2016/03/26    15:14

未完の「核なき世界」構想――オバマ大統領の広島訪問はあるか?

オバマ米大統領が、5月の伊勢志摩サミットで訪日する際に、広島を訪れる可能性が議論されている。国務省高官が22日に、ホワイトハウスが大統領の広島訪問の可能性を検討していることを明かした
 
オバマ氏が2009年4月にプラハでの演説で「核なき世界」の構想を提唱して以来、広島訪問は宿題の一つになってきた。先の大戦での原爆投下の責任を問わないまま、アメリカ大統領が核廃絶を提唱することは、ダブルスタンダードと隣り合わせだからだ。
 
いくら核兵器が残虐な兵器だから廃絶すべきだと訴えたとしても、その張本人が、生身の人間の上に核兵器を投下した世界で唯一の国の元首であるなら、それほどの説得力はない。もし「核なき世界」を本当に実現しようとするならば、まずは核兵器を実際に使用し、多くの民間人を犠牲にしたことについて、アメリカが非を認めて謝罪する必要があるのは、自然な論理と言える。
 
オバマ氏はプラハ演説が評価されて、政権発足から1年と経たない間に異例のノーベル平和賞を受賞した。しかし、その後はシリア内戦の対応に手間取った上に、中国が南シナ海での人工島建設を続け、周辺国に脅威を与えるなど、外交面での目立った成果は上がらなかった。広島訪問には、大統領としての“ルーキー・イヤー”に掲げたビジョンをもう一度、よみがえらせ、外交成果を固めようという狙いがうかがえる。
 
「原爆投下は必要だった」と主張する退役軍人や共和党は当然、批判するだろうが、日米関係の将来を考えれば、オバマ氏の広島訪問はぜひとも実現してもらいたいものだ。いわゆる歴史問題は、中国や韓国との外交問題がクローズアップされがちだが、歴史問題を解決する上での最大のカギはアメリカとの関係にある。
 
東アジアからアメリカを駆逐しようともくろむ中国は、歴史問題を利用して日米の同盟関係にくさびを打ち込もうと画策してきた。就任以来、習近平・国家主席は「日本はファシスト国家だ」と繰り返し唱えてきたが、その言葉の背景には、「米中は戦時中に日本を倒した同盟国だ」という意味合いがある。米中で組んで、日本を封じ込めようというニュアンスだ。
 
しかし、戦後の長きにわたって同盟関係を築いてきた日米が、歴史問題においてももう一段、溝を埋めることができるならば、中国に付け入られる隙は減っていく。日米が先の戦争を水に流し、日米の首脳が並び立って、広島だけでなく、靖国神社にさえ訪れることができるようになれば、いくら中国が「日本はファシスト国家だ」と言ったところで効果はなくなる。むしろ今度は、「そこまでして日米を批判する中国こそがファシスト国家ではないのか」という疑問が膨らむだけである。
 
もっとも、こうした未来が訪れるのは、まだ当分、先の話ではあるだろう。しかし、オバマ大統領が今年、広島を訪問することがあるとすれば、その第一歩にはなり得る。オバマ大統領は「アジア回帰」を掲げながら、その真剣味に疑問を持たれてきたが、広島訪問こそ、同氏が日米関係に残す最大のレガシー(遺産)になるのかもしれない。

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