2016/02/05    15:00

慰安婦問題を教育の視点で考える――「民間の外交官」をいかに生み出すか

あらゆる社会問題の議論は、最後は教育の問題に行き着く。だから、韓国との外交の懸案になっている慰安婦の問題も、教育の視点で考えたい。自虐史観をいかに克服するかはすでに議論が進んでいるが、もう一つ問題なのは、海外の舞台で論戦できる人材をいかに育てるかという点である。
 
政府は15日からの国連の女子差別撤廃委員会において、慰安婦が強制連行されたとされる説を否定する答弁を初めて行う。政府が関係省庁の文書や、アメリカの国立図書館を調べ、聴き取り調査を行っても、強制連行の裏付けは見つからなかったというものだ。
 
「慰安婦20万人強制連行説」がアメリカなどでも出回る中で、政府がいよいよ重い腰をあげたことそのものは、評価できる。しかし、同委員会で政府が強制連行説を否定するのが初めてというのは、どういうことだろう。
 
この点については、ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、1日の産経新聞紙上で厳しく追及している。その矛先は外務省だ。政府による回答は昨年11月にでき上がっていたものの、韓国に10億円を支払うと決めた年末の日韓合意の後で、外務省は答弁書の内容が刺激的すぎると渋面したという。外務省は日韓合意の説明のペーパー一枚で済まそうとしたが、安倍晋三首相の側近が押し戻し、「強制連行否定」の答弁が行われることになったという。
 
こうした一連のやり取りを踏まえて、櫻井氏は外務省のあり方をこう嘆息する。

外務省は自らの使命は外交交渉にあり、歴史情報の発信や祖国の名誉擁護は任ではないと考えているのか。であれば、歴史情報の発信は他の組織に任せるしかないではないか。歴史の事実を武器に、知的に果敢に闘う新体制づくりが首相の責任である。

外交といえば外務省が行うものとされているが、“プロ”がその仕事を全うできないならば、民間人が地道に活動し、問題を訴えていくしかない。慰安婦問題に取り組む「なでしこアクション」や、フランスの漫画祭に乗り込んでいった「論破プロジェクト」といった先例があるが、こうした活動のすそ野をさらに広げていく必要があるということだ(外務省の不作為を補うためにも)。
 
さて、そのためにどうしたらいいのか。これは「民間の外交官」を増やしていくということだから、海外でもディベートができるような人材を育てていくということである。そのためには、語学力、特に国際言語である英語力は欠かせない。もちろん、流ちょうな英語を話せるに越したことはないが、実はそれ以上に、文法やリーディングによって、論理的な思考を身に着けていくことが重要なのではないかと思う。
 
なぜなら、英語のうまさばかりが注目されがちだが、ディベート力の半面は「勝てる論理をいかに組み立てるか」にあるからだ。そのためには、相手の考え方を緻密に読み解き、それに反論しつつ、多くの聴衆の支持を集められるような議論を組み立てていく必要がある。小学校でも英語が必修になるなど、英語力といえば「話す力」と考えられがちだが、論理を組み立てることの重要性も無視することはできないだろう。
 
そしてまた、海外での報道も知っておくことが重要になる。特に、「どこで何があった」という事実だけではなく、日本が関係する議論が海外では“どのようなロジックで”行われているのか、議論している人々の頭の働きを知ることがカギだ。
 
慰安婦問題については、当初は強制連行の問題から始まったが、議論のすり替えが行われるうちに、この問題は、いつの間にか女性の人権問題という反論しがたい広い議論に発展してしまった。こうした点を押さえずに、「慰安婦は売春婦だった」という話を一本やりで押し広げていけば、逆に反発を招くだけになることもある。
 
そのため、事実関係に加えて、どのような文脈の中で問題が議論されているのかを知っておくことが、議論を組み立てていく上で大事だ。「どこで何があった」というストレートニュースだけでなく、海外の人たちが、何をどう捉え、考えているのかを伝え、視聴者や読者が知ることができるような報道が求められているのではないだろうか。それは、「日本がいかに世界で愛されているか」ばかりに注目するのではなく、現地のありのままの考え方から私たちが学ぶという視点である。
 
外務省があてにならないのであれば、外務省の役割の足りない部分を担える人々を多く生み出していかなくてはならない。そのためには、英語力に加えて、海外の考え方を知ることのできるような報道が増えていく必要がある。
 
冒頭で、「あらゆる社会問題の議論は、最後は教育の問題に行き着く」と述べたが、教育だけではなかった。これは、マスコミの課題でもある。

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