2016/06/29    14:36

イギリスのEU離脱より、横浜スタジアムの空模様の方が、僕には気がかりだった。

イギリスが国民投票でEU離脱を決めた6月24日、僕にとっては、それよりもはるかに重要な出来事があった。
 
それは、わが横浜ベイスターズが、それまで防御率0点台だった巨人のエース菅野に、自己最悪の9失点KOをお見舞いし、期待の新リードオフマン桑原が自身初の満塁弾を放ち、チームが6連敗を脱して、交流戦明けを白星スタートで飾ったことである。特にその日の桑原は、最初の3打席ですべて初球を叩き、たった3球で6打点を稼ぎ出してしまった。スタンドから観戦していて、これほど気持ちのいい試合は珍しい。
 
その日、世間は、日本時間の午後に判明したイギリスの投票の結果に一喜一憂していたが、僕が朝から心配していたのは、横浜スタジアムの空模様のほうだった。予報によれば、雨はプレイボールのかかる18時代には止むらしいが、果たしてきちんと試合は行われるだろうか。しかも、iPhoneのどの天気アプリを見るかによって、微妙に予報が異なるとなれば、気が気ではなかった。
 
国民投票の行方をハラハラしながら見守った“意識の高い”人々からすれば、こうしたことを言う僕は、まるで社会の問題に興味のない“意識の低い”人のようにも見えるだろう(そして僕はあえて、その“意識の低い人”でいたいとも思う)。しかし現代の政治を考える上で重要なのは、実際の民主主義の大部分をつくっているのは、この日の、「世界の動きよりも、プロ野球が大事な僕」のような人々だということだ。
 
イギリスの国民投票にしても、おそらく普段は国政よりもサッカーの方に興味のある人たちが、多くの票を投じたに違いない。そして、たった120万票の票差を動かしたのは、彼らだったかもしれない。
 
「民主主義」と漢字で書けば、まるで知性豊かな市民たちが、真面目に議論して社会の行く先を決めるような、高尚な雰囲気がある。そして、「あなたの一票が未来を創る」などと呼びかける新聞などのメディアも、そうしたイメージを前提に報じている。だが、実際に有権者がどのように投票する先を決めるかは、とても微妙な感情が左右するものだ。
 
巨人相手の大勝の余韻に浸ってスタジアムを後にする道すがら、最寄りの駅前の交差点では、「元日テレ・キャスター」を名乗る参院選の候補者が、野球ファンに握手を求めていた。テレビで観たままの彼のにこやかな笑顔は、確かに素敵だったが、試合後の僕は心の中で、「巨人戦しかやらない日テレの元キャスターに誰が入れるか」と思った。
 
冷静に考えれば、このようなことを思うのは“理性的な有権者”のやるべきことではない。その日のプロ野球の対戦カードや結果は、表向き、選挙とは何の関係もない。いや、しかし、たったこれだけのわずかな感情で、票の行方は変わったりもする。それが民主主義の実情である。
 
そして、そうした面も理解した上で、私たちの社会は民主主義のシステムを採っているはずである。時に有権者は選択を誤ることもあるが、長い目で見れば世間は間違えないし、あまりにも自分たちの暮らしを危険にさらすような人物を自らリーダーに据え続けることはないだろうという諒解がある。民主主義であるほうが、誰か一人の手に国家を委ねるよりも、人々の自由も暮らしも守れるはずである。
 
こうした点に基づいて考えれば、イギリスのEU離脱について、「反エスタブリッシュメント感情の高まり」だとか、「反エリート主義の台頭」といった言葉を連発し、訳知り顔で解説している大手メディアは、実のところ、民主主義についてよく分かっていないのではないか、あるいは民主主義を見下しているのではないかとすら思えてくる。なぜなら、こうした言葉の背景に、「愚かな大衆が誤った選択をした」というエリートの傲慢が透けて見えるからだ。
 
メディアを動かしている人々やそれを支える学者らは、まるで自分たちが民衆の上に立っているかのように錯覚しているのかもしれない。しかし、本来のメディアの役割が、国民の視点に立ってその知る権利を担保することにあるのだとすれば、彼らの姿勢は、自分たちの存在意義にすら反することにもなる。
 
イギリスのEU離脱について、「民主主義の偉大な勝利」などと書いた大手の新聞は、日本には存在しない。いずれの社説も、EU離脱を残念がり、「欧州統合をこれからも進めなければいけない」などというお説教に満ちていた。「民主主義の味方」を自ら任じておきながら、「大衆の愚かな決定」について批評ばかりするような新聞は、これからも生き残れるのだろうか。他人事ながら、思わず心配になってしまう。
 
もちろん、民主主義は、時に間違った結論に到達することもある。しかし、国民の意思を国民の意思としてとらえる努力もせずに、頭ごなしに批判することが生産的だとは思えない。イギリスのEU離脱は、条約の再交渉や後任の首相の選出などの難しい問題を生んでいるが、ひとつ良いことがあったとすれば、それは民主主義を蔑視するエリート層の本心が、明るみに出たことなのかもしれない。
 
だが、何と言っても、それよりも気がかりなのは、わがベイスターズの方である。7月1日からはホームの横浜で、10連勝で波に乗る首位・広島とのカードを戦う。ここで粘りを見せて、2位以下の混戦に少しでも広島を引きずり込みたいところだ。

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