2016/03/27    08:00

民進党の袋小路――民主党の延命は奏功するか

民主党、維新の党が合流し、「民進党」が27日に正式に発足する。民主党代表の岡田克也氏が代表を務めるほか、代表代行には維新の前代表である江田憲司氏、幹事長には民主党から枝野幸男氏が横滑りする。
 
結党にあたっては、党のネーミングをめぐって激しい議論がかわされ、世論調査まで行われた。政権時代の失策によって、すっかりダーティーなイメージがついてしまった「民主」を残すのか残さないのかという問題があったが、最終的には「民進党」で決着した。
 
台湾にある「民進党」の躍進とフレッシュなイメージに、あやかりたい狙いは明らかだろう。同党は蔡英文・主席が1月の総統選を勝ち抜き、政権交代を実現させた。台湾では女性初の総統の誕生となる。国会にあたる立法院でも、初めて過半数の議席を占めた。
 
しかし、名前の共通点とは裏腹に、どうしても日本の民進党と重ねて見てしまうのは、台湾では国民党の方だ。なぜなら、両党が直面している現実は、政権から転げ落ちたということだけでなく、党としての存続の危機でもあるからだ。
 
政権を奪われたばかりのかつての与党が、党としての生き残り策を議論するのは歴史の常だ。2009年に自民党が野党に転落した際にも、党名を変更して生き延びようとする案があった。2012年の米大統領選で、不人気な現職のオバマ大統領を破れなかった共和党でも、党が存続できるかという危機感があった。
 
しかし、台湾の国民党の場合は、その危機の根が深い。台湾の人々はますます、(中国人ではなく)「台湾人」としてのアイデンティティに目覚めており、中国本土との“統一”を志向する国民党への支持が広がる気運は生まれづらい。台湾の有力紙である「聯合報」の今月の調査では、自分のことを「台湾人だ」と思う人の割合は73%にのぼり、過去最高を記録したという。
 
現在の台湾の民主主義は、中国本土との一体化を進める国民党と、独立を志向する民進党という二大政党が覇を競っている。しかし、「台湾人の台湾」という意識の高まりとともに、中国との“統一”が国家戦略の選択肢から消えるのであれば、国民党は拠って立つところがなくなってしまう。「日本李登輝友の会」の事務局長を務める柚原正敬氏は、今後の台湾政治について、次のように展望している。

今後、民進党が経済政策で中国との関係を現状より適切なものとし、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に加盟できるようなら安定政権となり、2020年の次回総統選挙でも与党となる可能性が高い。一方、国民党は少数野党に転落したことで求心力を失って先鋭化し、いっそう中国との関係を強化する方向に転じていくものと予測される。そうだとすれば、解党または消滅への道を歩み始めたと言える。

ここでの問題は、国民党が先鋭化して中国との融和路線を主張すればするほど、新たな台湾の世論とのかい離はいっそう激しくなることだろう。国民のアイデンティティの変化という大陸移動のような変化にどう対応するかが、国民党には問われていると言える。
 
このことは、日本で政権を失った民主党、そしてその後釜として新たに発足した民進党にも当てはまる。政権を失った民主党は、党勢拡大の道が見えないまま漂流し、今回、維新の党との合流に至った。しかし、野党側は夏の選挙で自民党に対峙する上で、「戦争法案ゼッタイ反対」「アベ政治を許さない」と叫ぶ市民団体に相乗りする以上の戦略を描き切れていない。
 
これはまさに、求心力を失った元与党の先鋭化ではないか。民主党政権は、初代の鳩山由紀夫首相が沖縄の米軍基地問題を迷走させた上に、中国に国会議員を大挙して訪問させるなどして同国にすり寄り、日米関係を傷つけてしまった。その反省の上に立って、その後の菅直人、野田佳彦両首相は「日米同盟の堅持」を外交政策の軸に戻す現実主義を見せた。ところが、野党に戻ってからの民主党は、自民党の「一強支配」に対抗すべく、安全保障政策の足を引っ張るだけになってしまった。
 
こうした戦略に支持が広がるとは考えづらい。国民は民主党政権の時代に、安全保障を無視して中国にすり寄ることが、どれだけ日本の国家戦略をゆがめるかを、痛いほど目にした。その時代に戻りたいと考える国民がごく少数派であることは、世論調査で民主党の政党支持率が一桁台で低迷していることを見れば分かる。不人気な路線を追求すれば、ますます不人気になるしかない。

安倍政権が「ネトウヨ」の過激な世論の後押しを受けて政権運営をしているという指摘もあるが、民主党政権の失政が「ネトウヨ」の先鋭な意見がより広範に広がる社会の素地を作ったという背景は無視できない。もし安倍政権を独裁政治のモンスターのように言うなら、その反動をつくった民主党政権の功罪についても総括する必要がある。
 
こうした事情を無視して、軍事とつくものには何でも反対し、日本を「非武装中立」の“ユートピア”へと連れて行こうとする市民運動と共闘するだけなら、野党はさらに消滅への道を歩みかねない。「民進党」を名乗っても、たどる道筋は台湾の国民党と同じ袋小路かもしれない。それは日本の民主主義にとっても、建設的な議論が今以上に希薄になるという、不幸な未来を意味する。

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