2016/06/04    08:00

必要なのは、アベノミクスの再定義――「何でも屋」経済政策でいいのか

自民党の高村正彦・副総裁は、消費税の増税を先送りする方針を、30日に安倍晋三首相から聞いた時に、次のように述べて反論したという(5月31日 朝日新聞)。
 
「消費税を予定通り上げた上で、財政出動の大盤振る舞いで消費を喚起するのがいい」
 
この発言は、永田町のかいわいではよく聞かれる認識の一部を代弁しているのかもしれないが、いくつか疑問がある。
 
まずは、「大盤振る舞い」するためのお金は、そもそも誰のお金なのかということ。税金は「国費」と言われるが、実際には所有者の曖昧な「国のお金」ではなく、国民が働いて納めたものである。次に、財政再建のために増税を行うはずなのに、そこで「大盤振る舞い」をしてしまうのは、元々の趣旨に反しているのではないかということ。
 
本気で財政再建を成し遂げたいのなら「大盤振る舞い」は慎むべきだし、景気を良くしたいのであれば、増税は正しい方法ではない。「経済成長と財政再建の両立」という都合の良い言葉が聞かれて久しいが、「二兎を追う者は」という古来の知恵は、どうやら官僚がつくるペーパーに書いてはいないらしい。
 
もっとも、高村氏のこの発言を通して安倍首相の経済政策をストレートに批判することはできない。増税を予定通りに実施するよう求めた高村氏(や麻生氏ら)の反対を押し切って、安倍首相は2019年10月までの増税の延期を決めた。
 
とはいっても、高村氏の発言が矛盾含みなのと同様に、安倍首相の経済政策の目標が混乱していることは間違いない。安倍首相は消費増税の再延期を決めた1日の記者会見では、「アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」と述べた。だが、いったいどの“エンジン”をふかすのかは釈然としない。
 
当初の「三本の矢」も新しい三本の矢も、一億総活躍社会も、予算の膨張も、選挙前のバラマキも、8%への消費増税も、今となってはすべてが“アベノミクス”と言われる。そこで、「アベノミクスのエンジンを最大限ふかす」と述べるのは、ただ単に「一生懸命頑張りますから、任せてください」と言っているのと大差はない。
 
安倍首相は野党が訴えてきた福祉政策にまで手を伸ばし、“抱き込み”戦略で、野党の攻撃を無力化しようとしているように見える。しかし、その結果は、政策の目標がハッキリとしない“何でも屋”のような経済政策と、予算のさらなる膨張ということになる。エンジンをふかす前に必要なのは、アベノミクスの再定義だろう。アベノミクスの最大の目標は、経済成長なのか、財政再建なのか、社会福祉の最大化なのか、納得のいく答えがほしい。
 
もしその答えが、「なるべく長期の政権維持」であったとしても、答えが何もないよりはまだましだ。

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