2017/01/11    08:30

​「民主主義ってこれだ!」と叫ぶ若者が、アメリカでも大活躍

アメリカでは20日にドナルド・トランプ政権が発足する。就任式の参加者は100万人規模になる見通しだが、就任に反対するデモ隊も数十万人にのぼりそうで、厳戒態勢での船出となる。

11月8日の投票日からここまでの道のりは、選挙結果をひっくり返して当選をなきものにしようとする市民団体や、一部メディアとの戦いだった。特に、12月19日に選挙人団が投票を行い、正式にトランプ氏の勝利が確定するまで、気が抜けない状況が続いた。
 

■トランプ氏当選をひっくり返そうとした活動家たち


「12月19日にトランプ氏の勝利が確定した」と言えば、疑問に思う人もいるかもしれない。選挙は11月に行われたのではなかったかと。しかし、最終的に選挙戦の勝者が確定したのは、確かに12月だ。

アメリカの複雑な政治の仕組みにその理由がある。投票は二段階で行われ、しかも制度の上では、国民が直接、大統領を選ぶわけではないからだ。11月8日に国民が州ごとに投票で選んだのは、次期大統領そのものではなく、国民の代わりに大統領を選ぶ「選挙人団」である。その選挙人団が票を投じたのが12月19日。その結果、トランプ次期大統領の当選が正式に決まった。

ややこしいシステムだが、テレビや交通網がまだ発達していなかった時代のなごりだとも言われる。国民が直接、候補者のことを詳しく知ることが難しかったため、良識ある人たちを選んで、代わりに大統領を決めてもらおうとしたことから、こうした制度が生まれた。

つまり12月までの1カ月の間、メディアが「次期大統領(president-elect)」といくら呼ぼうとも、トランプ氏の当選は、実はまだ正式なものではなく、選挙結果が覆される可能性さえあったのだ。そして、まさにこの間、一部の活動家やメディアは、トランプ氏の当選をなきものにしようと、様々な運動を繰り広げた。いくつか例をあげてみよう。
 

■路上で「民主主義ってこれだ!」と叫ぶ暴徒


一般投票の直後から、選挙結果に不満を持つ人々は街に繰り出し、数日にわたってデモ活動を繰り広げた。一部は暴徒化して、商店のガラスを割ったり、路上の車を破壊するなどした。デモ隊は「Not My President(お前は、私たちの大統領じゃない)」と叫び、トランプ氏を大統領として認めないという露骨な姿勢を示した。

目立った不正や投票妨害があったのであればまだしも、選挙によって代表を選ぶというシステムは民主主義の基本であり、デモ隊の行為は民主主義の否定だと言える。たとえ個人的な不満があったとしても、国民全体で決めた選挙の結果は、受け入れなければならない。しかし、デモ隊は堂々と、選挙結果に異議を唱え、街を練り歩いた。

もっとも、敗れた民主党のヒラリー・クリントン氏は、選挙の大勢が判明した早い段階で、トランプ氏に電話を入れて敗北を認め、支持者に対しても、トランプ氏を大統領として認めるように促した。実際に、世論調査では、国民の8割が大統領選の結果を「受け入れる」と答えており、極端なデモに走った人々はごく少数派だったと言える。

しかし、極端な意見であるほど取り上げたくなるのが、マスコミの習性である。選挙期間中にトランプ氏が「自分が勝ったら、選挙結果を受け入れる」と述べたことに対して、「民主主義の根幹にかかわる」と大バッシングを加えたマスコミが、今度は「Not My President」と叫ぶ暴徒を好意的に扱った。三大ネットワークの一つであるABCテレビは、ニューヨークのトランプ・タワー前からのレポートで、「彼らは『これこそが民主主義だ』と叫んでいます。投票箱からニューヨークの街角まで、彼らは自分たちの声を届かせようとしています」伝えた

日本でも、路上に繰り出して「民主主義って何だ?これだ!」と叫ぶ若者たちを、テレビは礼賛したが、どこの国に行っても、たいして事情は変わらないようだ。


■選挙人に「死ねばいい」


街角でのデモ活動が落ち着くと、今度は選挙人に圧力をかけて結果をひっくり返そうという組織戦が行われた。共和党の選挙人のもとには、トランプ氏に投票しないように呼び掛ける手紙やメールが大量に届き、メールは日に数千通にも達したという。中には、殺害予告を受け取る選挙人もいたほどだ。

ミシガン州のある選挙人は地元メディアに対して、「『お前は憎たらしい偏屈な奴だ、死ねばいいのに』と言ってくる人がいます。私の口に銃を突き付けて、脳みそを吹き飛ばそうと話している人もいます。こうしたメールを、もう数十件も受け取りました」と語っている。

殺害予告は極端な例だが、実際に共和党の選挙人の翻意を促すキャンペーンは確かに組織的に行われ、民主党のナンシー・ペロシ元下院議長の娘が関わっていたと報じられている。一部の州では緑の党が票の再集計を求める運動を起こし、クリントン氏の陣営も便乗。メディアは連日、その動きを詳しく報じ、トランプ氏の当選が公正ではなかったと印象づけようとした。
 

■“ヒラリーの敵”を一転して専門家扱い


こうした動きの中で垣間見えたのは、メディアのダブルスタンダードである。「お前は大統領じゃない」と叫ぶデモ隊を好意的に取り上げたABCの例は先に触れたが、他にもメディアの偏向の例はいくつもある。

たとえば、トランプ氏の利益相反問題。トランプ氏が大統領としての仕事を通じて、自身の事業に便宜を図る可能性があるという懸念だ。トランプ氏は20カ国以上で事業を展開しているため、ビジネス上の計算によって、外交政策をゆがめてしまうのではないかと危惧されている。

超大国アメリカの動きは他の国の外交政策にも絶大な影響力を持つため、この問題自体は、慎重な検討が必要だと言える。しかし、マスコミの生態を考えるうえで面白いのは、ヒラリー・クリントン氏が抱えていた財団の利益相反問題との比較である。

クリントン一家の財団は、各国で慈善事業などを展開する一方で、上院議員や国務長官としてのヒラリー氏に口利きを依頼する窓口になっていたのではないかという疑惑がささやかれてきた。この問題は、ピーター・シュバイツァーというジャーナリストが『クリントン・キャッシュ』という本に詳しくまとめて出版した。海外政府や投資家らが、財団への献金や、ビル・クリントン元大統領に講演料を支払うことでヒラリー氏を裏から動かし、彼女が関わる外交上の決定に関与していたのではないかという疑惑だ。

同書が発刊された当時、シュバイツァー氏は、政治的な意図からクリントン氏をおとしめようとしているのではないかと批判されたが、このテーマの標的がトランプ氏に移ると風向きが変わる。1年前に同氏をスタジオに呼んで厳しい質問を浴びせたABCは、今度は利益相反問題のエキスパートとしてシュバイツァー氏を扱ったまるで、マスコミにとっての興味は、国益にかかわる問題そのものよりも、「敵は誰か」のようだ。
 

■マスコミとの攻防戦は、いよいよこれから


トランプ氏は、暴言を批判されることをおそれずにマスコミを敵に回し、正直に本音を語ることで有権者の支持を集めた。マスコミのトランプ叩きがまったく効果を上げられず、むしろマスコミが叩けば叩くほど、トランプ氏の支持者は結束を高めた。マスコミの従来の報道に疑問を持つ人々が、それだけ多かったことの証明でもある。投票日以降、選挙結果を覆そうとする反民主的な人々を好意的に取り上げたマスコミの動きを見れば、トランプ氏の支持者の不満の理由もよく分かる。

年明けに行われたラスムセン・レポートの世論調査では、マスコミがトランプ氏に不利な方向で偏向報道を行っていると答えた人は48%に達し、反対に、トランプ氏に好意的な方向に偏向していると感じる人はわずかに12%だった。

トランプ政権が正式に発足しても、マスコミとの攻防は終わらない。いやむしろ、20日の就任宣誓は、本格的な戦いの幕開けを告げる号砲かもしれない。

TOP NEWS

解明されてきた真相

2017/08/30  12:24

どうしてバルセロナでテロが発生したのか。

今そこに危機があるのに

2017/08/25  08:00

地球外からの攻撃に人類は一致団結できるか

Appleより優秀な人材が集結?

2017/05/16  14:05

電気自動車の先端を行くテスラモーターズ

早急に業務時間改善と意識改革を

2017/05/31  14:05

教員は子供の成長に寄与することが本来の仕事

ACCESS RANKING

1

スペイン発 ファッションの国際競争

ZARAのライバル、MANGOをご存知ですか?

2

観光国としての実績は確か

世界の観光客を集める国、スペイン

4

アメリカの自動車王に学ぶ「経営に貫かれる奉仕

ヘンリー・フォードの経営思想

6

エジプトルーツとギリシャルーツ

アクレピオスの杖とケリュケイオンの杖との違いとは

7

指揮官である首相の参拝は中曽根首相以降、朝日

靖国神社に参拝する防大生

1

スペイン発 ファッションの国際競争

ZARAのライバル、MANGOをご存知ですか?

2

アメリカの自動車王に学ぶ「経営に貫かれる奉仕

ヘンリー・フォードの経営思想

4

指揮官である首相の参拝は中曽根首相以降、朝日

靖国神社に参拝する防大生

5

観光国としての実績は確か

世界の観光客を集める国、スペイン