2015/12/05    08:00

25才未満の若者の失業率49%の国、スペイン

今年8月のスペインの失業率は22.2%とスペイン統計局が発表した。そして25才未満の若者の失業率は48.8%だという。

スペインはギリシャと並んで失業率の高い国だ。スペインの労働人口は17,454,800人。失業者は500万人を越えている。スペインは元々失業率の高い国で、1990年から現在まで一番低い失業率は2006年の8.26%であった。

スペインの地方によって、失業率に格差がある。北部は失業率は低く、南部はその率は高い。大卒でも職を見つけるのは容易ではない。45才以上になって一度失業すると再就職する機会はほぼゼロに近いと言われている。一時雇いのアルバイトで収入を得ている者が多くいる。学生の場合は将来の職場が見つかり易いように望んでアカデミーなどに通って新たに専門タイトルを取得する為の勉強をするという若者も結構いる。
 
スペイン紙9月30日付 『El Pais』が米国の著名経済学者スティグリッチ氏との会見内容を掲載した。その中で同氏は、スペイン政府が今年のGDPが成長して失業率が25%から23%に下がったことを受けて困難な峠を越えた、と言っていることに釘を差すように「どこでも23%の失業率は悲惨なことだ。そして若者の失業率が50%もあるのももうひとつの悲惨だ」と述べた。更に「どうして政府は僅かの失業率が下がったことを成功というのか理解出来ない。殆んど死んでいた状態だったのが、死んでいないと分かっただけのことで、まだ殆んど死んだ状態が続いているのだ」と答えて、スペイン政府の楽観的な姿勢を批判。そしてその原因を、ドイツが主導して来た緊縮政策にあるとした。「ギリシャやフランスが辿った過程を見ても分かる」とも指摘した。

ドイツのような産業生産力の強い国と比べ、スペインは生産制の低い国だ。それがドイツと同じ金融財政政策を強ったというのが根本的な問題なのである。その背景には次のようなスペインの発展過程があるのだ。

スペインは農業国で、内戦(1936-1939年)もあったりで、産業化も他のヨーロッパ諸国に比べて遅れた。その為に1950-60年代にはスペインから隣国のフランスやスイスなどに職場を求めて出稼ぎ労働者となって移民が多くいた。スペインが独裁政治から民主化の道を1978年から歩み始めると、近代化に向けてインフラ整備などから雇用も生まれた。

しかし、1960年代からスペインのGDPの柱になっていたのは唯一観光産業である。観光産業は常にGDPのほぼ10%を担って来た。その後、スペインの発展を一気に加速化させたのがユーロ加盟と不動産・住宅建設ブームである。

もともとスペインの基幹産業は観光だけであったが、不動産ブームに便乗した建設業がそれに加わって、スペインの経済発展の両翼となったのである。観光産業と建設業とで、GDPのおよそ22%にまで貢献するまでに発展した。そして、この二つの産業に雇用が集中した。それまで常に20%近くの高い失業率を記録するスペインで、2001-2007年は失業率が8-10%の範囲で収まっていた。これは観光産業と建設業がピークを迎えた時期なのである。

しかも、ユーロ通貨の導入で、EU圏からの観光者(約6,000万人/2014年)も増え、彼等の中には温暖で太陽とビーチに恵まれた地中海地方で生活することを希望する年金生活者も増えた。そこで住宅需要も増えた。ピーク時にはドイツ、英国、フランスで年間に建設される住宅戸数と同等の戸数がスペインで建設されていた年もあったという。

特に住宅建設ブームで労働者が不足し、言語において問題のない南米からの移民も増えた。その中でもエクアドルからの移民が一番多くスペインで居住を始めた。彼等を対象にしたラジオ放送局も誕生くらいだ。
 
しかし、住宅建設ブームが下火になり始めた2008年頃から、また失業者が増え始めた。住宅建設業で雇用されていた労働者を吸収出来る産業が他に無かったのである。そして、建設会社も倒産が始まった。銀行もバブル景気で貸し付けたローンが焦げ付きとなって、経営難になり、従業員の大幅な削減も断行された。建設ブームに関連した産業も需要の減少で従業員の解雇が始まった。

しかも、ユーロに加盟している故に、スペイン独自の公共投資から雇用を生む為の金融政策も実施することが出来ないという二重苦に置かれた。その為に、毎年失業者が増加の一途を辿った。マイホームの夢を実現させる為に銀行ローンで購入した家が、失業した為に収入がなくなり、ローン返済が出来ず、立退きを余儀なくさせらたケースは今も毎日起きている。その多くが悲惨なケースだ。一家に如何なる収入もない家庭が75万世帯あると言われている。彼等に支援を差し伸べるNGOの活動も活発だ。そして貧困家庭の子どもの為の無料給食を実行しているNGOもある。
 
ユーロ圏に加盟している故に、スペイン独自の金融政策が取れない上に、スペインの産業構造では大規模な投資が出来る産業もなく、また生産性を高める為の体質構造にもなっていない。唯一、生産性を高める為に実行出来るのは労働者の給与を削減して生産コストを抑えることだけである。ユーロ導入以前は、旧通貨ペセタの切下げなどを行なって生産性の劣勢を補填して競争力をつけて来たスペイン経済であった。

しかし、ユーロ導入によって、それまで比較的に低い生活物価であったのが、他のユーロ加盟国との生活水準の均衡化の為に、政策的に1ユーロ=166.386ペセタの対価レートに決められた。その為に、ユーロ導入と同時に、スペインの物価は上昇した。それによってスペインの企業競争力を更に弱めた。

例えば、ユーロ導入前まで、コーヒー一杯が50ペセタであった場合に、ユーロ導入で1ユーロ=166.386ペセタが対価となるのでコーヒーの価格は30セントになるのが正しい価格設定である。しかし、実際にはどこも便乗値上げに走った。そして一杯のコーヒーが50セントにもなったりした。即ち20セントの値上がりである。この便乗値上げが商いで横行した。上昇しないのは給与だけという具合いであった。それが更にインフレを煽り、消費者の購買力を減少させた。そしてスペインは今もドイツ主導のEUが課す財政・金融政策に従わねばならない故に経済の回復は見込めない。

スペインの統計予測センター(Ceprede)によると、今年の失業率は21.4%になるという。2017年は16.5%、2021年に20%以下の16.5%と予測されている。この厳しい現状から逃れる為に、外国へ職場を求めて移民するスペイン人が毎年増加している。昨年の移民者は125,000人。2013年は124,995人とスペイン統計局によって統計されている。移民先はドイツ、フランス、英国そしてアメリカである。
 
スペインもギリシャやイタリアと同様に、ドイツ主導で動いている緊縮策の弊害を脆に受けている。これらの国では、緊縮策ではなく、今必要なのは景気刺激策である。経済力の弱い国を抱えているという理由からユーロは他の外貨と比較して安価な価値設定になっている。その為に、輸出競争力のあるドイツはその安いユーロのお蔭で更に輸出競争力がついている。その恩恵をドイツは今も受けて輸出を伸ばしている。

その上、ドイツはインフレの上昇を押えることに熱心で、ユーロ圏でも増加している失業率を公共投資で減少させることへの努力をユーロ圏で控えるように仕向けている。その為に量的緩和を積極的に進めたい欧州中央銀行と対立する時も屡々ある。そして今も緊縮策の実施をユーロ加盟国に強いているのだ。スティグリッチ氏は「緊縮策は失敗を導く政治政策だ」と上述会見の中で指摘している。

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