2015/05/24    08:00

【社説読み比べ】大阪都構想の住民投票 地方主権を考え直す時がきた?

大阪市を廃止して五つの特別区を設ける「大阪都構想」の賛否を問う市民対象の住民投票が17日に行われ、即日開票の結果、反対が賛成を1万票あまりの僅差で上回り、大阪市の存続が決まった。

当日の有権者数は210万4076人、住民投票としては過去最大規模となり、2011年に行われた大阪府知事と市長のダブル選挙の60.92%を上回る高い投票率だった。

「都構想案」を提唱した橋下徹大阪市長は、開票結果を受けての記者会見で、今年12月までの任期を務めたあと、政界から引退することを表明。維新の党の江田憲司代表も、責任を取って代表を辞任し、松野頼久幹事長が代表の座を引き継いだことで、国政への影響も取り沙汰されている。各紙の社説を整理してみた。

 

朝日・毎日・東京:強引な手法を批判


朝日新聞は、「納税者としての感覚」「市民の視点」で役所の問題点をあぶり出す手法を評価しながらも、それが同時に「異論を顧みずに独走する危うさ」になったと述べている。 

問題提起の能力は抜群だったが、話し合って解決する姿勢は乏しい。つきつめればそんな政治家だったのではないか。

悲願の大阪都構想が住民投票で反対多数となり、政界引退を表明した橋下徹大阪市長。「劇場型」「ポピュリズム」といわれた手法は、良くも悪くも日本政治の一端を象徴していた。(中略)

大阪都構想もそうだった。

議会から多くの批判を浴び、否決されたが、奇策で住民投票に持ち込む。自ら論戦の先頭に立ち、反対派の主張を「デマ」と切り捨てた。

異論を持つ相手を弁舌で圧倒することは目立ったが、耳を傾け、自説を柔軟に修正することはほとんどなかった。

17日夜、記者会見で橋下氏は「日本の民主主義をレベルアップしたと思う」と語った。

だが政治とは、多様な民意を受け止め、衝突を最小限に抑えながら合意点を探る作業だ。問題の「答え」を強引に押しつけ、立ちはだかった人を「既得権益」と攻撃する手法は、民主主義とはほど遠い。
(朝日新聞 「(社説)橋下氏引退へ 議論なき独走の果て」 2015/05/19)

毎日新聞は、大阪市の労使の癒着に不信を募らせる市民の支持は受けていたものの、都構想を進める中で「議会を軽視する態度が市議会野党との亀裂を深め」、独善的な「橋下政治」が否定されたと述べている。

大阪市は労使の癒着が明るみに出て市民の不信が募っており、橋下氏の主張に一定の支持があった。それなのに住民投票で構想が否定された要因は、橋下氏の説得力不足と強引な手法への批判に尽きよう。

地方分権を重視し、独自の発想で地域再生を目指すのが都構想の原点だったはずだ。だが、どんなまちをつくるのかという大阪の将来像を巡る議論は置き去りにされ、自治体の枠組みを巡る協議が先行した。

再編効果額があいまいだったのも住民の戸惑いを深めた。府・市の試算では17年間に約2700億円とされたが、大阪市を残しても実現できる市営地下鉄民営化などが含まれ、反対派から「まやかしだ」と批判を浴びた。多額の経費を使い、政令市を解体してまで得られるメリットが市民に理解されたとは言い難い。
(毎日新聞 「社説:「大阪都構想」実現せず 橋下政治が否定された」 2015/05/18)

東京新聞は、大阪以外の政令指定都市か抱える「二重行政」の問題を取り上げて、「制度変更の可否を決める住民投票にまで構想を進めた」橋下氏の手腕を評価すると同時に、その強引さが民意の支持を得られなかったと批判している。

道府県内にありながら道府県並みの権限を持つ政令指定都市をめぐっては、古くから二重行政の問題が指摘されてきた。大阪以外にも、二重行政解消を掲げた構想が各地で浮上してきた。(省略)

その先陣を切って、制度変更の可否を決める住民投票にまで構想を進めたのは、ひとえに橋下氏の豪腕による。

商都と呼ばれた大阪の地盤沈下は指摘されて久しい。沈滞する大都市に、持続可能な将来像をいかに描くのか。その論点は地方自治の最重要課題であり、改革の具体的道筋を示した橋下氏の問題提起には大きな意味があろう。

しかし、議会では、異論に耳を傾けぬ市長と野党四党との間で議論が深まることはなく、法定協議会では最終的に大阪維新の会だけで協定書を決定。住民投票実施が決まったのも、政党間の駆け引きの結果でしかない。

議会を軽視して強引に住民投票に持ち込み、「納税者をナメた役所や議会をつぶす」「既得権益を全部壊す」などとあおって主張を押し通そうとした手法は、あまりにも危うい。

議論尽くさぬ改革は認めず。それが、示された民意であろう。
(東京新聞 「【社説】「大阪都」否決 議論の重さ忘れるな」 2015/05/18)

 

産経:対案なき野党にも苦言


産経新聞は、「都構想」を進めようとした橋下氏側も、反対した維新の党以外の各党も、大阪の改革についての議論を深めなかったと批判している。

府市の二重行政を解消して司令塔を一本化し、広域行政を府に、身近な住民サービスは特別区に再編すれば無駄がなくなるというのが大阪都構想だった。

橋下氏はこれまでの選挙の自身や大阪維新の会への高い支持から、住民投票に持ち込みさえすれば都構想は実現すると過信したのではないか。(中略)

橋下氏は「間違っていた」と判断ミスを認め政界引退を表明したが、対立と混乱を残したまま身を引くのは無責任ではないか。

反対した各党にも反省を求めたい。議会での数の優位から、否決すれば都構想はつぶせるとみて、対案を出さずに消極的な対応に終始した。現状維持は対案でもビジョンでもない。

住民投票では、政策も主張も正反対の自民と共産が街頭演説で宣伝カーを並べた。“呉越同舟”といっても、有権者には違和感があった。

大阪が東京と並んで日本を牽引(けんいん)する「ツインエンジン」「二眼レフ」と語られた時代は遠い。企業の本社機能の移転が相次ぎ、経済格差は広がる一方である。高齢化と人口減少に加え、生活保護受給者は全国でも群を抜いて多い。喫緊の課題が山積している。

都構想は頓挫したとしても、行政も市民も身を切る改革に取り組まなければならないことに変わりはない。

住民投票はゴールではなく、大阪の将来像を描く議論のスタートである。
(産経新聞 「大阪都構想『反対』 改革論議は継続すべきだ」 2015/05/18)

 

読売・日経:大阪だけの問題ではない二重行政


読売新聞は、「大胆な改革に対する市民の将来不安を払拭できなかった」ことが、橋下氏の都構想戦略を破綻させたと述べつつ、「二重行政」の問題は、さらなる議論が必要だと説いている。 

橋下氏は記者会見で、「都構想を説明し切れなかった私自身の力不足」と敗戦の弁を語った。

橋下氏らは、「府と市の二重行政の無駄を省き、生み出した金で豊かな大阪を作る」と強調した。行政改革分を含め、財政効果は年155億円に上るとも訴えた。

都構想に反対する自民、公明両党などは、財政効果は年1億円にすぎないと反論した。「大阪市を分割すると、住民サービスが低下する」とも主張した。

読売新聞の世論調査では、2011年以降、賛成が多数だったが、先月27日の告示前には賛否が拮抗、告示後は反対の方が多くなった。財政効果が不透明な中、身近な行政サービス低下への懸念を感じる人が増えたためだろう。

橋下氏は、維新だけで制度案を作成し、市議会の十分な議論がないまま住民投票に持ち込んだ。この強引な手法も批判を招いた。

大阪市は、企業の本社機能の流出が続き、「商都」としての地盤沈下が指摘されて久しい。生活保護受給者の割合も格段に高い。

今後も、大阪市の活性化に向けた議論は継続する必要がある。

道府県と政令市の二重行政は、大阪だけの問題ではない。

昨年の地方自治法改正で、16年度から知事と政令市長の「調整会議」の設置が義務づけられる。人口減時代に道府県と政令市がどう連携するか、議論を深めたい。
(読売新聞 「社説『大阪都』反対 住民投票で破綻した橋下戦略」 2015/05/18)

日経新聞も、「橋下市長らが掲げる政策には検討に値するものが少なくない」として、日本経済の一端を担う大都市である「大阪全体の成長戦略を強力に推進」することを求めている。

ただ、都構想を支持しなかったからといって大阪が今のままでいいと考えているわけではないだろう。橋下市長らが主張した府と市の二重行政の解消は長年の課題だ。インフラなどの老朽化が進むなかで、府と市の戦略を擦り合わせることはますます重要になる。

大阪府と大阪市が対立する様はかねて「不幸せ(府市あわせ)」といわれてきた。大阪の地盤沈下に歯止めをかけ、大阪全体の成長戦略を強力に推進するためにも府と市の協力が欠かせない。

市営地下鉄の民営化など橋下市長らが掲げる政策には検討に値するものが少なくない。こうした政策の是非は今回の投票結果とは別の話だ。

一般に大阪は東京に次ぐ大都市とみられている。しかし、人口ではすでに神奈川県に抜かれて大阪府は3位になっている。都道府県別の県内総生産をみても、2位の大阪府と3位の愛知県の差は徐々に縮まっている。

これはひとえに横浜市や名古屋市に比べて、大阪市の成長力が劣っているためだろう。日本経済を考えるうえでも大都市の競争力の強化は欠かせない。
(日経新聞 「都構想否決でも迫られる大阪の改革」 2015/05/18)

各紙の社説では、読売や日経が大阪市の活性化の必要性を認める意見を述べたが、朝日や毎日、東京、産経は、橋下氏の手法に苦言を呈した。

行政の無駄を省き、地方の活性化を図ることも大切だが、一歩引いた目で国全体の舵取りを考えてみると、大阪都構想には危うい点があったと言える。投票結果が出た後の記者会見で、「道州制にでもなったときに、都構想の設計図がものすごい財産になる」と述べたように、橋下氏の最大の目標は道州制の実現だった。しかし、国防や経済など、国全体としての意志決定を迫られる大きな問題を抱えている状況で、地方自治にエネルギーを注ぐことは、効率的ではない。

ましてや、沖縄で「独立」を主張して活動しているグループもあり、大阪で橋下氏が主導したような動きが各地に広がることになれば、日本の国全体としての一体性に関わる問題にもなりかねない。

橋下市長の個人的な人気とマスコミの応援によって、維新の党は国会でも議席を持つまでになった。しかし、一市長が現職のまま国政に介入することの是非は問われないままになっている。地方主権や道州制をめぐる議論は一種のブームになっているが、橋下氏の政界引退を機に、再考の余地もあるだろう。

 

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