2015/09/27    10:00

「大阪と私 ~ あきないのまちの誇り」

私は大阪市西成区で生まれ、その後、住之江区を経て大阪府南部の高石市に転居し、結婚するまでの二十数年間を過ごした後、結婚して再び大阪市の住人となり、早や20年以上が過ぎた。

京都の短大に通った2年間以外は、大阪で暮らし、大阪で学び、大阪で遊び、大阪で仕事をした。親類縁者も、ほぼ全員が大阪府内に在住している。若い頃は、他県との縁が無いことを、つまらないと思ったこともあったが、ここまで徹底してしまえば、むしろ「大阪人」であることに愛着を感じ、大阪の良いところも悪いところも好きである。
 

◆大阪都構想への違和感

2015年5月17日、大阪市を5つに分割・統合するという、いわゆる「大阪都構想」の是非を問う住民投票は、僅差をもって反対票数が上回り、とりあえずは現状維持ということに決まった。

橋下徹大阪市長は、大阪の地位の低下が、東京一局集中にあると考え、大阪を「東京のような都市」に作り変えたかったようだが、その構想は大阪市民の多数によって退けられた。

はたして大阪市民は、賢明な選択をしたのか、しなかったのか、今のところは分からない。しかし、今さら大阪を「東京のような都市にしよう」というのは不可能なことであるし、方向性が間違っていると、私は思う。

東京は、徳川家康が江戸幕府を置き、天皇が京都から東京に移られた明治時代を経て現在まで政治のマチだが、大阪は、良くも悪くも政治とは距離を置いたマチであり、“あきない”のマチだ。そして、京都や奈良と共に、日本の国の古い歴史と伝統文化が積み重なった場所だ。それをなぜ、「東京もどきのマチ」にする必要があるのかが、私には理解できない。

橋下氏は、大阪府知事・市長になってから、文化行政の予算を削ってばかりだった。大阪市音楽団を切り捨て、国立文楽劇場への補助金を大幅に削減し、大阪市立美術館の閉鎖を計画した(これは後に撤回されたが)。経済効果を生まない“ハコもの”はすべて無駄だと断罪し、大阪府立大学と大阪市立大学、大阪市立住吉市民病院と大阪府立急性期総合医療センターを,「同じようなものは二つも要らない。統合すべきだ」と言ってみたりしている。

そして、「大阪都構想」では、大阪市内の24それぞれの区に積み重なった歴史を無視して、まるでパズル遊びをするかのように、5つの地区に分割しようとした。

このように、橋下氏は、「文化・伝統・歴史」に理解も共感も無く、「形の無いもの、経済効果を生まないものにお金を使うのは無駄」という個人的な価値観によって、杓子定規に机上の空論を組み立てた。

確かに、大阪に暮らす人の多くが、大阪市が抱える閉息感をなんとか解消したい、吹き払いたいという気持ちを持っているような気はする。だが、「橋下流」は嫌だ――というのが、今回の住民投票の結果に現れたのではないだろうか。

「こんな活気の無いマチは、一度、ガラガラポンして、一から作り直した方がいいのではないか」というような橋下氏の発想に、乗ってみたいような気がした人も多かったのだろう。しかし、橋下氏の語る言葉からは、「一から作り直した大阪が、どんなマチになるのか?」という未来のビジョンが、まったく見えてこなかった。そのことに対して、直感的に不安を覚えた市民が、反対票を投じたのではないかと、私は考える。
 

◆経済力あるところに文化あり

そもそも、文化とはどんなところに生まれるものだろうか。

日本の過去の歴史を振り返ってみれば、それぞれの時代に特有の文化が花開いている。基本的には、経済活動が活発になり、人々の暮らしが豊かになったときに、素晴らしい芸術や文化が花開いている。

例えば、17世紀の江戸時代に、徳川幕府が恐れをなし、闕所(財産没収)にされた「淀屋」。

初代・岡本三郎右衛門常安は、豊臣秀吉の伏見城の造営のほかにも、淀川の堤防改修工事において高い土木技術力によって活躍し、その後、当時の大坂(大阪)で「淀屋」を名乗って材木商を営む。中之島の開拓を行うなど、大坂を、「天下の台所」と呼ばれる経済の一大拠点となしたのは、この「淀屋」の活躍に負うところが多い。

その後も淀屋は、野菜や紀州みかんなどを扱う青物市、魚の干物を扱う雑喉場(ざこば)、全国の米取引の中心となった米市を設立し、莫大な富を蓄えた。その財力を存分に発揮して、淀屋橋、常安橋など、大阪のインフラ整備にも貢献した。インフラが整備されると、さらに人や物の流通が活発になって、経済発展していく。

そして、それが歴史の教科書にも登場する第五代将軍・徳川綱吉の時代に、大阪や京都などを中心とする「上方」で花開いた「元禄文化」にも繋がっていったのではないだろうか。直接的には、紀伊国屋文左衛門や奈良屋茂左衛門といった材木を扱った豪商の存在もあっただろうが。

あるいは、相撲の力士たちに金銭面などでの援助を行う人、という意味の「タニマチ」という言葉も、大阪市内の「谷町」が発祥の地と言われている。経済的に豊かな人々が、自らの利益にはつながらない「道楽」にお金を使うことが、文化を守り、育んできたのである。

そう考えてみると、「文化は大阪市の財政運営のジャマ」だと斬り捨てる橋下氏は、考え方の順序が真逆なのである。

経済的に苦しいから斬り捨てるのではなく、文化を育み、発展させられるように大阪を経済発展させる方法を、まず探らなければいけないのだ。つまり、大阪が、豊かな文化を支えられる豊かなマチになれば良いのだ。

しかし、橋下氏の提案する政策には、大阪の経済を発展させるような具体的なアイデアは皆無だ。道頓堀にプールを作るとか、外国資本のカジノを誘致するとか、「一発逆転」的な発想のものばかりで、こつこつと地道に経済の歯車を回してゆくような政策は、私の知る限りでは見当たらない。

また、橋下氏は、「なぜ、行政が文化推進に手を貸さねばならないのか」と疑問を呈するが、大阪に住む人びとが、地元を愛することができるような環境を整える努力をすることを、地方の行政が担うことは、必要であろうと思う。

たとえば、小中学校などでは、ときおりオーケストラによる生演奏や文楽や能・狂言の舞台を鑑賞するような授業を行っているが、年に一、二度程度では、なかなか強い関心を持つまでには至らないだろう。

行政がもっと伝統文化や交響楽団などの支援を行えば、子供たちが気軽に文化に触れる機会も増やせるはずなのだが、橋下氏には、その発想は無いらしい。
 

◆大阪経済衰退の原因

大阪が“あきない”の力を失った原因は、黒田了一府知事、中馬馨市長らから始まった、共産主義・社会主義的な「行き過ぎた平等思想」にあると、私は思う。そして、それに基づく手厚い福祉政策が慢性的な赤字の元凶だ。

確かに、憲法でも保障された「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ための支援は無くしてはならないだろう。だが、行き過ぎた経済的な保護政策は、人々の自尊自立、自助努力の精神を失わせ、社会全体の活力を奪うことにつながる。

自治体を運営する資金の基盤は、国民の税金であるが、国民がしっかり働き、もうかれば、多くの税金を納めることができ、自治体の税収も増えるのである。国や自治体の最も重要な仕事は、国民が毎日、気分良く元気に働ける環境や制度の整備に注力することだ。

もう一つ付け加えるならば、税金を安くすれば、庶民の可処分所得が増え、経済活動が活発化する。それもまた、文化を育む助けになるだろう。

人間の心を豊かにできる文化を育み、古い伝統を守ることには、お金がかかるものだ。経済の力、お金の力を蔑んだり、忌避するような精神態度は、大阪人のみならず、日本人は捨ててしまった方がいい。そんな、「金持ちはケシカラン」というような風潮が、日本を貧しくしてしまったのではないのだろうか。

「バブル景気」が一度はじけたくらいで、びくびくするのは、いい加減に止めたほうがいいと思う。
 

◆「もうかりまっか?」の精神復活を

まず、大阪から、「お金もうけ」を忌み嫌う風潮を無くそう。伝統文化を守るだけではなく、新しいことに挑戦するためにも、お金(資金)は必要だ。

大阪を、「お金もうけ」ができるマチにしていこう。お金に好かれ、お金が集まってくるマチにしよう。経済発展の要素は、「人・物・金・情報」だと言われる。それらの要素が、大量に高速で流通すると、社会は豊かになるのだ。

 “ハコもの”は無駄だというが、すでにあるものは大阪府市民の資産であるから、それらを活かすアイデアを生みだす必要がある。たくさんの人が集まってくるような工夫を、知恵を絞って考え出すことだ。

同時に、すでにあるものだけに頼るのではなく、新しいものを生み出すことで、豊かになることも考えよう。「もうかりまっか?」と、気楽にあいさつが交わせるような、活気ある「あきないのマチ大阪」の復活を、大阪が故郷である私は、心から願っている。

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