2016/03/21    13:00

ブルーノは「西洋中心主義」の最初の批判者の一人だった

カンポ・デ・フィオーリ広場(花の広場)に建設されたブルーノ像。


ジョルダーノ・ブルーノ(1548-1600)は南イタリアに生まれたドミニコ会の修道士であり、ヘルメス主義者の一人でもあります。彼は、コロンブスによる新大陸発見を契機に、16世紀になされたキリスト教の征服と布教について、著書『聖灰日の晩餐』の中で痛烈な批判をしていると、次のように指摘されています。

キリスト教は、周知のようにアダムを人類の始祖となす単一起源説を採用している。それに対して、ブルーノは、人類に複数の起源を見出す複数起源説を主張した。この対立は、一見したところ、たんなる科学的仮説の相違に見えるが、実はそうではない。キリスト教にとって、単一起源説は絶対に譲り渡すことのできない重要な学説であった。人類がアダムという共通の始祖をもっているということは、人類がアダムの原罪を共有しているということでもある。このことはさらに、アダムの原罪から人類を解放するためになされたキリストの受肉と死によって全人類の救済が約束され、最後の審判によって人類に対して最終的な判断が下されるということも含意している。

要するに、単一起源説は、人類に共通の起源を提供することによって、人類を単一の歴史観のもとで捉え、キリスト教に人類救済の特別な使命を与えたのである。
(略)
単一起源説は、人類を文字どおり兄弟とみなすことによって他者を消滅させ、西洋的な価値観の押しつけを善意の名のもとに正当化する。後に「西洋中心主義」と呼ばれることになる西洋と非西洋との関係をめぐる問題は、すでにここに凝縮していると言ってもよかろう。だとすれば、ブルーノは西洋中心主義の最初の批判者の一人であったとも言えるであろう。
(加藤守通著、伊藤博明編 『哲学の歴史 4 ルネサンス』 中央公論新社、542-543頁)

ブルーノはプロテスタントとカトリックのどちらにもくみせずに、両者を越えた立場から両者を批判しました。それは当時としては珍しいことで、それを可能にしたのは、キリスト教の外部に立ってキリスト教を相対化する視点であったと言われています。

それは、西洋という境界を越えたグローバルな視点と言えるでしょう。

まだ「西洋中心主義」という概念もない中世の時代に、グローバルな眼を持ち、この問題の原因を突き止め、それを批判していた先駆者がいたことに驚かされます。

1600年にブルーノは異端の罪でローマの「花の広場」で火刑されました。しかし、18世紀になるとブルーノは哲学者たちの関心の的になり、19世紀末には死後300年を記念してこの「花の広場」に彼の彫像が建立されました。
現代では、ブルーノ研究はさらに進み、いまや国際的な広がりを見せています。

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