2015/07/15    13:00

「基地の地主は大金持ち」? 百田氏の発言と沖縄の複雑な事情を考える

自民党の若手議員の勉強会で、ゲストとして招かれた作家の百田尚樹氏が「基地の地主たちは年収何千万円だ。だから地主が六本木ヒルズに住んでる」などと発言したことは、「沖縄に対する侮辱だ」といった批判を浴びた。

「軍用地」「軍用地主」という言葉は、多数の米軍基地を抱える沖縄の事情と関係がある。本土で暮らす人々にとっては馴染みのない言葉だが、これについてマスコミでは、百田氏や自民党議員への批判ばかりが繰り返され、沖縄の複雑な事情についての説明は十分とは言えない。
 

沖縄市議「接収で地主は喜んでいる」

そうした中で、沖縄と「軍用地」「軍用地主」をめぐる問題について、8日付の沖縄タイムスに、興味深い記事が掲載された。見出しは、「普天間地主『多数は接収され喜んでいる』沖縄市議が発言」。発言の主は、沖縄県軍用地等地主会連合会の元会長だった沖縄市議だ。

自民党議員らによる報道圧力問題をめぐる沖縄市議会本会議の質疑の中で7日、市議会与党で元土地連会長の浜比嘉勇氏が「(普天間飛行場内に土地を持つ)宜野湾市の地主の大多数は今、接収されて喜んでいる。返還されることが苦悩だ」と発言した。

浜比嘉氏は、同問題に対する抗議決議文の中の「先祖伝来の土地を強制的に接収された地主の苦悩を顧みず」との文言を「歴史的事実が違うのではないか」と指摘した。

「接収当時は苦悩したが、復帰で借地料が6・6倍に伸び、その時から地主の苦労はなくなった」と持論を展開した。

「(土地連の会長時に)宜野湾市の地主会の総会などに何度も行った。できれば返さないでほしいと地主は言っている」「世界一危険な普天間飛行場はどこかに移してくれと言う圧倒的な県民の声で(今は)地権者はそういう方向に向いている」と述べた。

この発言に、同市軍用地等地主会の又吉信一会長は「地主会では、(返還の意思を問う)アンケートを1度もしたことはない。返還されて困る人も一部にはいるだろうが、永久に残してほしいというのは違う」と反論した。

「一部の人の話を議会に出すのなら、はっきりとした根拠を示してほしい」と困惑した。
(沖縄タイムス 「普天間地主『多数は接収され喜んでいる』沖縄市議が発言」 2015/07/08)

沖縄の軍用地とは、沖縄が日本に返還された後、米駐留軍や自衛隊が使用している基地、および那覇空港用地のことを言う。その半数以上は個人・法人所有の土地を国が借りる形になっており、毎年、借地料が所有者に支払われている。ただ、借地料を受け取っている「軍用地主」が抱える個々の事情は多様で、一律に、「年収何千万円」というわけではない。

だが、戦後70年が経った現在、初代の地主のほかに、県外の人も加わり、ビジネスや資産運用のために所有権が売買されるようになってきている。
 

「軍用地で安定収入」をうたう地元の不動産会社

沖縄県内の不動産会社のサイトを見ると、必ずと言っていいほど「軍用地」という特別な項目があり、売買に関する詳しい解説や情報が掲載されている。そして、「軍用地を買う8つのメリット」という説明は、ほとんどの不動産会社が共通の文章を使っているようだ。

一部を引用すると――

1.管理は国におまかせ、わずらわしい事が全くありません。会社経営や株式、アパート経営などの投資物件と違い確実な収入が毎年入ってくる。

2.国から直接、借地料が貰える 毎年8月に1年分の借地料が、国より地主へ銀行振り込みされます。
一般の投資商品(アパート経営や株)と違い、第三者へ管理料や手数料を支払う必要がなく、手間と費用がかかりません。

3.借地料は毎年値上がりしているので損がありません。
借地料の毎年の値上がり分は12月に毎年振り込みされます。
値上がり率は、政治に大きく左右される為、大きな事件、事故が起きると上がり傾向にあります。
<以下省略> 

さらに、「『軍用地』こんな方におすすめ」として、「老後の安心・安定した収入物件を探されている方、沖縄移住後に収入物件をお考えの方、金利の高い安心できる貯蓄先を探されている方(国債や定期預金の利率より高い)…」という説明も見かける。ある不動産会社のサイトには、「軍用地は、数ある投資物件の中でも高級ブランド物件」という文言もみられる。

こうしたインターネットのサイトだけでなく、沖縄の地元紙には、週に2~3回の頻度で、軍用地関連の広告が掲載されている。また、沖縄県の地元銀行である琉球銀行や沖縄銀行は、軍用地購入専用の融資を行っているなど、沖縄ならではのサービスを設けている。

沖縄は、県土の約20%が軍用地で、それに対して年間総額約950億円が国から支払われているという(2012年11月現在)。個人所有のほか、村や町などの17の自治体が所有する土地があり、米軍のキャンプ・ハンセンがある宜野座村には、毎年20億円の軍用地料が入る。それらは村内の福祉政策に使われたり、住民に現金で配られたりもしている。(不動産投資新聞 「沖縄発! 知られざる「軍用地投資」の実態とは!? ~ 国から支払われる安定・確実な収益 県民感情に配慮も必要 ~」 2012/11/14)

このような軍用地料をめぐる事情は、地域間の格差という問題も生んでいる。用地料を受けられる地区と受けられない地区で、住民サービスに格差が生じ、住民間に不公平感を抱かせる原因になっているという。

沖縄の本土復帰から15日で43年。基地を抱えるがゆえに入る基地マネーは、地域を分断する因子にもなっている。

同じ小学校に通っていても、住む区(地域)によって児童が受けられるサービスが異なる。沖縄県宜野座(ぎのざ)村で、小学生の子を持つ30歳代の女性は、数年前にその事実を知り、驚いた。

軍用地料を受け取る区の一つは、学童保育を整え、月2900円の給食費も全額補助している。小6になると、区が旅費を負担しての北海道旅行が恒例行事となっている。一方、女性が住む区は軍用地料の収入がないため、こうした恩恵はない。「基地があることで不平等が生まれるなんて、納得できない」(中略)

村は軍用地料が入らない区に年約2千万円を補助しているが、「補助だけでは、ほかの区のような制度はできない」と、元区長で村議の山内昌慶さん(71)は指摘する。さらに、「高額の軍用地料が入る区の住民は『基地出て行け』と言いづらい」とも話した。(中略)

《軍用地料の問題に詳しい沖縄国際大学の来間泰男名誉教授の話》 市町村を通じて「区」に分配される軍用地料は、大きな問題をはらむ。立派な公民館を建てたり、飲み会や旅行、各種費用の補助に充てられたりしているが、かつては地域住民で山林を管理し、薪などを切り出して稼いでいた収入が、今は勤労を伴わない収入になっている。受け取る側を批判するわけではないが、今の状態は正常とはいえない。基地を維持したいという思いにもつながっている。基地返還を進め、本来の姿に戻すべきだ。
(朝日新聞 「封筒に5千円、沖縄軍用地料 『基地出てけ』言いづらい」 2015/05/12)

沖縄では、米軍基地に対する反対運動が盛んに行われているが、一方で、反対運動が激しくなればなるほど借地料の値上げにつながる面もあるため、軍用地主たちは、反対運動に参加しながら、一方では「返還しないでほしい」という本音を隠しているという事情もあるのだ。

本土に住む人々にはなかなか分かりづらい問題だけに、沖縄県の人々の苦悩や迷いについて大手マスコミがもっと率直に伝える必要もありそうだ。そうしなければ、沖縄の人々の心に本当の意味で寄り添うこともできないし、長期的な視点で、今後どのような解決策をとることが、多くの人の幸福につながるのかを考えることもできないのだから。

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