2016/08/30    15:28

埼玉のいじめ事件――グループから離れようとすると逆上するのは、いじめ加害者の特徴

埼玉県で16歳の少年が暴行を受けて亡くなった事件で、事件当時の様子が明らかになってきています。遊びに誘われた被害者が「地元にいない」と嘘をついたことが、事件のキッカケだったと加害者の少年は証言しています。
 

最初に逮捕された少年(16)は「うそをついたり、電話やメールを無視したから殺した」などと供述していますが、その後の警察への取材で、井上さんが少年らに対して「今は地元にいない」といった趣旨のうそをついたことがばれて少年らが逆上し、暴行に繋がったとみられることが新たにわかりました。
(TBS News 「今は地元にいない」、うそがばれ暴行につながったか 2016/08/27)


いじめがエスカレートする法則については、アッシュ博士の「同調実験」とジンバルド教授の「監獄実験」がわかりやすいと思います。

アメリカの心理学者ソロモン・アッシュ博士がおこなった「同調実験」という実験があります。ふつうならほとんど間違わないような質問をする中に、わざと間違える「サクラ」が回答者の中にいるとどのような結果が出るかという実験です。グループの中の一人をどうして皆でいじめでしまうのかを知るのに参考になる実験です。


「同調実験」

9人の回答者のなかに、1人のサクラを入れます。サクラとは、実験者の目的をあらかじめ知った上で実験に参加し、実験者の指示通りに振る舞う人のことです。サクラはわざと間違った答えを出し、他のメンバーは正しい答えを出しました。次に、サクラを2人にして、同じことをしました。すると、2人のサクラに同調する人が増えました。サクラを3人にすると誤回答率は3割を超えるようになりました。間違った答えを主張する人が増えると、正しい答えを知っている人でも、間違った主張に引きずられてしまうのです。

いじめの場合も、グループのなかで2、3人が「もっともそうな理由」をあげて、誰かをいじめると、最初はいじめはよくないと思っていた人も「いじめられる側にも理由がるのではないか」と思うようになり、しだいに皆がいじめる理由に「同調」し始め、いじめに参加する人数が増えていくのです。


「監獄実験」

もうひとつ「監獄実験」というものがあります。アメリカのスタンフォード大学の心理学者フィリップ・ジンバルド教授による実験です。まず、新聞広告で集めた人々を「看守役」と「囚人役」とにわけ、模擬刑務所をつくります。

すると「看守役」の人はどんどん残酷になり、その行為を楽しむようになりました。反対に「囚人役」になった人々は無気力でなっていきました。2週間の予定で始めた実験でしたが、1週間で中止をしなくてはならないくらいに残虐行為はエスカレートしていったのです。

このことから、ごくふつうのひとでも与えられた役割によって性格が変わることをしめした実験です。そして、ひとは想像以上にはやく残虐行為になれ、エスカレートしやすいということを示しています。


この埼玉の事件を検証してみると、まずは、役割が決まっていて、被害者は、加害者グループの「使い走り」つまり「下っ端」でした。ある報道では、来月からこの加害者グループが組織するグループに入る予定だったそうです。役割の中で、下っ端が嘘をついて自分たちから離れるということは、「許しがたい行為」ととるわけです。実際、執拗ないじめの加害者は、ストーカーのように被害者にまとわりつき、被害者が離れることを裏切りととって逆上するケースは多いです。これは、加害者も被害者に依存しているわけです。ひどいものになると、大学に入学をして東京に出てきて、加害者グループに居場所を知られないように暮らしていたのに、どこからか調べて、大学にまで現れるという事例もあります。


そして、グループの中では、中学生等は「やりすぎだ」と感じてはいたようですが、アッシュ博士の同調実験のように、同調者が多いため、少数の意見はいつの間にかなくなってしまい、結果、被害者を死に至らしめてしまったのです。

これは、なにもこの少年たちにだけ起きた特殊な事件ではありません。

どうか、いじめや暴力がエスカレートするメカニズムを知っていただき、防げるのは「大人だけ」という自覚をもって、子供たちの行動に目を光らせてあげていただきたいと思います。

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