2016/02/13    08:00

【社説読み比べ】 日銀のマイナス金利――「大賛成」は読売のみ

日本銀行は、2月16日以降、銀行が日銀にお金を預けた場合、年0.1%の金利を支払わなければならなくなる「マイナス金利政策」を開始すると発表した

市場の金利水準が下がることによって、企業や個人が借り入れを増やし、投資や消費が拡大することを狙った政策だと、黒田東彦・日銀総裁は説明した。

主要各紙が、社説でその是非について論じているので、読み比べてみる。
 

読売:日銀の決意を評価

読売新聞は、「物価目標を達成し、デフレ脱却を確実にする強い決意の表れだろう」と、ほぼ全体的に日銀の決定を評価する論調だ。

一方で、「ただ、その効果は限定的だとする見方もある」と、否定的な見解も紹介し、「日銀が景気を下支えしている間に、政府は成長戦略を充実させるとともに、実行を急ぐべきだ」と結論づけている。

物価目標を達成し、デフレ脱却を確実にする強い決意の表れだろう。(中略)

マイナス金利には、民間金融機関に、より積極的な融資を促し、企業の設備投資などを活性化する狙いがある。欧州中央銀行(ECB)なども導入済みの政策だ。

ただ、その効果は限定的だとする見方もある。巨額の内部留保を抱える大企業は、資金不足で投資を控えているわけではない。

日銀に「手数料」を払う金融機関の収益圧迫も心配される。決定が僅差の表決となったのも、こうした疑念があったためだろう。

だが、金利水準が全体的に下がれば、リスクをとっても利益を得たい投資家の動きが活発となり、円高の防止や株価を押し上げることが期待できるのではないか。

中小企業やベンチャー企業は、資金調達が円滑になり、新事業への投資拡大などが望めよう。

無論、金融政策だけではデフレ脱却の達成はおぼつかない。日銀が景気を下支えしている間に、政府は成長戦略を充実させるとともに、実行を急ぐべきだ。
(読売新聞 「(社説)日銀追加緩和 脱デフレの決意示す負の金利」 2016/01/30)

 

産経・日経:日銀頼みにせず市場の活性化を図れ

産経、日経の両紙は、デフレ対策としてのゼロ金利に理解を示しつつも、金融政策頼みの限界を指摘する内容になった。

産経新聞は、「脱デフレ」に向けた決意を評価しつつも、日銀がマイナス金利政策を決めたことが、「安倍晋三政権が期待するほどには経済再生を果たせていないことを示し」たと分析し、「企業が投資に及び腰なのは、経済成長に確信を持てないからだ」と述べている。

そして、景気低迷の「打開のためには、金融政策だけでなく、企業の生産性向上などで経済を早急に底上げ」する必要があると述べている。

世界市場の混乱で脱デフレが滞る事態を絶対に避けるという、強い決意の表れである。同時にこれは、安倍晋三政権が期待するほどには経済再生を果たせていないことを示している。

問題は、これが十分な政策効果を発揮するかどうかだ。金融頼みには限界がある。ましてマイナス金利は、銀行の収益を圧迫するなど副作用も懸念される劇薬だ。実需が盛り上がらなければ、経済の好循環には結びつくまい。

規制緩和などで企業活動を後押しし、民間が前向きな経営に徹する。官民のこうした取り組みを着実に進めることが、アベノミクスを再加速し、強い経済を実現する前提なのは言うまでもない。(中略)

日銀の金融政策の行き詰まりも指摘されていた。脱デフレの機運を低下させないためにも、あらゆる手段で目標を達成する姿勢を示すべきだと判断したのだろう。(中略)

すでに金利は歴史的な低水準である。それでも企業が投資に及び腰なのは、経済成長に確信を持てないからだ。だから海外市場が揺らげば、すぐ国内に跳ね返る。

その打開のためには、金融政策だけでなく、企業の生産性向上などで経済を早急に底上げしなければならない。
(産経新聞 「【主張】マイナス金利導入 日銀頼みの限界忘れるな」 2016/01/30)


日経新聞も、日銀の対応に理解を示しつつも、「マイナス金利の導入は資金供給の『量』を増やす政策に限界がある面も示したといえる」と指摘。「0%台に低迷している日本経済の潜在成長率を金融政策で上げることはできない」ため、「15年度補正予算を速やかに執行して景気を下支えすることも忘れてはならない」と述べている。

さらに、世界の金融市場を安定させるために、「日中両国には世界経済の安定に向け緊密に協議する責務がある」と提言している。

日本経済が再び物価の持続的な下落であるデフレ局面に戻る事態は避けなければならない。そのたの日銀の対応は理解できる。

しかし、日銀の金融緩和だけで経済を持続的に改善させるのは難しい。政府は成長戦略を加速するとともに、経済の下押し要因となっている金融市場の安定に向け、20カ国・地域(G20)での政策協調の議論を促すべきだ。(中略)

2回にわたる異次元緩和の下で日銀は国債を大量に買い入れ、いまや国債残高全体の3割超を保有している。マイナス金利の導入は資金供給の「量」を増やす政策に限界がある面も示したといえる。

東京市場ではひとまず株高・円安が進み、長期金利は一時0.1%を下回った。しかし、0%台に低迷している日本経済の潜在成長率を金融政策で上げることはできない。アベノミクスで金融緩和ばかり目立つ状況は好ましくない。

政府は法人実効税率を着実に引き下げつつ、労働や農業分野などの岩盤規制の改革の手綱を緩めてはならない。内容に問題は残るものの、15年度補正予算を速やかに執行して景気を下支えすることも忘れてはならない。(中略)

日銀によるマイナス金利導入は、金融政策の面から世界経済を下支えする主要中央銀行の対応の一環ととらえることもできる。

世界的な金融市場の安定に向けた今後のカギは、世界第2位の経済大国となった中国を巻き込むことだ。G20レベルでのグローバルな協調体制づくりにむけた協議が必要となる。(中略)

市場は不確実性を嫌う。まずは中国当局が今後の資本取引の自由化、人民元の国際化に向けた行程表を示し、G20として必要な支援をしていく方向性を打ち出してはどうか。もちろん国有企業改革なども急いでほしい。

中国はG20の議長国、日本は主要7カ国(G7)の議長国だ。日中両国には世界経済の安定に向け緊密に協議する責務がある。
(日本経済新聞 「(社説)日銀頼みにせず市場安定へ協議を」 2016/01/30)

 

朝日・毎日:金融政策は手詰まり?

今回のゼロ金利導入に懸念を示したのが、朝日、毎日の両紙。

朝日新聞は、「いま歴史的な超低金利のもとでも銀行が貸し出しを大きく増やさないのは、企業の資金需要が乏しいから」だと、今回の日銀の政策の効果を疑問視している。

そして、「実体経済に効果を発揮する政策手段はもはや限られ、効果がはっきりしない政策に頼らざるをえなくなっている」と批判している。

しかし、いま歴史的な超低金利のもとでも銀行が貸し出しを大きく増やさないのは、企業の資金需要が乏しいからである。その根本的な問題がマイナス金利の導入によって解消するわけではない。

また、この手法は銀行が金利コストを預金者に転嫁し、預金金利までマイナスにしてしまう可能性がある。

こうした問題があるため導入は難しいとみられてきた政策なのだが、金融緩和手法の手詰まりが課題となっていた欧州中央銀行が2年前に採用。これまでの運用では大きな混乱がなかったことから、日銀も採用を決めた。

とはいえ欧州中銀をはるかに上回る規模で量的緩和をしている日銀では、当座預金残高が250兆円と大きい。マイナス金利の影響をはかりかねる面もある。

このため、きのうの日銀の金融政策決定会合では新政策導入の賛否が9人の審議委員で5対4の僅差(きんさ)だった。こうした経緯から、実体経済に効果を発揮する政策手段はもはや限られ、効果がはっきりしない政策に頼らざるをえなくなっている日銀の苦しい事情が見える。

黒田東彦総裁は記者会見で「2%物価目標の実現のためなら必要なことは何でもやる」と改めて強調した。とはいえ国民の期待に働きかけるこの手法を延々と続けていていいのか。
(朝日新聞 「(社説)マイナス金利 効果ある政策なのか」 2016/01/30)


毎日新聞は、今回の日銀の決定は、「従来の異次元緩和策が期待した効果を上げずに行き詰まったから」だと述べている。

また、「金利はすでに超低水準にあり、わずかな追加的低下が、設備投資や消費を刺激して物価を押し上げるとは思えない」と、その効果についても疑問視している。

日銀が「マイナス金利」という新たな緩和策を打ち出した。普通はお金を借りる方が貸す方に金利を払うが、マイナス金利は逆だ。借りる方が借りるだけ得をし、貸す方が損をする。金融の常識が根底から覆る領域に日銀は足を踏み入れた。(中略)

ひとことで言えば、従来の異次元緩和策が期待した効果を上げずに行き詰まったから、である。

日銀は窮地に陥っていた。2013年4月に「2年で2%達成」と宣言したインフレ目標は、3年になろうというのに射程に入ってこない。14年10月に大規模緩和の第2弾を実施したにもかかわらず、である。

一方、黒田総裁は「必要になればちゅうちょなく追加の緩和を実施する」と断言し続けてきた。今の経済や金融市場を眺めると、14年10月の追加緩和時より懸念材料は多い。ここで何もしないと説明がつかず、株価が一段と下がる心配もあった。

とはいえ、これまでの大規模緩和はほぼ限界状態にある。第3弾を今実施すれば、「日銀は手持ちの弾薬を使い切った」と受け止められ、市場の不安をあおる恐れがあった。

日銀は、今回の政策により、民間の金利が押しなべて下がる効果があると説明する。しかし金利はすでに超低水準にあり、わずかな追加的低下が、設備投資や消費を刺激して物価を押し上げるとは思えない。
(毎日新聞 「社説:マイナス金利 苦しまぎれの冒険だ」 2016/01/30)


マイナス金利政策には、民間銀行が日銀に“貯め込んでいる”お金を引き出させて、市場に出回らせようという意図がある。

しかし、なかなか景気が上向かないのは、国民のマインドが冷え切っていて消費行動につながらないからだ。政府がやるべきことは、個人や企業が将来に向かって景気が良くなってゆくと信じ、自由な発想で経済活動ができるよう、補正予算などによって景気を下支えしつつ、大胆な規制緩和を実施することではないだろうか。
 

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