2016/08/31    15:44

アベノミクス、今度は遠距離カップルまで支援

「遠距離恋愛のカップル」と聞くと、昭和の終わりから平成の初めにかけて流行ったJR東海のCMを思い出す。

当時はまだケータイ電話も無く、遠く離れた場所で暮らす男女が恋愛を続けるのは難しかった。新幹線を使ってデートするのも交通費がかかり過ぎるし、結婚するなら女性の方が仕事をあきらめるしかなかった。

大流行した歌がバックに流れるCMは、厳しい現実に向きあう若者に、少しばかりの夢を見させてくれたのだった。

あれから30年――「一億総活躍社会」の実現を目指す安倍政権は、結婚しても子供を出産しても、女性に働いてもらいたいという。日本の経済を建て直し、年金制度を破綻させないためには、なんとしても少子化に歯止めをかけなければならないからだ。

ということで考えついたのが、遠距離恋愛をするカップルへの経済支援らしい。

遠距離で交際する男女が2人とも仕事を続けられるように、結婚して同居するための転居費用や同居できない場合の交通費を、所得税などの軽減対象とするよう、内閣府が2017年度税制改正要望に盛り込む方針を決めたそうである。

しかし、一時的な、わずかばかりの減税措置を受けられるというだけで、「遠距離」以外の様々な困難を乗り越えてまで、結婚や出産をあっさりと決断できる男女――特に女性が、今の日本にいったいどれくらいいるのだろうか。また、遠距離交際が何年も続いても、ずっと軽減措置を受けられるのだろうか。「遠距離恋愛」であると、どうやって証明するのだろうか。

そもそも、あえて遠距離恋愛を続けているということ自体が、男女それぞれが「今の仕事や職場環境を捨てて結婚する気が無い」という意思表示ではないのか。

安倍政権は、このほかにも、「長時間労働の是正」や「同一労働同一賃金の実現」、「月末の金曜日は午後3時に退社して買い物や旅行をしろ」といった労働政策を進めようとしているが、なぜ個人の働き方や恋愛・結婚・出産のあり方にまで国の指示を受けなければならないのか、理解に苦しむ。

安倍首相としては、国民に優しく救済の手を差し伸べているおつもりなのかもしれないが、「税金を安くしてもらいたかったら、政府の言うとおりにしなさい」などというのは、一種の脅迫を伴った全体主義政策ではないのか。

「平等」の実現にこだわるあまり、個々人の選択の自由や創意工夫の余地、自助努力の楽しみを認めない国家は、息苦しいものになってしまうだろう。

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