2016/05/27    13:15

来年からのサミットで、日本の首相の真価が問われる

伊勢志摩サミットの陰の主役が中国だったことは間違いない。
 
首脳宣言には、南シナ海での中国の威圧的な行動を念頭に海洋安保について触れ、「法に基づく主張」「力や威力を用いない」「平和的な紛争解決」という三原則を盛り込む。
 
今回のサミットが中国対策を意識したものであることは、オバマ米大統領の旅程からも分かる。日本では広島訪問ばかりが注目されがちだが、訪日前にはベトナムを訪問し、同国への武器輸出を解禁することを明らかにしている。
 
ベトナムとはベトナム戦争の歴史の記憶とともに、同国の人権問題といった懸案もあるが、それを脇に置いてでも、同国の防衛力強化に協力し中国の覇権主義を押しとどめる必要性の方が勝ったということだろう。
 
G7サミットの地ならしとして4月に行われた外相会合でも、南シナ海での中国による人工島建設を批判する文言が盛られ、中国側は色めき立って反論した。その流れを受けて、首脳会合もまた中国対策で各国が足並みをそろえるための機会となった。
 
逆に、これまで中国に対して融和的な姿勢を取ってきた国にとっては、一つの正念場だ。イギリスは首脳外交や経済関係を通じて中国と急接近し、「西側の最良のパートナー」となった。しかし、今回のサミットではイギリスの対中接近を快く思わない日米からのプレッシャーにさらされることになると、英フィナンシャル・タイムズ紙が報じている。
 
こうした背景から、オバマ氏の広島訪問も原爆投下についての謝罪よりは、歴史的な和解を演出して日本との同盟関係の強化につなげるという意味合いの方が強い。朝日新聞の書面インタビューでオバマ氏は、原爆投下の是非については踏み込まず、広島訪問が過去の敵国同士が「最強の同盟国(strongest of allies)」になったという歴史的和解を示すものになるという認識を示している。
 
オバマ大統領は「アジア回帰」戦略を掲げてきたが、この広島訪問がその総仕上げになるかもしれない。第二次世界大戦で直接的な敵国だった日米は、安倍首相の訪米時の議会演説と、オバマ大統領の広島訪問によって、歴史的な和解を演出して、新たな脅威に共同して対処しようとしている。その一方で、日本と戦ったこともない中国共産党政府は、しきりに日本を70年以上前の歴史問題で糾弾し、両国関係の前進をたびたび阻んできた。このコントラストは明らかだ。
 
とはいえ、今回のサミットは比較的、円満な空気で議論が行われたが、今後、どうなるかは分からない。最も大きな変数は、米共和党の候補者となった実業家のドナルド・トランプ氏が実際に大統領になった場合だろう。来年以降のサミットでは、先進国間の政策協調を目指すよりは、合意そっちのけで、より露骨に国益をぶつけ合う場へと議論の雰囲気が様変わりする可能性が高い。いずれも「ポピュリスト」とメディアに揶揄されるアメリカのトランプ氏、フランス国民戦線のルペン氏、前イギリス市長のジョンソン氏が、サミットで顔を揃えることになるのではないかという懸念の声もある。
 
その時には、サミットのホストとしてよりも、もっと重要な意味で、日本の首相が真価を問われる場になるかもしれない。

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