2014/09/06    16:15

経済制裁は侵略を止めるか、戦争を招くか

ウクライナ内戦の停戦が5日に成立した。今回の停戦をめぐっては、制裁などで経済的に傷ついたロシアがいったん事態の鎮静化を目指し、譲歩した面がある。これを契機に、ウクライナ危機の出口を本格的に探るべきではないだろうか。

一方で、初めにロシアに対する経済制裁を言い出したオバマ米大統領は、強硬姿勢を崩していない。今回の停戦についても「期待はしているが、懐疑的だ」と述べており、ロシアに対する追加の経済制裁を準備すると明言している。

中間選挙を控え、オバマ大統領は国内で外交政策の「弱腰」を批判されており、引くに引けない状況にあることは確かだ。しかし、アメリカとロシアが非難合戦と制裁合戦を続けていては、問題の出口はいつまでも見えない。
 

経済制裁を受けて戦争に突き進んだ戦前の日本

オバマ大統領は、経済制裁が一種の戦争行為にあたると十分に理解しているだろうか。

例えば、戦前の日本は勝ち目の乏しいアメリカとの戦争に突き進んだが、その大きな理由は、石油の禁輸などの経済制裁によって追い詰められたからだった。今回のロシアに対する制裁でも、同様の事態が起こりかねないと指摘する専門家もいる。

米国益研究所のポール・ソーンダース所長は先月、米ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で、次のように述べている。

大日本帝国のように、モスクワが、制裁でロシア経済の心臓部をえぐられるのをただ待つのは無責任だという結論に至って、西側の意志をくじくべくさらなる軍事行動を起こすことも考えられる。(中略)危険な状況を避けるために、ロシアの全面的な侵略を防ぐと同時に、プーチン氏を追い詰めるのを防ぐような政策が必要になる。
(The New York Times “When Sanctions Lead to War” 2014/8/21)

ロシアを追い込み過ぎた場合は、東欧でのさらなる軍事行動に加えて、同国の中国への接近を招く恐れもある。南シナ海での中国の威圧的な行動は、周辺国への重大な脅威だ。さらには、西太平洋から米軍を追い出して、東アジアの覇権を獲得することを国家目標に掲げている。
 

ここで手を打って、中ロ接近を防ごう

こうした中で、中国の高圧的な行動をロシアが後押しするようになれば、東アジアの安定を維持するのはさらに難しくなるだろう。国際政治学のリアリスト学派の大家であるシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授は、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿の中で、ウクライナをNATOに加盟しない中立地帯とするよう提案し、次のように述べている。

アメリカはいつか、中国を封じ込めるためにロシアの助けが必要になる。しかし現在のアメリカの政策では、ロシアと中国を接近させるだけだ。アメリカとヨーロッパ同盟国は、ウクライナ問題で選択を迫られている。ロシアの敵対心を悪化させ、ウクライナも荒廃させる現在の政策を続けることもできる。その場合は、全員が敗者になる。あるいは、繁栄しているが中立なウクライナを創る取り組みに切り替え、ロシアに脅威を与えずに西側とロシアとの関係修復につなげることもできる。この場合は、全員が勝者だ。
(Foreign Affairs “Why the Ukraine Crisis Is the West’s Fault” 2014/08/20)

ウクライナ内戦は、首都キエフの中央政府をアメリカやNATO(北大西洋条約機構)が支援し、東部の武装組織をロシアが支援するという、冷戦時代さながらの「代理戦争」となっている。しかし、アメリカがこのまま、経済制裁などの強硬なアプローチでロシアを追い詰めすぎれば、冷戦は「熱戦」に変わりかねない。

中国の覇権主義という、より長期的に重大な問題にいかに対処するかも見据えて、冷静に戦略的な判断を下すべき時である。

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