2016/05/28    08:00

日本中が「京都の人」に見えた、オバマ米大統領の広島訪問

オバマ米大統領の謝罪なき広島訪問を通して感じたのは、日本人のある種の「おそろしさ」だった。
 
史上初めての原爆投下によって、10万人以上とも言われる人々がなくなった場所である。その場所を、投下した側の大統領が訪れるとなれば、普通に考えれば、謝罪を要求するのは当たり前のことである。どこかの国であれば、被害者に対する土下座を強要するかもしれない。
 
しかし、日本はそれをしなかった。官民ともに、オバマ大統領が広島を訪れることが、核兵器のない世界の実現につながるという未来への希望のもとに、あえて謝罪を求めることはしないという立場が大勢を占めた。そしてそのことが、政治的に敏感にならざるを得ない広島という場所を訪れる上で、オバマ大統領の背中を押した。
 
日本側の見せた寛容な姿勢は、表向き、過去の不幸な出来事は水に流そうという、建設的な未来志向の考え方にも見える。日米の首脳はそれに呼応するように、敵国から同盟国へと変じた両国の絆を称えた。その一方で、見方を変えれば、こうした日本の姿勢は不気味でもある。
 
謝罪するのが当たり前と考えられる場所で、あえて謝罪しなくてもいいという。まるで日本中が、無言のプレッシャーをかけているかのようだ。「私たちはあえて言挙げして、『謝れ』とは言わない。でも、ここに来る以上は、分かっていますよね?」と。それはまるで、建前と本音を使い分ける、イメージ通りの「京都人」である。「分かったはりますやろ?」という声なき声が、オバマ大統領の背中に突き刺さるのが聞こえるようだ。
 
5月12日の朝日新聞に掲載された風刺画は、そうした空気感をたっぷりに表現していた。「謝罪なき広島訪問」に駆けつけたオバマ大統領に対して、困惑した表情の原爆ドームは、「・・・・・・!?」と、声なき声で答えている。それは、あるべき謝罪の言葉がないということに対する、言語を超えた違和感だろう。まるで「何しに来た?」とでも、言わんばかりの画だ。


(5月12日付 朝日新聞 朝刊 16面)
 
あえて謝罪を求めなかったことで、今回、日本が得たものは何だろうか。まずは、歴史問題を引き合いに出して、日本に対して執拗に謝罪を迫る隣国に対して、無言のメッセージを送ったことだろう。日米両国のように、不幸な過去を乗り越えて友好関係を築くことは可能である。歴史問題に拘泥しすぎれば、現在まさに起きている問題に、対処することができなくなる。
 
そしてまた、オバマ氏の広島訪問までのアメリカ側の動きにも、重要な点があった。ライス米大統領補佐官(安全保障担当)は米CNNのインタビューの中で、「興味深いことに日本は謝罪を求めていないし、私たちはいかなる状況でも謝罪しない」と述べている。アメリカ政府の高官が、「いかなる状況でも」謝罪することはないと、キッパリと発言したのだ。
 
この発言は、歴史問題を考える上で、いい意味での先例になるかもしれない。国家がかつての国策の誤りを簡単に認めて、相手の国に謝罪することは、普通のことではない。ライス氏の発言は、国際的に見てもスタンダードな立場と言える。
 
ライス氏の考え方に則れば、たとえ原爆を頭上に落として一般市民を十万の単位で殺害したとしても、アメリカは日本に謝罪する必要がないのだ。とすれば、ましてや真偽の明らかでない南京事件や慰安婦の強制連行の問題で、日本は「いかなる状況でも」中国や韓国に対して謝罪する必要はないということになる。ライス氏の発言は歴史問題での日本の立場にとって、有利に働く可能性がある。
 
安倍首相は昨年の終戦の日に寄せた「安倍談話」の中で、謝罪外交からの脱却を宣言したが、その年末には慰安婦問題の解決を急いで韓国との合意をかわし、舌の根の乾かぬうちに自らの言葉に傷をつけてしまった。しかし、オバマ大統領の「謝罪なき」広島訪問が実現したことで、安倍首相は失ったダメージをいくぶんかは回復できたのかもしれない。
 
今回のオバマ氏の広島訪問を受けて、今後、安倍首相がハワイの真珠湾を訪問すべきだという圧力が高まる可能性もある。その際には、「謝罪なき広島訪問」にならって「謝罪なき真珠湾訪問」で通せばいい。そしていずれは、かつて生死をかけて戦った日米両国が、すべてのわだかまりを乗り越えて、真の友人になれる日が来ることを望みたい。

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