2015/12/05    17:00

国境をまたぐ神話――エジプトのトト神とヘルメス

古代エジプトの神話では、知恵を司ると言われるトト神が登場します。エジプトの神話である以上、トト神は一般にエジプト人の神のように思われています。しかし本来は、エジプトにいたギリシャ植民者の神だったという、面白い学説を見つけました。エジプトにギリシャの植民者がいたのですね。
 
『魔法』には、次のように書かれています。
 

ヘルメスは、ハデスの支配する暗黒の王国(冥府)へ魂を導くギリシャの神である。「彼は、誕生と死の扉を開く」。彼は交換と商業と学問を管理する。

「トリスメギストス」は、「三重にもっとも偉大なもの」を意味し、この神(トート)がいかに高く評価されていたかを示すあだ名である。彼はギリシャ神ではないが、エジプトにおけるギリシャ植民者たちの神である。(略)

ギリシャの植民者たちは、アレクサンドリアの人口の大多数を占めてはいなかったが、もっとも理知的だったことは確かである。エジプト人とギリシャ哲学とが混ざりあったが、そのさい、ギリシャの思想の方が優勢だった。だからこの場合は、ギリシャ化されたエジプトというのが正しいであろう。ギリシャ人は、エジプトの古い宗教のなかで理解できるものはなんでも、こころよくうけ入れた。こうした結果、この2つの要素が、ユダヤ人や他の東方民族の宗教的な断片とともに混ざりあってできたのがエジプト哲学である。

ギリシャ人は、エジプトの神々のうちに自分たちの神性を認めた。こうして彼らは、魔術と筆写と話し言葉の神聖なる発明者トートと、ヘルメスを同一視した。

トートは、冥府の裁判所の書記で、死者の行為が考慮された後に発せられるオシリスの評決を書きとめた。(K・セリグマン著、平田寛訳、人文書院、1991年、140頁)


この記述にしたがえば、「三重に偉大な神」とは、「ヘルメス」ではなく「トト」のことだったということになります。このような過程を経て、トトとヘルメスが合一され、ヘルメス・トリスメギストスになりました。ヘルメス・トリスメギストスは「ヘルメス文書」の著者と考えられています。

アレクサンドリアのクレメンス(150-215)は、2世紀のアレクサンドリアにおいて、重要なヘルメス文書は42冊あったと述べています。

「ヘルメス文書」の根本教義は、「上のものは下のものの如く、下のものは上のものの如く」という「反対の一致」や、「全は一、一は全」というものです。

トトは、新王国時代にはエジプトの国境を越え、現代のスーダンにあたる上ヌピアにまで、その信仰が広まりました。

トトをギリシャからの植民者の神とする考え方は、エジプトの神話に新たな見方を与えてくれる学説だと思いました。

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