2016/08/04    17:16

内閣改造と、アベノミクスの不確かな未来

第三次安倍改造内閣が発足した。
 
今回の組閣では、「ポスト安倍」の筆頭格と目される石破茂氏が、「財務相か外相なら残ってもいい」と啖呵を切って閣外に出た。記者会見では「次の政権に代わるときに何を示すかを錬磨していくのも、国家国民に対する責務だ」と語っており、「次の首相」を狙う野心が伺える。
 
「ポスト安倍」という意味で、最も注目を集めるのは稲田朋美・防衛相だろう。女性として二人目の防衛相ということのほかに、歴史問題や国家観をめぐって安倍首相と考え方が近い。安倍首相が自身の考え方を継ぐ政治家として、次期首相の期待をかけていることは明らかだ。
 
安倍首相の歴史観について、「軍国主義」「修正主義者」などと批判してきた中国は、各メディアが稲田氏について「右翼の女性政治家が防衛大臣となり、日中関係に衝撃を与えた」などと、さっそく、紹介している。米メディアでも、AP通信が「安倍首相が修正主義者を防衛相に任命」と報じ、露骨な“歓迎”の意を示した。
 
安倍政権が憲法改正を目指す中で、日本は中国との軍事衝突のリスクを抱え、アメリカとの歴史問題のしこりも解消しきったわけではない。そうした中で、稲田防衛相は「ポスト安倍」に向けた難しい試練に立ち向かうことになる。
 
今回の人事では、自民党幹事長に二階俊博氏を指名するなど、総裁任期延長による長期政権の実現に向けた党安定の布石を打つとともに、自分の後継者を「ポスト安倍」として育てたいという意図が伺える。
 
一方で、改造内閣がまっさきに取り組むとしている経済の問題については、先が思いやられる点が一つある。それは、わざわざ「働き方改革担当相」という新たなポストまで作って、長時間労働の是正に乗り出そうとしていることだ。
 
確かに、過労死にまでつながりかねない過酷な労働状況や、それを当たり前のものとして放置する風潮は、改善していくべきものと言える。しかし、忘れるわけにはいかないのは、「一生懸命に働かなければ、誰も豊かになることはない」という、当たり前の真実である。ただでさえ、アベノミクスが景気を十分に良くできないでいるときに、政府が率先して働かないことを勧めたならば、果たして、経済は上向くだろうか。
 
これまでにも安倍政権は、日銀に大量にお金を刷らせて株高を演出したり、賃金アップを企業に要請したり、女性管理職を3割にすると宣言したりと、とにかく政府が指図して経済を動かそうとしてきた。28兆円の景気対策も同様である。長時間労働の是正にしてもまた、政府が「こっちだ」と言えば、民間もそれにならえとばかりの、トップダウンの意識が見え隠れする。
 
しかし、もし本当に長時間労働を是正して、国民がもっと楽な暮らしができるようにと願うのならば、まず頭を切り替えなければならないのは、そのトップダウンの意識である。税金をたくさん取って国民にばら撒くのではなく、まずばら撒く前に税金を安くできないかを考える必要がある。
 
民間が自由にお金を使えて経済が活性化してこそ、企業は利潤を従業員に還元することができる。景気の先行きも分からず、「もっと税金を上げるぞ」と政府がいつも脅し続けるような状況で、従業員に大盤振る舞いする会社は果たして世の中に、どれほどあるだろうか。
 
先の参院選では、共産党のある候補者が、「8時間働けば、ふつうに暮らせる社会へ」という標語をポスターに書いていた。確かに、そうした社会が実現できるなら美しいことだ。しかし、みんなが8時間しか働かなかったばっかりに会社が潰れたら、元も子もない。それもまた、世の中の道理である。「働き方改革」を掲げる政府が、こうした点を認識していないとすれば、もはや自民党とはいえ共産党と大差ない。そうでないことを心から願っている。

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