2016/02/03    10:00

マイナス金利に見た、アベノミクスの信念

日銀がマイナス金利を導入したことの余波が、すでに出てきている。横浜銀行などの複数の銀行は、預金の金利を過去最低の水準に引き下げた。日銀による金融緩和で、10年物の国債をはじめとする長期金利が低下しているからだ。「お金を預ければ、利息が付く」という資本主義の当たり前の原理が、異次元の金融政策によって揺らいでいる。
 
しかし、日銀がマイナス金利を導入したことそのものは、驚くにはあたらない。ここまで安倍政権は、日銀にじゃぶじゃぶとお金を大量に刷らせて、株高と円安をつくる経済政策を取ってきた。消費税率の引き上げで景気の腰は折り、規制緩和などには及び腰だから、ほとんど金融政策に頼ったままの経済運営に終始している。
 
そうした中で、日銀としては後ろ倒しになっているインフレ率2%をなんとか達成する必要があるため、財政政策の後押しがないなら、さらなる金融緩和に手を出さざるを得ない。マイナス金利という手法そのものは異例と言えるが、これまでのアベノミクスの延長線上にある政策と言える。官邸側も追加緩和を日銀に期待していた節がある。
 
むしろマイナス金利の導入で際立ったのは、安倍晋三首相の信念の強さではないだろうか。これまでの政策をあくまでも貫き、金融緩和の一本やりで、消費税率引き上げの旗も降ろさない。まさに「この道しかない」と信じているということだろう。
 
問題は、「この道」が正しいのかどうかだ。政治の世界でよく言われる格言に、「狂気というのは、同じことを繰り返していながら、違う結果を期待することである」というものがある(アインシュタインが言ったとも言われる)。金融緩和ばかりを繰り返し、来年4月に消費税率の引き上げを再び行って、それでも景気が良くなっていくといまだに信じるならば、安倍首相の「この道しかない」は念仏でしかなくなってしまう。
 
ここで重要なのは、アベノミクスがなぜつまづいたのかに目を向けることだろう。本来ならば、異次元緩和と財政出動によって政府が率先して経済を再スタートさせ、規制緩和によって民間経済を活性化させるはずだった。しかし、消費税率の引き上げによって回復しかけた景気に水をかけたのがそもそもの元凶である。
 
軽減税率の議論よりも、いま一度、景気をいかに立て直し、経済成長の道をつくるかを議論しなければ、増税によって景気が冷え、それを穴埋めするために金融緩和するという、際限ないサイクルに陥っていく。それによって、被害をこうむるのは誰だろうか。それは、金融緩和による株高で恩恵を受ける大企業を横目に、給料が増えずに苦しむ国民ではないだろうか。
 
アベノミクスで鮮烈なカムバックを果たした安倍政権はここまで、目立った失政もなく堅調な支持率を維持している。しかし、金融緩和にしか頼るものがない経済運営は、策が尽きようとしており、時限爆弾を抱えながら走っているようなものだ。本気で景気の立て直しを考えなければ、いずれ、経済運営に失望した世論が愛想を尽かすかもしれない。マイナス金利の導入は、時間切れが迫っていることを確かに物語っている。

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