2016/01/07    22:50

北朝鮮の“水爆”実験を歓迎する

会見する中国の華春瑩・外務省報道官。

 


北朝鮮の国営メディアは6日、同国が水爆実験に成功したと発表した。北朝鮮の核実験は4回目で、金正恩体制になってからは2回目となる。

もっとも、爆発の規模が小さかったことから、本当に水爆による実験だったのかについては、懐疑的な見方が出ている。これまでの原爆を強化した「ブースト型」だったのではないかという見方だ。とはいえ、今回の実験が水爆によるものでなかったとしても、核弾頭を小型化し、アメリカまで届くミサイルに積めるようにしようという北朝鮮の核開発事業は、これでまた一歩、進展したようだ。

アメリカはジョン・ケリー国務長官が、今回の実験を「国際平和と安全への重大な朝鮮であり、国連安保理の複数の決議に違反するものだ」という声明を発表し、核実験を非難した。今回の核実験を受けて、アメリカは北朝鮮に対する新たな制裁を検討するが、どこまで本気で北朝鮮に対峙するのかは不透明だ。
 

制裁は金正恩からシャンパンを取り上げる。それだけ。

そもそもいくら制裁を課したところで、北朝鮮に核兵器を諦めさせるのは容易ではない。「いかに前進するかについての金正恩の考えは、核抑止力こそが、北朝鮮の経済発展のための安全な環境を創りだすための唯一の方法だという考え方を前提にしているように見える」(米外交問題評議会スコット・スナイダー上級研究員)。体制の温存こそが絶対である北朝鮮にとって、核開発は生命線であり、これをやすやすと放棄することは考えづらい。

結局のところ、いくら「朝鮮半島の非核化」をお題目のように唱えたところで、金一族をトップとする現在の独裁体制を葬り去ることを真剣に考えない限り、それが実現することはないだろう。制裁を科すにしても、北朝鮮の体制を崩壊させることも辞さないという決意がなければ、非核化への流れを創るだけの効果は上がらない。

韓国の国民大学校教授のアンドレイ・ランコフ氏は、北朝鮮が核開発を諦めることはないという認識を示し、制裁について次のようにシニカルな見方を投げかける。

国連安保理は緊急会合を開き、北朝鮮を対象にした制裁を導入するだろう。そのような制裁は、政治家たちが有権者に、危険な国家を考え得る限りの方法で罰していると説明することの助けにはなるだろう。それはたとえば、(北朝鮮の)指導者層からヘネシーコニャックやゴディバのチョコレートを取り上げたりすることだ。騙されやすい有権者なら、賛成してなだめられることだろう。しかし実際には、そのような方法は、まったくではないにせよ、ほとんど効果がない。

ランコフ氏はさらに、「もちろんトップの指導者層は、シャンパンを入手できなくなるかもしれない。しかし、彼らの目にはそれは、ムアマー・カダフィやサダム・フセインのような(倒された独裁者らがたどった)運命から逃れるために支払う、小さな額にに過ぎない」と、どこまでも皮肉を続ける。

北朝鮮がミサイル実験や核実験といった挑発的な行動を取るたびに、各国は「安保理決議への重大な違反」「世界平和への脅威」「国際社会への挑戦」と、型にはまった声明を発表する。今回も同じだ。そして、とりあえずは制裁を科すかもしれない。しかし、いくら「朝鮮半島の非核化」と言ってみても、北朝鮮がそれで核開発をやめるには至らない。何年かすれば雪解けムードが来て、制裁は緩み、北朝鮮の体制は生き残る。そして、このサイクルが繰り返される。北朝鮮は核開発を続け、脅威は膨らんでいく。
 

「結局は中国頼み」のサイクル

本腰を入れて制裁に乗り出さない限り、結局のところ、北朝鮮対策は中国頼みということになる。北朝鮮の挑発行動のたびに、「いかにして中国に北朝鮮を説得してもらうか」という議論が必ず聞かれるが、これも、以前からのお馴染みのサイクルだ。しかし、中国にとって北朝鮮は、38度線よりも北に米軍が駐留することがないようにするための防波堤として機能している。中国との窓口となってきた張成沢を北朝鮮が粛清してから、中朝関係は基本的に低調なままだが、だからといって中国が北朝鮮をすぐに“捨てる”わけではない。

中国も表向きには、「朝鮮半島の非核化」というゴールを、アメリカなどと共有している。しかし、いくら頭痛の種だとはいっても、北朝鮮は依然として、中国の戦略にとって重要なアセットの一つなのだ。

もし仮に、中国が北朝鮮に対する戦略が変わることがあるとすれば、それは北朝鮮が中国自身にとって、許しがたい脅威になる時だろう。北朝鮮が挑発的な行動を繰り返すことで、米軍が朝鮮半島でのプレゼンスを拡大させたり、韓国や日本さえも核抑止力の保有を検討するようになるなら、中国にとっては脅威が増えることになる。あるいは、北朝鮮が中国を核で脅す可能性が出てくるような場合だ。そうなれば、朝鮮半島の非核化を目指す日米韓の取り組みに、中国が加わることも長期的にないとは言えない。

しかし、その日が来るためには、中国でさえも堪忍袋の緒が切れるほどの脅威に、北朝鮮が“成長”しなければならない。「中国の合意を取り付けて、朝鮮半島の非核化を目指す」ということが既定路線になっている国際社会は、そうした時まで、このまま待っているつもりなのかもしれない。制裁のジャブばかりを繰り出し続けても、北朝鮮の体制が核開発を放棄することはまずないのだから。

もしそうした腹づもりであるなら、確かに今回の核実験で北朝鮮の脅威はさらに拡大し、中国にとっても悩ましい問題が増えた。国際社会として中国が心変わりするまで本気で待つつもりなら、むしろ各国は「安保理決議への重大な違反」などというお定まりのフレーズを述べるよりも、今回の実験を歓迎した方が、実は理に適っているのかもしれない。

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