2016/10/29    13:12

アルゼンチンとイギリス、フォークランド沖合の共同開発で合意

フォークランド諸島に生息するキングペンギン。


日本が北方四島の領土回復に参考になる出来事がつい最近起きた。英国とアルゼンチンの間で領有権を争っているフォークランド諸島(アルゼンチン名:マルビナス諸島)で、両国が共同して原油の開発にあたることが合意されたのである。

アルゼンチンの沖合480キロに位置するフォークランド諸島は、英国が1833年にアルゼンチから島を奪回して実効支配している。その根拠は16世紀に英国人がこの島を発見したということだ。一方のアルゼンチンの主張は1811年にアルゼンチンがスペインから独立して、この島の領有権もスペインから移譲されたことを根拠にしている。スペインがこの島を征服したのは18世紀で、その時に島に住んでいた英国人にもスペインの領有権を承認させていた。
 
そして、1976年からアルゼンチンが軍事政権になると、彼らは武力で島を奪回をしようとした。それが1982年のフォークランド戦争である。この戦争で双方から900人以上の死者が出た。その後のアルゼンチンは英国との和解の道を模索していた。しかし、2003年にキルチネール大統領が誕生すると、それまでの和解の道ではなく、領土回復に強硬な姿勢を見せて英国と対立するようになった。それは、彼の夫人クリスチーナ・フェルナンデス大統領になっても同じ姿勢を踏襲した。この二人の政権による12年間は両国に対立を生むだけであった。

しかし、昨年12月にマクリ大統領が誕生すると、彼はそれまでの12年間を失われた期間であったと見做し、この問題解決に180度転換する意向を示した。すなわち、領土回復の為の主張を続けるとしながらも、実利主義を優先する構えに転じたのである。フォークランドの沖合の海底油田の開発にジョイントベンチャーで英国とアルゼンチンで、共同で開発することを提案したのだ。前政権の12年間は海底油田が発見された場所はアルゼンチンの領域であるとして、開発している企業を提訴して、資産の差し押さえの判決が下るようにしたほどであった。

英国とアルゼンチンの歩み寄りの具体的なきっかけとなったのが、テリーザ・メイ新首相が8月2日にマクリ大統領に送った書簡であった。その中で、彼女は両国で懸案となっている問題の解決に取り組みたいと伝えた。英国にとっても、フォークランド諸島の問題に新たな取り組みが必要とされていたのである。何故なら、英国はEU離脱を決めてたことで、今後はEU加盟国の問題として捉えられなくなり、英国単独でこの問題に取り組まねばならなくなるからである。

両国の新たな外交交渉が見られたのが、9月13日にブエノスアイレスで、英国のアラン・ダンカン副外相とアルゼンチンのスサナ・マルコッラ外相との間で、フォークランド諸島の油田開発を共同で進めることで、合意が結ばれたのである。この合意の中にはもうひとつ案件が含まれていた。フォークランド諸島と南米大陸の往復に飛ぶフライトを増便させることである。そして、それもアルゼンチンの領空を通ってのフライトである(「Hispan TV」)。
 
現在あるフライトはチリの首都サンティアゴからLATAMチリ航空が土曜にチリの最南端のプンタアレナス市を経由してフォークランドに往復便を飛ばしているだけなのである。何故、そこまで遠回りせなばならないのか。アルゼンチン前政府が自国の領空を通過することを禁止していたからである。そして、ひと月に一度だけ、同じルートにアルゼンチンのリオガジェゴ市でのトランジットを認めているのである。

マクリ政府の柔軟な姿勢に対し、前政権で外相を2005-2010年まで務めたホルヘ・タイアナ氏は、新しく加えられる便はアルゼンチンの航空会社のフライトになるように交渉が進められていた。しかし、今回の合意では、自国の航空会社のフライトにならないばかりか、第3国の航空会社によるフライトを容認するようになったと指摘して、アルゼンチンの国家の主権は完全に放棄された、と批判した(「Hispan TV」)。

フォークランド領土回復についての交渉はこれから始めねばならないが、前述の合意でも見せたように、マクリ政権は相手国を尊重する余り、自国の主権を軽率に見る傾向があると野党側は受け取っている。そして、マクリ大統領は交渉でマルビナスがアルゼンチンの主権下にあることを充分に尊重しないのではないかと野党そして一部与党の議員も懸念もつようになっているという。その疑いの火種になったのが、9月のニューヨークでの国連総会の席でマクリ大統領とメイ首相が交わした僅かの時間の話の内容であった。

事の起こりは、マクリ大統領が他の仲間と食事をしていた時に、メイ首相がつかつかと近よって来て「将来お互いに交渉につけることを期待します」と彼に言ったことだった。それに応えて、マクリ大統領は「はい、アルゼンチンは全てのテーマを含めた交渉に応じる用意があります」と答えたという。その後、マクリ大統領は「会話は僅か2分だったが、良い意向もっているように見えた」「双方の交渉の日程の調整をせねばならない。重要なことはまず(交渉を)始めることだ。この12年間は失われた年月だった。熟成した、そして認識を持った関係の中で交渉を始めることだ」と側近に語ったという(「Clarin」)。

それに対して、タイアナ元外相が問題だと指摘しているのは、メイ首相との会話の中で、マクリ大統領が「主権については話し合うことだ」と述べたというのである。それに対して政府は、メイ首相とマクリ大統領の会話内容は非公式なものであったと発表した(「Clarin」)。

タイアナ元外相が問題だと批判しているのは、マルビナスの主権を話し合いに引き出すことなど全く素人だ、というのである。マルビナスはアルゼンチン固有の領土であって、話し合いの席でその主権を引き出すものではないという考えだ。そして、タイアナ元外相は、これはマクリ大統領の国際舞台での滑稽さを披露した出来事だと批判した。と同時に、これもまだ外交に不慣れが影響しているからであるからだ、と寛大さも示した。
 

一方の英国は、交渉に応じるのはあくまで原油の開発やフライトのことであって、フォークランドの主権そのものは英国にあるとして、そのための交渉については英国は応じる意向はないということである。この姿勢を裏付けるかのように、アルゼンチンの「NACION」紙が、ロンドンからは(フォークランド)諸島についての交渉を開始すると言及した覚えはないと言っている、と報じたことも「Clarin」紙は記事の中に加えた。


しかし、少なくとも原油の共同開発についてはマクリ外交の対英国との外交で具体的な成果となっている。
 
安倍首相は北方四島の共同開発という事と引き換えで少なくとも先ず先に二島(歯舞と色丹)の返還を望んでいるようであるが、ロシアが四島を返還することはないと判断するのが賢明である。四島を奪回するには武力しかない。それは現状では無理である。よって、今後も四島の日本への返還はないと考える方が妥当である。

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