2016/04/14    17:00

「パナマ文書」問題の答えは、減税であるべきだ

「江戸っ子は宵越しの金は持たない」とはよく言ったものだが、実際には、なるべく安い買い物を選んで節約に励み、手元にお金を残そうとするのが、人間の習性かもしれない。庶民であれば、「100円ショップ」などの強い味方がある。景気が悪くなれば、ランチの定食をコンビニ弁当に変えるサラリーマンが相次ぐ。
 
アベノミクスの登場で、いったんは「ちょっと贅沢しよう」という空気が生まれたが、今ではそれもしぼんでしまった。景気が上向かない中で、消費者の節約志向に反応して、いつからか「安さ」の代名詞になった吉野家の牛丼は、再び値下げになるという。
 
庶民なら「100円ショップ」に行くところが、もう少しお金持ちになると、「なるべくお金は払いたくない」という人間の性は、さらにスケールが大きくなる。持っている資産を海外の税金の安いところに移したりといった手段がそれだ。そもそも稼ぎは自分のものなのだから、他人に持っていかれるのは、なるべく少ない方がいい。
 
この頃では、ペーパーカンパニーの設立などによって課税逃れを助けていた、パナマの法律事務所からクライアントの情報が流出し、世界的な騒ぎになっている。「パナマ文書」と呼ばれるそのドキュメントには、中国の習近平・国家主席や、ロシアのプーチン大統領、イギリスのキャメロン首相といった各国のリーダーたちの親族らの名前も見つかっており、各国で政変になりそうな雰囲気だ。早々と辞任した首相も出ている。
 
確かに、本来なら税金を課す側が、課税を逃れようと海外に資産を移していたとすれば、たとえそれが違法ではなかったとしても、モラルが問われる。しかしこの問題をきっかけに、「俺たち庶民は苦しんでいるのに、金持ちは税金を逃れやがって」と、抜け穴をふさぎ、富裕層の課税を強化する動きが強まるだけなら、問題の根本は解決しない。
 
そもそも、自分で稼いだお金は、自分のお金であって、それを守ろうとするのは、人間の当たり前の性であり、権利でもある。この前提は、お金持ちも貧乏人も変わらない。もし、世界のリーダーたちが大挙して資産を国外に移して、自分たちの稼ぎを守ろうとしているのならば、なぜ彼らがそうしようとするのかも考えなければならない。
 
もしも自国の税金が安く、税制がシンプルで納めやすいのであれば、彼らが国外に資産を移す必要性は低くなる。自国の税金が安いなら、わざわざ手間をかけて国外の「タックス・ヘイブン」を活用する必要はないのだ。もしこのことを無視して、「政府は富裕層の課税を強化せよ」という主張に走るだけならば、それは、「自分で稼いだお金は、基本的に自分のもの」という考え方をないがしろにすることにつながる。政府が国民の財布に手を突っ込むのは最小限にすべきで、それは相手が金持ちであろうが貧乏人であろうが変わらない。
 
「金持ちだけ、税金逃れをして」という感情はよく分かるが、だからといって「金持ちを処罰せよ」と言えば、それは政府がますます国民の稼ぎを巻き上げることを認めることと、表裏一体だ。「いかに抜け道をふさぐか」を考えるにしても、それと同時に、どれくらいの税金ならみんなが負担感なく収められるかも考えなければならない。「パナマ文書」が世界的な問題なのであれば、減税と税制のスリム化の運動もまた、世界的なムーブメントになるべきである。ここで、「持てる1%と持たざる99%」という叫びに身を委ねれば、お金を稼ごうとする人は減っていくだろう。
 
政府の人間でさえも、課税逃れをしようとするのだから、きっと税金が高すぎるのである。

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