2016/06/16    11:36

舛添さん、さようなら。ポピュリズムさん、こんにちは。

政治資金の公私混同で、マスコミや世論から集中砲火を浴びた舛添要一・東京都知事の辞職が決定した。一時は、夏のブラジル・リオデジャネイロでのオリンピックに、2020年大会の開催自治体の長として出席するために秋までの延命を懇願していたが、都議会の自民党もかばい切れずに不信任案を提出していた。
 
家族旅行をはじめとする舛添氏の政治資金の使い方については、目を疑うような問題ばかりであることは確かだ。しかし、今回の辞任劇には、疑問を抱かざるを得ない。考えてしまうのは、「任期中の公職者が辞めなければいけないのは、どのような場合か」ということである。
 
法律で定められている任期満了とは違い、途中で政治家が辞める理由はケースごとに異なる。果たして、どのような場合に、公職者は任期の途中で、首を切られるべきなのだろうか?
 
まず考えられるのは、法律に違反していれば、辞めなければならないということである。しかし今回の問題では、いくら舛添氏のお金の使い方がずさんなものであったとしても、第三者による調査においても、違法な部分は見つかっていない――「まだ」、見つかっていない。だから、舛添氏は違法行為をしたために辞めるわけではない。
 
これは、ある意味で興味深い。違法行為もしていないのに舛添氏が辞任しなければいけないということは、「法律に書いていないことでも、やってはいけないことがある」ということだろう。確かに、世間には「常識の範囲」というものはある。しかし、その「やってはいけないこと」を決めるのは、いったい誰なのだろうか。マスコミだろうか、国民だろうか。裁判でさえ「疑わしきは罰せず」が原則のところが、舛添氏に対して世論は「疑わしきは罰せよ」と叫んだ。罰すべきかどうかのこの基準は、いったいどのように決まるのだろうか。
 
舛添氏は都民からの支持を失ったのだから、辞めるのは当然だという意見もある。これについては舛添氏も、自分は信頼を失っていると自ら吐露している。これはつまり、支持率が一定以下になれば、あるいは都民の多数が「辞めるべきだ」と考えたとしたら、たとえ法律で決まっている任期の途中であっても、たとえ当人が違法行為をしていなくても、都知事は辞めなければいけないということなのだろうか。
 
だが、いったいどの水準の支持率以下になれば、辞めなければいけないのかは、誰も知らない。そもそも、支持率次第で任期途中でも辞めなければいけないとするなら、都知事の任期を定めている法律や、都民が都知事を選ぶ選挙の仕組みは、いったい何の意味を持っているのだろうか。
 
面白いのは、マスコミ各社が「舛添辞めろ」の大合唱だったことだ。いや、待てよ、「都民が見放したから任期途中でも辞めろ」というのは、マスコミがいつもこぞって批判している「ポピュリズム」というやつではなかっただろうか。あれ、何か、おかしいな……。
 
結局のところ、舛添都知事がなぜ辞めなければならないのかを、簡単に説明するとすれば、それは「疑惑が出たから」という一言に尽きる。だが、疑惑が出たからといって、任期の途中で都知事の首を切ることが、健全なことなのだろうか。疑惑ならマスコミがいくらでも創り出せる。疑惑が出てきたからといって、自分たちの手で選んだ都知事を簡単に追い出すことが、民主主義なのだろうか。
 
16日付の朝日新聞では、ジャーナリストの江川紹子氏が次のように述べているが、まさに時代の空気を言い当てたかの感がある。

騒ぎに乗っかって舛添さんをここぞとばかりに正義漢ぶって一斉にたたきまくる。芸能人の不倫報道と同じレベルとしか思えません。そして次の餌食を探しに行くのでしょう。 

もしマスコミが疑惑を報じて集中砲火し、世論がそれに乗っかって、公職者を任期の途中でも追放できるのだとすれば、マスコミにはどれだけの権力があるのだろうか。憲法第15条には「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」と書いてある。しかし、マスコミの報道に自らの判断を委ねる時、国民はこの「固有の権利」を、彼らに譲り渡している。これが、「立憲主義」が流行り言葉になっているはずの、この国の現実の姿ではあるまいか。
 
今日では、何か疑惑があるたびに、政治家もタレントもテレビの前で頭を下げる。お決まりの理由は、「世間を騒がせたから」だ。だが、お祭り騒ぎを煽ることで儲けを得ている人たちもいる。それがマスコミの習性である。実は、本当の意味で「世間を騒がせている」のは、渦中の人物ではなく、疑惑でご飯を食べているマスコミの方なのかもしれない。彼らの騒ぎに身を任せて、民主主義をこのまま劣化させていっていいのか、考える必要がある。
 
舛添さん、さようなら。ポピュリズムさん、こんにちは。

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