2015/09/14    08:00

安倍談話の「宿題」を考える 中国・韓国の「歴史攻勢」から、この国を守るためには?

「安倍談話」について、私は以前、「村山談話」から20年でかなり前進したという言い方もできるが、「日本は侵略国家だった」という大枠が変わっていないという意味では、「村山談話の修正版」という見方もできると書いた。今回の談話は、日露戦争までの歴史では評価できる箇所もあったと認めたが、先の大戦について意義を少しでも認めるような内容は許さないとでもいうような国内外の世論を意識して、抑制的なトーンにならざるを得なくなってしまった。
 
談話を発表した安倍晋三首相自身、今回の談話について、盛り込めなかった内容があったと認識しているようだ。8月16日の読売新聞は、首相が談話発表前に保守派の有力者に談話の内容を事前に伝えていたと、次のように報じている。

問題は、自らに近い保守層からの評価だった。保守派の論客である中西輝政京大名誉教授や長谷川三千子埼玉大名誉教授らは、談話で謝罪色が強まることを懸念していた。特に、中西氏は「21世紀構想懇談会」のメンバーとして、報告書に「侵略」を盛り込むことに最後まで反対したとされる。自らがよりどころとする保守派から談話を批判されたら、首相はたちまち求心力を失う。首相は閣議決定の数日前、ひそかに保守派の論客や議員に談話内容を伝え、理解を求めた。
内容を知った高市総務相は、首相に「『おわび』が入っているじゃないですか」と驚いたように語った。首相はこう切り返した。
「俺がやれるのは、ここまでが精いっぱいだ」
(読売新聞 「戦後70年 安倍談話(上) 『おわび』保守派に予告」 2015/08/16)

言論誌では「安倍談話は100点満点だ」といった意見も掲載されている。しかし、重要なのは、今回の談話を手放しで持ち上げるだけでなく、及ばなかった点について振り返り、今後の国のかじ取りや外交に生かしていくことだろう。いわば、安倍談話が残した「宿題」とは何かという問いかけだ。
 

「あなたたちは間違っていた」と言って、英霊は喜ぶのか

それは一言で言えば、「英霊の慰霊と顕彰」という課題ではないだろうか。先の大戦は、日本の軍部がけしかけた一方的な侵略戦争であり、犠牲者はみな犬死させられたのだという歴史観のままで、亡くなった方々の魂は本当に救われるのだろうかという問題だ。
 
これは、靖国神社をめぐる議論にもつながってくる。安倍首相は2013年の年末に靖国神社を参拝し、その際に「日本は、二度と戦争を起こしてはならない。私は、過去への痛切な反省の上に立って、そう考えています。戦争犠牲者の方々の御霊を前に、今後とも不戦の誓いを堅持していく決意を、新たにしてまいりました」と述べた
 
この「不戦」を誓った安倍首相の発言は、戦後の歴史認識からすればスタンダードなものと言えるだろう。しかし、「過去への痛切な反省」と言うからには、先の大戦が誤りだったと言っているのであり、これでは、靖国に祀られている英霊たちに向かって「あなたたちは間違っていました」と祈るということになってしまう。これでは、筋が通らないのではないだろうか。
 
靖国神社は、お祀りしている御霊について、「ひたすら『国安かれ』の一念のもと、国を守るために尊い生命を捧げられた246万6千余柱の方々の神霊が、身分や勲功、男女の別なく、すべて祖国に殉じられた尊い神霊(靖国の大神)として斉しくお祀りされています」としている。彼らは、あくまでも国を守るために戦ってくださった「英霊」だから祀られているのであって、「反省すべき間違った戦争で命を奪われた」ということでは、矛盾が生じる。
 
漫画家の小林よしのり氏は、著書『保守も知らない靖国神社』の中で、次のように述べている。

 靖国の英霊は神様なのだから、慰霊も単なる慰撫ではなく「奉慰」でなければならない。そして何よりも、「顕彰」の対象でなければならない。
 戦没者は「犠牲者」ではなく、「名誉の戦死」であり、その行為が「善行」であり、「功績」であると認められなければならない。
 そのためには、英霊たちの戦いに「大義」があったと認められなければならない。
 「間違った戦争でした、愚かな戦争でした、悪の戦争でした。しかしその戦争で命を落とした人々は神様であり、その功績を顕彰します」なんて矛盾した話が成立するわけがないのである。
(小林よしのり 『保守も知らない靖国神社』 ベスト新書 28頁)

結局のところ、今回の安倍談話で置き去りにされたのも、こうした問題だったと言える。安倍談話についての課題を一言で言えば、「これでは英霊は浮かばれない」ということだ。先の大戦で、国民が多大な犠牲を払ったことは間違いない。しかし、日本の戦いの後に、アジア・アフリカの国々は独立を達成していったし、純粋に「東亜の解放」を願って戦地に散っていった軍人たちもいた。また、アメリカとの開戦が自衛のためであったことは、戦後にGHQトップのマッカーサー自らが、米議会での証言で認めていることだ。
 
「先の戦争は侵略戦争であり、それ以外の見方はあり得ない」という歴史観では、祖先の思いに泥を塗るだけになってしまう。戦ってくれた祖先に、「ありがとう」の気持ちを向けることが、大切なことなのだ。戦時中の暮らしぶりを事実として伝えるのはいいが、先の戦争について悲惨さや無意味さを語ることしか許されないというのであれば、それは不公平な物の見方ではないだろうか。
 

安倍談話が残した宿題こそ、歴史問題の本質

そして、先の大戦で日本が戦ったことの意義を見出すことが、この日本という国のあり方を守っていくことにも直結する。現在では中国や韓国が、慰安婦問題や南京事件で、国際的な反日キャンペーンを展開している。「歴史問題」と言えば、中韓の発信の間違いを正すこととイコールにとらえられがちだが、歴史問題の“本丸”は別のところにある。
 
それは、皇室の存続についてである。日本人がいつまでも、「先の戦争は侵略だった。間違いだった」と言い続けている限り、中国や韓国が「それなら、なぜ皇室がまだ生き残っているのだ」と言って、いわゆる「戦争責任」を追及する余地を残すことになる。「慰安婦20万人連行説」を書いたアメリカ国内の一部で使われている高校歴史教科書には、「日本軍は慰安婦を天皇からの贈り物として軍隊にささげた」という記述が登場している。また、8月下旬には中国の国営新華社通信が、先の戦争の責任について、天皇陛下の謝罪を求める記事を配信したことが問題となった。こうした「口撃」からこの国を守るためには、日本人自らが、先の戦争で祖先が戦ってくれたことの意義を見つめ直す以外に方法がない。
 
歴史問題が政治問題化するにつれて、1990年代にかけて、日本政府は「反省とおわび」をすることが、波風を立てずに地位を守る方法だという外交路線を取るようになった。しかし、謝罪外交を続けていては、むしろ問題を棚上げすることになる。日本人が先の大戦の意義を少しなりとも認め、戦ってくれた祖先に感謝の思いを向けることこそが、中国や韓国からの外交攻勢や「口撃」から、この国を、そしてこの国の象徴である皇室を、守ることにつながるのだ。
 
今回の安倍談話で、安倍首相が後世にまで謝罪の責任を負わせないという一線を引いた点は評価できる。しかし、「英霊の慰霊と顕彰」という点に、踏み込むことはできなかった。後世にわたってこの国を守っていくためにも、この残された「宿題」を、私たちは解決していく必要がある。

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