2015/10/11    08:00

学生のみなさんへ 「SEALDs」の言う通り、自分の言葉で考えよう

学生のみなさんへ

今年の夏ごろ、国会では安全保障関連法案が大きな議論になりました。「戦争法案、ゼッタイ反対」「安倍政治を許さない」と言う人々が、デモをしていたことなどが、記憶に新しいのではないでしょうか。

今回の法案では、一部のマスコミが反対のキャンペーンを張っていたように見受けられます。その手口は、いつもと一緒です。「こんなに多くの人々が反対しています」と繰り返し言って、法案に賛成している人たちが意見を言いにくいようにするのです。「多くの憲法学者が反対している」という話から始まり、多分野の学者らが反対の会をつくり、学生団体が出てきたかと思えば、ママの会が取り上げられ、おじさんが出てきて、といった具合です。中でも、学生団体「SEALDs」が、すっかりヒーロー扱いされていましたね。

こうなると、大学などでも、「安保反対」は言えても「安保賛成」は言えないという雰囲気がつくられていっているのではないかと、不安になります。各地の大学では、授業で反対のシュプレヒコールの練習をさせたり、学内の一斉メールのシステムを使って、安保反対の署名を呼び掛けたりした教員もいたと聞いています。

来年の参院選に向けて、日本共産党は「安保反対」の一点で、野党各党に、選挙協力と連合政府の樹立を呼び掛けています。来年にかけて、この問題の議論が再びぶり返す可能性もあるでしょう。「戦争法案」というレッテルが歩き回る中で、「日本を守りたい」という気持ちを持っていて、安保法案にも賛成だと思っている学生のみなさんにとっては、居心地が悪かったり、あるいは自分の意見をいいづらい雰囲気になってしまったりするかもしれません。

でも、大丈夫です。いかに「反対意見が言えない」という雰囲気ができたとしても、自分の言葉で考え、勇気をもって自分の意見を発表する学生は、いつの時代にもいました。戦後、暴力的な左翼思想が、今よりも幅を利かせていた時代でもです。そんな、先輩たちの例を少し見ていってみましょう。

たとえば、JR東海の葛西敬之・名誉会長は、アメリカとの安保条約の改定でもめた「60年安保」と言われる運動の際に、大学生活を送りました。当時は今よりも多くの人たちが、「安保反対」を唱えていて、国会を取り囲んでいました。葛西氏は、クラス内の討論会で安保反対の学生に反論した思い出を、次のように語っています。

 1959年4月、東大の文科一類に入った。世の中は、翌年に控えた日米安全保障条約改定に反対する運動で騒然としていた。学内には立て看板が並び、私のクラスでも討論会が開かれた。
 寮の自治会の委員だった学生が教室の前に立ち、議長を務めている。「安保改定を阻止しなければならない。そのためには我々が街頭に出て、行動する必要がある。どうすればいいと思うか」と問う。
 私は手を挙げ、発言した。「安保改定阻止という前に、安保条約とはどういうものなのか、日本の安全保障はどうあるべきなのか。まずその議論をした方がいい」
 このときの議長の反応は忘れられない。あきらかに侮蔑とわかる表情を浮かべ、「君は随分遅れているね」。友人の一人が「僕も同じ意見だ」と私に賛同したが、とにかく「遅れている」のひと言ですまされ、討論会は終わった。
 その後の昼休み、私のところへクラスメートが何人もやってきて、「実は僕も同じ意見なんだ」と口々に言う。「でも学校の先生も自治会も安保反対で固まっている。安保条約を一から議論しようと言うと白い目で見られそうなので、黙っていた」ということだった。
 戦後になって言論の自由が確立されたといわれるが、果たしてそうだろうか。一度流れができてしまうと、多くの人が異なる意見を言いにくいと感じ、口を閉じてしまう。それは戦争の前もいまも、変わっていないように思う。
 クラス討論会はその後もたびたび開かれ、「僕たち東大生は民衆の代わりに考えなくてはならない。その責務がある」というような、ばかばかしい議論をしていた。
(日経新聞 葛西敬之「私の履歴書⑥ 東大入学」 2015/10/06)

安保条約に反対かどうかという前に、まずはそもそもの安全保障の議論をしようと、葛西氏は呼びかけました。それを「遅れているね」のひと言で済ませてしまう。そんな、結論の決まった議論のいい加減さは、まったくの噴飯物と言えそうです。でも、今日でもきっと、どこかでこうした光景が展開しているのかもしれませんね。

この安保闘争の時代からさらにさかのぼって、これよりももっと激しい経験をしているのは、初代内閣安全保障室長を務めた佐々淳行氏です。学生活動家が提唱した授業ボイコットに反対したことで、なんと相手側から「絞首刑に処されるべきファシスト」と名指しされたといいます。何とも物騒な話ですね。これは、終戦から5年ほどが経った頃の出来事です。

 敗戦から五年、焼け跡の記憶も生々しく、食料も十分でない時代である。もう戦争なんかまっぴらご免だとばかり、反戦・反帝左翼学生運動はたちまち全国の大学に広がった。
 東大も例外ではなかった。講義中の横田喜三郎法学部長が、雪崩れ込んできた全学連の闘士たちによって教壇から引きずり下ろされ、法学部の学生大会では、日本共産党東大細胞の学生運動家たちによって、反帝、反戦、反米、反単独講和のスローガンの下、授業ボイコットによる全学ストが提案された。
 平和を願うことでは私も人後に落ちないが、マルクス・レーニン主義の唯物史観に立って、「目的は手段を正当化する」と暴力革命を肯定する全学連の路線には、どうしても賛成できなかった。
 法学部学生大会で、スト反対の演説をして紆余曲折の末、否決へと持っていった私は、「革命成功の暁には絞首刑に処されるべきファシスト」としてリストに載せられた。
 絞首刑などにされてはたまらない。そこで、私は、暴力革命に反対し体制内改革を目指す同志を集めて「学生研究会土曜会」を結成し、全学連に対抗する学生運動を展開した。
(佐々淳行 『私を通りすぎた政治家たち』 文藝春秋 pp. 46-47)

ストライキの呼びかけに対して、反対演説を打ち、否決に持っていった腕力もさることながら、そこから反対の学生運動を立ち上げたというのだから、勇ましい限りです。「学生運動」と言えば左翼のイメージばかりがありますが、確かにこうした気骨ある学生もいたと知ると、励まされるものがあります。

佐々氏と同じ時期に大学生活を送った元駐タイ大使の岡崎久彦氏も、左翼活動に対して反対演説をぶった経験をお持ちでした。しかしこちらは、後に外交官となるだけあって、エピソードにもどこかエレガントさが漂います。当時の同級生の証言から紹介します。

レッドパージに反対して学生側がストを打ち、バリケードを作るということがあり、それに対して警官隊を導入した。僕らは外から見ている、という感じだったが、集会では左翼のアジ演説がどんどん始まる。
 そのときに彼が演台に立った。僕らから見ると、芸術家的な彼がそういう舞台に立つことは、考えられなかった。それが一人で立って反対演説をぶったわけです。これは非常に勇気、度胸のいることでね。この勇気から、ああやっぱり岡崎邦輔の血を引いた政治家としての素質があるという、彼の違った一面を見たように思いました。完全に左翼漬けのときに演説を打つというのは、相当しっかりしたものがなければ、ヤジでもって打ち消されちゃう。もう引きずりおろされるような雰囲気でしたから。
 見方が大人なんです。当時ゲオルギウという作家が、「25時」という小説的な本の中で書いていたのを引用しながら演説した。同じ演説でも格調が高いんです。
「あんたたち、知らないから理想の社会と思ってぎゃーぎゃー言っているけど、共産主義の現実は違うんだよ」というのをズバッと言うんだ。変なヤジも飛ばない。彼は最後まで話し終えた記憶があります。当時、日本ではナチズムに対してはすでに否定的だったが、共産主義に対しては幻想があった。それを二つとも全体主義で一脈通じる面があることを言える人間はいなかった。相当勉強していないとできない。
(岡崎久彦 『国際情勢判断・半世紀』 育鵬社 pp. 255-256)

こちらも反対演説を行ったようですが、どこか文学的な色彩があったようです。ヤジも言わせず、最後まで喋ったというのですから、そうとう聞かせるものがあったのでしょう。岡崎氏は外務省時代から評論活動を始め、退官後は外交評論家としてご活躍されましたが、そうした言論活動の原点の一つがこうしたところにあるのかもしれません。

「SEALDs」は自分の言葉で考えることの大切さを語りながら、一方で街頭では法案について「とりま、廃案」を連呼しました。「自分の言葉で考える」と言いながら、「とりあえず法案は廃案だ」と言ってしまえることの矛盾に気づいていないのだとしたら、それは自分の言葉で考えていると言えるのだろうかと、疑問に思ったりもしました。

もしも学内の雰囲気が、「とりま、廃案」「とりま、SEALDs」「とりま、憲法9条は世界の宝」という感じになってきたら、この記事で紹介した大先輩たちのエピソードを思い出してみてください。彼らこそ、周りの「とりま、安保反対」「とりま、授業ボイコット」の空気に流されることなく、自分の言葉で考え、意見を言い、勉強に励み、そしてこの日本の社会をつくってきた見習うべき人々です。

そして、「SEALDs」を色々な大人たちが応援しているように、みなさんが自分の言葉で声を上げる時にも、必ず応援してくれる心ある大人たちがいます。そのことを、忘れないでください。

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