリカの紛争に巻き込まれる」とだけ言い立てれば、一般の国民の目からは、日米同盟の意義がさっぱり分からないことになる。「日本は守ってもらっている」という事実を考慮に入れなければ、「日本はアメリカのポチにされて、自衛隊員が死ぬ」という、日本共産党や他の野党が提起する一方的なイメージばかりが広まっていくことになる。

安保法案に反対するデモのPR広告では、安倍政権への反対の言葉とともに、「NO NUKE」「脱原発」といった反核・反原発のスローガンが、どこかに記載されているのをよく見る。そして、協力団体の中には必ず、原発ゼロに取り組んでいる団体が堂々と名前を連ねている。最近では学生団体「SEALDs」などが目立つ一連の「市民運動」は、安保法案と原発を、一緒に葬り去りたいようだ。しかし彼らは、アメリカのポチが嫌なのであれば、日本は自国で核抑止力を持たなければならないという事実を無視してしまっている。「アメリカは嫌い、だが原発ゼロで核抑止力も持たない」というのであれば、日本はどうやって国を守っていくのだろうか。国会前に集まっている市民運動の声に沿って国防政策を進めることが、亡国の道であることはハッキリしている。

国際社会で核兵器が持つ意味をとらえないことには、「中国の脅威」をめぐる議論も、今回の安保法案の審議も、国防政策のあらゆる議論が迷走するだけになる。国民の生命と、この国の独立を考えるならば、大きな戦略に立って、日米同盟と中国の核戦略について考える必要がある。

また、先ほどアメリカの「核の傘」について言及したが、このまま中国が核開発を進め、アメリカに対する核抑止力を強化していけば、日本を守っているアメリカの「核の傘」の威信は、揺らいでいくことになる。それは、日本として、核のレンタルか、自前で核抑止力を構築するか、真剣に検討しなければならない時が迫っていることを意味している。

その際にも、今日のような噛み合わない議論が延々と続くのだろうか。そう考えると、背筋が寒くなるばかりだ。そしてその時、ほくそ笑むのは中国共産党である。

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