2015/08/15    14:18

安倍談話で日米関係の前進に期待 残る課題は民間の力で

「安倍談話」が閣議決定を経て、14日の夜に発表された。

これまで政府の歴史認識を表すものとされてきた「村山談話」は、曖昧な記述も多く、日本は侵略国家であるというトーンが先行した。一方で、今回の安倍談話では、日露戦争までは評価できる点もあったが、その後は侵略に転じたという内容で、いわゆる「司馬史観」のラインに近いあたりに落ち着いたと言える。

強烈な自虐史観である村山談話から、20年を経て、ここまで押し戻すことができたことは、一つの成果と言えなくもない。一方で、今回の安倍談話は、村山談話がぼかしてしまった「遠くない過去の一時期、国策を誤り」という部分を、詳細に解説しただけにとどまったという見方も成り立つ。その意味では、トータルな歴史認識が大幅に変わったわけではなく、「村山談話の修正版」の域を出ないと、こき下ろすことも可能だろう。
 

高かった世論の壁

今回の談話が、説明調で長文になったのは、マスコミが形成する世論の壁が主因の一つだろう。もともと「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍晋三首相は、「侵略の定義は定まっていない」という発言が知られるなど、第二次世界大戦についても何らかの歴史認識の見直しをしたかったものと見られる。

しかし、国会で審議中の安全保障関連法案についてテレビなどが「違憲」と報じる中で、マスコミへの配慮が必要となり、譲歩を余儀なくされたかっこうだ。新国立競技場の計画見直しや、沖縄県の米軍普天間基地の移設先である名護市辺野古の工事中断などに続いて、今回の談話でも「侵略」や「おわび」といったキーワードを盛り込んで、世論の逆風を和らげようとした狙いが見え隠れする。
 

アメリカとの関係にはプラスか

一方で、今回の談話はアメリカ政府が高く評価するものとなったことで、外交問題としての歴史認識問題については、解決に向けて一歩近づいた側面もある。米政府も談話について、歓迎の声明を発表している。安倍晋三首相の歴史認識については、オバマ政権が折に触れて疑念を持ってきたが、アメリカも賛成できる談話が出されたことで、ひとまずは落ち着いたと言えるだろう。

今後も東アジアでは中国が軍拡を背景とした拡張主義を取って、アメリカの覇権を揺さぶろうとすることが予想される。こうした流れが続く限り、日米関係は安全保障の面でも政治的にも、緊密な状態が続いていくと見られる。訪米の際の米議会での演説で、安倍首相は日米がお互いの勇戦をたたえ合うという演出をしたが、そうした日米和解のプロセスとして歴史問題の解決が進むことはあり得る。

来年にはオバマ大統領が広島を訪問するのではないかという期待も一部にあるが、もし近い将来、アメリカの大統領が靖国神社を公式に参拝するようなところまで日米関係を前進させられれば、その時点で、歴史問題が今日ほどに外交問題としてあげつらわれることは、ほとんどなくなるだろう。2002年にブッシュ大統領の参拝が計画されたこともあり、あり得ない話とは言い切れない。

米議会での演説、日米ガイドラインの改定に続き、安保法案で集団的自衛権を法制化し、今回の首相談話で歴史認識においてもアメリカと歩み寄りを図った。安全保障を意識した、日米協調のプロセスが透けて見える。
 

歴史評価 残る課題

しかしその反面、先の大戦が結果として欧米植民地の終焉につながったという評価や、国家として英霊の慰霊と顕彰をどう行うかといった課題は残っている。また、原爆投下や東京裁判、ソ連によるシベリア抑留や北方領土の侵攻といった連合国側の責任についての検証の問題もある。こうした、安倍首相が本来ならば遂げたかったであろう「戦後レジームからの脱却」の要点になるテーマについては、談話では触れられておらず、今後も政府が公式な立場として踏み込むことは容易ではないだろう。

今回の談話は、日露戦争までを評価することは可能だが、その後の大戦について良い点をひとつでも挙げるような見方は絶対に許されないとでもいうような、世論の雰囲気を如実に表していると言える。「先の大戦は、政府が国民を犬死させた救いようのない戦だった」という一面的なとらえ方にとわられず、日本が先の戦争の功罪をフェアな目で天秤に乗せて、教訓を引き出せるようになるまでには、やはり保守派の市民や学者といった民間の力による取り組み、世論への働きかけが、今後とも不可欠だ。

安倍首相は「歴史家に委ねる」という言葉を好んで用いる。今回の談話発表後の記者会見でも、「具体的にどのような行為が侵略に当たるか否かについては歴史家の議論に委ねるべきであると考えています」と述べている。このことは、「自分としては、できる範囲でここまでやった。ここから先は、皆さんの力を貸してほしい」という、首相から保守派へのメッセージなのかもしれない。

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