2015/12/29    00:04

【政策提言】 慰安婦問題で日韓が合意――10億円あるなら類語辞典を買えばいい

なるほど、衆参同日選に勝つための、味方をもあざむく一手なのかもしれない。
 
訪韓した岸田文雄外相は、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と会談し、慰安婦問題についての日韓両政府の合意をまとめた。終了後の記者会見で、岸田外相は「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」と指摘。「日本政府は責任を痛感している」とした。
 
また、「日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる」として、具体的には韓国政府が元慰安婦の支援のために設立する財団に10億円を拠出するという。両外相は、今回の合意をもって、「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」と述べた。
 
これまで安倍晋三首相は、慰安婦問題での韓国への譲歩を控えてきたが、ここにきて一線を踏み越えた格好になった。これはあくまで推測だが、背景には、来年の夏に衆参同日選の憶測が飛ぶ、政界事情が垣間見える。
 
今回の合意で、慰安婦問題を表向きには解決したということにすれば、安倍晋三首相をこれまで目の敵にしてきた側からの批判のトーンは、いったん弱まるかもしれない。対して、安倍首相を支持してきた側に対しては、「夏の選挙で勝って、憲法改正の合意をつくるために、批判を和らげる必要があった」という説明も成り立つだろう。
 
安倍首相としては、何としても自分の手で憲法改正を成し遂げたいところで、安倍首相以外にこれを実現できそうな首相候補も、今のところは見当たらない。安倍首相を支持する層は、韓国に対する「おわび」や譲歩は歓迎しないだろうが、「憲法改正のためだ」という大義を立てられれば、これに表立って反対することも難しくなる。
 
「安倍談話」に、自身の支持者にとっては不本意な「おわび」などの言葉を盛り込みながらも、「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」という一言で、支持離れを食い止めたのと同じメカニズムではないだろうか。
 
今回の合意によって、夏の選挙に向けて、安倍首相はさらに政権基盤を強くすることができたのではないだろうか。しかし、このことが、日本の国益を進展させたのかは、極めて疑問だ。
 
これまで日本政府は、この問題については解決済みだとしてきた。それならば、すでに解決しているはずの問題に対して、なぜ政府の予算(=国民の血税)から10億円ものお金を拠出する必要があるのだろうか。28日付の日経新聞の世論調査では、57%が韓国に対する譲歩は必要ないと回答している。安倍首相は世論に対して、どのように説明するのだろうか。
 
また、安倍首相は今回の合意について、「この問題を次の世代に決して引き継がせてはならない」と語っている。だが、これまで「解決」のゴールポストを動かし続けてきた韓国が、この問題を今後も蒸し返さないという保証はどこにもない。
 
岸田外相は今回の基金への拠出について、「日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる」と説明した。この政府の見解によれば、「心の傷」はお金で癒えるもので、予算はそのために支払われるということだ。しかし、韓国側が「傷はまだ癒えていない」「もっとくれ」と言い続けることは、大いにあり得るのではないだろうか。安易な譲歩は、将来に禍根を残すものと言える。
 
日韓基本条約の際に、両政府は賠償の問題が「完全かつ最終的に」解決したことを確認した。今回の合意では、「最終的かつ不可逆的に」解決されることを確認している。またしばらく時間が経てば、この問題は再び蒸し返され、日本政府は再びお金を払い、問題の解決を再び確認することになるのかもしれない。
 
日本政府がその時のためにやっておけることは、類語辞典でも大量に買い込んでおいて、外務省の全職員が総出で「完全」「最終的」「不可逆的」に替わる新しい言葉を探すことかもしれない。そうだ、今回の10億円も、いっそ全国の書店から類語辞典を買い占めることに使ってはどうだろうか。そうしたら、出版業界への補助金になって、消費税の軽減税率を彼らに適用しなくても済むかもしれない。

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