2016/01/01    00:00

慰安婦問題の日韓合意は、日本の「勝利」――それは、悲しい“勝利”

年の瀬に、日本が韓国と慰安婦問題の「解決」について合意したという、電撃的なニュースが飛び込んできた。日本政府はこれまで、一切の賠償の問題は日韓基本条約を結んだ際に、「完全かつ最終的に」解決したとして、この問題についても解決済みという立場を取ってきた。しかし、安倍政権はこれまでの一線を踏み越えて、韓国の設立する基金に10億円の予算を拠出すると表明した。
 
本来、すでに解決しているはずだとしてきた問題をもう一度協議し、正式な賠償ではないにせよ、お金を払ってしまう。以前、村山富市内閣では、民間のアジア女性基金が設立されたが、今回の“解決策”も、それと近い構図である。
 

安倍首相は「村山首相の改良版」という仮説

よく考えれば、「未来志向の談話」を出すとしていた安倍首相は、2015年8月の戦後70年の節目の談話で、村山談話を下敷きにして、再び「反省」と「おわび」を盛り込んだ。村山談話は「遠くない過去の一時期」という言葉を使って、日本がお詫びをする「国策」がいつのどの政策なのかをぼかしていた。それに対して安倍談話は、日露戦争までの歴史を評価しながらも、その後の歴史を否定する内容を取っており、「村山談話の改良版」と言えるものだった。
 
ここでも、歴史問題という点については、村山内閣とのパラレルが見える。「保守」という期待を背負ってカムバックした安倍首相は、本当にその名にふさわしい首相と言えるだろうか、あるいは、「村山首相の改良版」とでも言う方がふさわしいのだろうか。いや、もしかすると、安倍首相自身は、自身の哲学をお持ちかもしれない。むしろ党内の反対意見や、連立相手に配慮しているのかもしれない。しかしそうであれば、「保守」を掲げているはずの自民党は、もはや社会党化しているということか。
 
どちらにせよ、韓国と「最終的かつ不可逆的」な解決で合意しても、合意が守られる保証はどこにもない。ソウルの日本大使館前に置かれた慰安婦像が、撤去されるという保証もない。市民団体が韓国政府の意見を受け入れる保証はない。合意通りに、国連などでの論争を韓国が控えるという保証もない。「ないない」づくしの合意には、「慰安婦問題が解決しました」と内外にアピールする狙いがうかがえる。
 

韓国には“勝った”が、しかし……。

その最大のアピールの先は、おそらくアメリカだ。アメリカは慰安婦問題が日韓関係の障害となり、北朝鮮を意識した三カ国の連携を妨げるとして懸念してきた。安倍首相が2013年の年末に靖国神社に参拝した際に、「失望」という強い語調の声明を出したのも、地域の安定を損なうと考えたからだ。
 
もし仮に、安倍政権と朴政権が発足してからの日韓外交が、アメリカに対する「アピール合戦」だったとしたとしたなら、今回の合意によって勝利を得たのは日本だろう。
 
朴大統領は慰安婦問題を盾にして、安倍首相との単独会談を昨年11月まで拒み続けるとともに、第三国への訪問でも日本を批判する「告げ口外交」を繰り返すなど、この問題に執拗にこだわった。さらには、アメリカの金融秩序を揺るがそうと中国が始めたアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加を表明したほか、中国主催の軍事パレードに出席するなど、あからさまに中国に傾斜していった。これにほとほと嫌気が差したのはアメリカで、ワシントンでは「韓国疲れ(Korea fatigue)」という言葉もささやかれた。
 
対して安倍政権は、ガイドライン改定と、集団的自衛権の行使容認によって、安全保障でのアメリカとの一体化を進めて、足並みをそろえた。環太平洋経済連携協定(TPP)も妥結にこぎつけ、日米の首脳が、独裁体制の中国には貿易のルールを書かせないという点で一致した。
 
今回の合意は法的な拘束力が疑問視されているが、もし韓国がその内容をないがしろにすれば、国際公約違反を問われる。そうした意味では、日米が一緒になって、日本叩きにはやる朴政権に「口封じ」を行ったという見方も成り立つ。「対米外交」という意味では、今回の合意は、安倍首相の朴大統領に対する勝利宣言となった。確かに、アメリカの歓心を得るという日本は韓国に勝ったのである。
 

合意に漂う「悲しさ」

しかし問題は、アメリカとの関係でいくら得点を稼いだとしても、それが本当に日本のためになるのかということだろう。
 
合意後の記者会見で岸田文雄外相は、慰安婦問題は「当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」だと定義した。これは河野談話に出てくるものと同じ文言だ。安倍首相は「この問題を次の世代に決して引き継がせてはならない」と語っているが、河野談話を引き継ぐことは、次の世代にも問題を引き継ぐことにならないのだろうか。
 
「軍の関与」については、韓国系の団体などが「20万人連行説」をいまだに広めており、米カリフォルニア州では高校の歴史教科書に載ってしまっている。今回の合意が、河野談話と同様に、こうした風説を日本政府が裏書きした証拠として、特定の勢力に利用されないのか、とても気にかかる。
 
今回の合意は、アメリカとの関係を強化するという意味合いでは、確かに効果があったのかもしれない。また、朴大統領の反日外交のやり過ぎに対して、韓国国内の世論も反発しており、一定のバランス機能は働いた。その点では、「日本叩き」が「さすがにやり過ぎ」と言われる点がどこなのか、韓国側の基準を知ることができたという意味合いもある。加えて、北朝鮮や中国の脅威を考えれば、日米韓の連携が重要だという事実に変わりはなく、日韓関係が前進することそのものは歓迎すべきことだ。
 
しかし、日米韓の力学を考える時に浮かびあがってくるのは、国の安全を外国に委ねていることの悲しさだ。アメリカなしでは安全でいられないのであれば、アメリカの意向を最後には呑まざるを得ない。韓国と外交をしていながら、背後でアメリカの顔色をうかがわざるを得ない。日米同盟を堅持しつつも、日本が独自で国を守れるだけの体制を整えていかなければ、歴史問題も、望ましいかたちで解決することは、いつまで経っても難しいままだ。

日本がより独立心に満ちた国となるにはどうしたらいいか。それが、日韓合意で幕を閉じた旧年から、新しい年に引き継がれた課題と言えるのではないだろうか。

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