2015/05/12    15:00

【社説読み比べ】 憲法記念日の各紙の主張 押し付け憲法と9条をめぐる攻防

「憲法記念日」の3日、新聞各紙は、現在の与党政権が行おうとしている「憲法改正」についての社説を掲載した。
 

朝日・毎日:現行憲法は「押しつけ」ではない

朝日新聞は、現行憲法は戦後にGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)によって押し付けられたものだという認識を示している安倍晋三首相を批判する。

社説は、GHQのやり方は強引ではあったが、日本人によってより「平和主義的」な内容に作られたものであり、「天皇主権の下、権力をふるってきた旧指導層にとっては、国民主権の新憲法は『押しつけ』だったのだろう」と解釈している。

このところ国会で、首相はこんな答弁を繰り返している。

「これは占領軍がつくった憲法であったことは間違いない」「(GHQの)25人の委員が、全くの素人が選ばれて、たったの8日間でつくられたのが事実であります」

「押しつけ憲法論」である。GHQのやり方は時に強引だったし、首相のいうような場面もあったろう。ただ、それは新憲法制定をめぐる様々な事実のひとつの側面でしかない。(中略)

昨年の9条の解釈変更から明文改憲へと向かう自民党の試みは、権力への縛りを国民への縛りに変えてしまう立憲主義の逆転にほかならない。名実ともに選挙に勝てば何でもできる体制づくりとも言える。

憲法を一言一句直してはならないというわけではない。だがこんな「上からの改憲運動」は受け入れられない。政治に背を向け選挙に棄権しているばかりでは、この動きはいつの間にか既成事実となってしまう。

戦後70年。いま必要なのは、時代に逆行する動きに、明確に拒否の意思を示すことだ。
(朝日新聞 「(社説)安倍政権と憲法 上からの改憲をはね返す」 2015/05/03)

毎日新聞も、安倍首相の「押しつけ憲法論」を批判する。そして、憲法に権力を縛られるはずの国や政治家側が「国民に憲法尊重義務を課す、という逆立ちした原理」を盛り込もうとしていると危険視している。

ただし、憲法を論ずる際、忘れてはならないことがある。

国民を縛るものではなく、国や政治家など権力を縛るもの、という憲法の根本原理だ。11条が基本的人権を「侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる」とうたい、99条で閣僚や国会議員、公務員らに「憲法を尊重し擁護する義務」を課しているのは、まさにそのためである。

ところが、自民党の改憲草案は、政治家の擁護義務の前に「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」という項目を盛り込んだ。まず国民に憲法尊重義務を課す、という逆立ちした原理が、自民党の改憲論を支える思想なのだ。

さかさまの憲法原理が目指す、改憲の目的とは何か。それは、国や政治家が、自分たちの手に憲法を「取り戻す」ことであろう。

そこには、二つの側面がある。一つは、連合国軍総司令部(GHQ)が作った憲法を、日本人自身の手で書き換えること。いわゆる「押しつけ憲法」論である。憲法を、国家のアイデンティティーの確立に利用する、上からの憲法論だ。

二つ目は、憲法を、国民の手から政治家の手に「奪い取る」という発想だ。安倍政権が2年前、96条を改正し、国会の改憲発議に必要な数を衆参両院の3分の2以上から過半数に下げて改憲しやすくしようとしたのは、その典型である。
(毎日新聞 「社説:憲法をどう論じる 国民が主導権を握ろう」 2015/05/03)

 

東京:9条は普遍の価値観

東京新聞は、「五二年の独立回復後、六十年以上たちます。その間、憲法改正の機会は幾度となくあったにもかかわらず、国民はそのような選択をしませんでした」と述べ、改憲などしなくても、現行憲法は9条も含めて、今後も十分に通用する内容だと主張している。

日本人だけで約三百十万人が犠牲になった過酷な歴史です。戦後日本は二度と侵略戦争をしないと反省し、その決意を書き込んだ新憲法は一九四六年十一月に公布、翌年五月に施行されました。

当時は連合国軍の占領下です。新憲法に日本の非武装化、民主化を目指す米国の意向が色濃く反映されていることは間違いありません。それが「押し付け憲法論」となり、改憲派が改正の必要性を主張する理由にもなっています。

ただ、それは歴史の一側面にすぎません。五二年の独立回復後、六十年以上たちます。その間、憲法改正の機会は幾度となくあったにもかかわらず、国民はそのような選択をしませんでした。

今の憲法は、押し付けられたというよりは、国民が長い年月をかけて選びとった、といえるのではないでしょうか。

国際情勢の変化で自衛隊という実力組織を持つに至りましたが、海外で武力の行使をしない「専守防衛」に徹しました。日本は再び戦火を交えず、軍事上の脅威にもなりませんでした。平和国家の経済的繁栄は、九条の効用です。

しかし、この憲法が今、重大な岐路に立っています。(中略)

平和憲法をつくり、七十年近く改正しなかった先人の選択の重さを今こそ深く考えるべきではないか。それが戦後七十年の節目を生きる私たちの使命と思うのです。
(東京新聞 「【社説】戦後70年 憲法を考える 『変えない』という重み」 2015/05/01)

 

 

日経・読売:もっと議論を深めよ

日経新聞は、改憲論者と護憲派の主張を平等に並べた上で、改憲論者に「戦争放棄を定めた9条の改正こそが本丸であり、緊急事態条項は前哨戦にすぎないなどと軽くみる気分があるから」野党との議論が深まらないのではないかと述べている。

一方で、改憲か護憲かの二者択一では議論は深まらないとして、スタンスを明確にしなかった。

安倍政権が本気で改憲を目指すならば、世論がなぜ大きく揺れるのか、その理由を考える必要がある。なぜいま改憲が必要なのか、現憲法のどこに不備があるのか。その説明が足りていない。

戦後日本の憲法論争は保革両陣営の勢力争いと絡み、観念論的なせめぎ合いを繰り広げてきた。改憲勢力は「GHQ(連合国軍総司令部)が押し付けたマッカーサー憲法を捨て去らなければ日本人の誇りは取り戻せない」と息巻く。護憲派は「平和主義の最後のとりでである憲法に指一本触れさせない」と身構える。

現憲法の原型をGHQが作成したのは多くの証言や記録から疑う余地はない。敗戦国にそれをはねのける力があったはずはなく、押し付けとの見方は誤りではない。現憲法の前文は民主主義に関する欧米の古典をつぎはぎしただけと酷評する向きもなしとしない。

ただ、押しつけだからすべて廃棄するというのは現実味がない。成り立ちにかかわらず、現憲法はそれなりに定着してきたという護憲派の主張にも一理ある。

安倍首相は先の米議会での演説で「民主主義の基礎を日本人はゲティスバーグ演説の有名な一節に求めてきた」と語った。後発の日本国憲法が過去の名文に似ていたとしても恥じることはない。

改憲か護憲かの二者択一を迫るような憲法論議で国民の理解が深まるとは思えない。現憲法がどんな支障を生んでおり、どう直せばどうよくなるのかがわかる説明をすることが必要だ。
(日経新聞 「(社説)憲法のどこが不備かもっと説明せよ」 2015/05/03)

読売新聞は、朝日新聞が「裏口入学」と言い、東京新聞が「迂回戦術」と呼んでいる安倍首相の段階的な改憲への手法を「現実的なアプローチ」と肯定している。また、「憲法がGHQ主導で作成されたのは事実だ」と述べ、議論に後ろ向きな民主党を批判している。

憲法改正は条項別に実施されるため、全体を見直すには、国民投票を複数回行う必要がある。まず、より多くの政党の賛成が得やすいテーマから取り上げるのが現実的なアプローチだろう。

世界のほとんどの国が憲法に緊急事態条項を備えている。

東日本大震災のような緊急事態時には、多くの国民の生命や財産を効果的に守ることが最優先される。首相権限を一時的に強め、地方自治体などを直接指揮することなどを可能にしておくことには、幅広い理解が得られよう。

自民党が12年4月に発表した憲法改正草案は、首相が緊急事態を宣言すれば、法律と同等の効力を持つ政令を内閣が制定できるとしている。その政令は国会の事後承認が必要となる。

憲法に、どんな条項を新設するのか。法律では、より具体的に何を定めておくのか。与野党は、大いに議論を深めてもらいたい。(中略)

疑問なのは、民主党が「安倍政権の下では、改正論議に応じられない」などとして、後ろ向きな姿勢を続けていることだ。

現憲法について「連合国軍総司令部(GHQ)の素人たちがたった8日間で作り上げた代物」とする13年の安倍首相の発言を、「憲法軽視」と問題視している。

憲法がGHQ主導で作成されたのは事実だ。この発言を根拠に憲法論議さえ拒むのは野党第1党としての責任の放棄ではないか。

党内に改正に前向きな勢力と慎重な勢力を抱える中、対立の深刻化を避けるために論議を先送りしているようにしか見えない。
(読売新聞 「(社説」憲法記念日 まず改正テーマを絞り込もう」 2015/05/03)

 

産経:改憲し、自衛隊を「軍」に

産経新聞は、日米同盟の強化の意義を訴えた米議会での安倍首相の演説の一節を引用。それを実現させ、国際社会の一員として責任を果たすためには、「9条改正で自衛隊を『軍』と正式に位置付けなければ、解決しない問題」だと主張する。全国紙の中で、もっとも明確に改憲を主張する論調を展開している。

「希望の同盟-。(日米が)一緒でなら、きっとできます」。安倍晋三首相は先月29日の米議会演説を、こう結んだ。

だが、この言葉を真に実現するには、大きな障害が存在していることを忘れてはならない。

「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という憲法前文の規定である。

自国の安全保障を他者に依存する「基本法」を抱えたままで、世界の安全と繁栄にどう貢献していくというのか。

《9条が国防を損なった》

憲法施行から68年がたち、日本を取り巻く環境は、受動的な防衛政策や一国平和主義の継続を、もはや許さないところに来ているのではないか。

日本が国際社会で生き残り、独立と繁栄を維持していくには、憲法を論じ、国のかたちから考え直す作業が欠かせない。(中略)

なぜ憲法改正が必要か。大きな理由の一つは、さきの前文規定とともに、9条が国の守りを損なってきたことだ。それは、憲法が擁護すべき大切な価値さえ国家として失いかねないということだ。

大切な価値とは、日本の独立や国柄、領域、国民の生命財産である。同時に、米国はじめ民主主義諸国と共有する自由の価値観、基本的人権、法の支配などだ。

9条は戦後の平和主義を象徴するものだったが、「戦力の不保持」規定などは軍事を正面から議論することを忌避する風潮を助長してきた。

「専守防衛」も、国会対策から生じた政治スローガンにすぎないものが、基本方針のように位置付けられた。防衛政策や防衛態勢を抑制し、自衛権を十分に行使できなくしてきた弊害は甚大だ。
(産経新聞 「(主張)憲法施行68年 独立と繁栄守る改正論を 世論喚起し具体案作りを急げ」 2015/05/03)

産経新聞は、4月の世論調査が「憲法改正に賛成する人は40・8%で、反対の47・8%を下回った」ことが気がかりだと述べている。現行憲法の改正を拒み続ける護憲派を説得するのは、かなり困難な問題であろう。しかし、中国や北朝鮮からの軍事的な脅威が日増しに高まる中で、ごく普通の良識を持った国民が改憲の必要性を理解できるよう、安倍首相はさらなる説明をし、本丸の9条を軸にした改憲の重要性を繰り返し訴えることが必要ではないだろうか。

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