2016/10/22    13:00

メルケル首相の去就

現在のEUはドイツとフランスの主導で機能している。米国オバマ大統領とロシアのプーチン大統領との間でバランスを取りながらEUの代表として渉りあえるのはメルケル首相だけである。その彼女の去就が話題になりつつある。

その発端は、ドイツで9月に行われたメクレンブルク・フォアポンメルン州議会選挙とベルリン市議会でメルケル首相が率いるキリスト教民主同盟(CDU)が大敗したことだ。メルケル首相の求心力が落ちているのだ。この二つの選挙で躍進したのは2013年に創設された極右派政党ドイツのため選択し(AfD)である。メルケル首相が積極的に進めた移民の受け入れから発生した社会問題に焦点が集まれば集まるほど、それに反対するAfDの票が伸びるというわけだ。

このような状況から、焦点になり始めているのが来年9月に予定されている総選挙にメルケル首相が自ら続投を決めるか否かということである。最近のドイツ紙ビルトの世論調査によると、二人にひとりがメルケル首相の政権継続を望んでいないということが判明している(「El Espanol」)。

ドイツ公共放送ARDが発表した最近の世論調査では、2015年8月の支持率は67%に到達していたが、現在は45%まで落ちていると報じたという(「El Confidencial」)。
 
2014年12月のCDUの党大会では97%という支持率を集めて党首として再選された彼女であった。2000年に党首に初めて就任し、2005年から首相のポストに就いている。しかし、移民問題から、彼女を取り巻く周囲が急変しているのだ。彼女の寛大さによって100万人の移民を受け入れたツケが、今その反動となって国民の多くが彼女に背を向けるようになっている。

彼女が難民を受け入れた背景には戦後のドイツ復興にトルコ移民が重要な労働力となってドイツの復興に貢献したという事実と、ドイツの企業連合が安い労働力を求めて移民の受け入れに賛成していたという理由があったことを知っておく必要がある。連立政権の社会民主党(SPD)も一定の枠内での移民の受け入れには反対していなかった。

しかし、実際に大量の移民が流入し始めると、オーストリアと国境を接するバイエル地方では昨年は一日に4000~5000人の移民が流入するという現象が生じて、その対応に四苦八苦するという事態も起きた。この地方は長年CDUと連携して中央政権を担って来たキリスト教社会同盟(CSU)の地盤で、同党のゼーホーファー党首は溢れる移民の流入を目のあたりにして、メルケル首相が移民を寛大に受け入れる姿勢に強く反対していた。そして、連立政権を解消すると迫った時もしばしばあった。

移民を受け入れて来た病院では移民患者が急増し、ヨーロッパでは既に撲滅している病気をもった患者も現れ、また診断に不服な患者が医師や看護婦に暴力をふるうという事態も生じたという。戦争への恐怖からトラウマになっている患者もいたり、イスラムの女性は男性医師の診断を受けつけないという場面もあるという。

これらの医療負担は最終的にはドイツ国民が収める税金で負担することになる。また移民家族に支給される生活補助金は一部失業者が受ける手当を上回る金額である場合もあるということも発生しているという。更に,移民の急増で犯罪も増えた。移民が絶え間なく流入している地方の市民の間では、政府の移民受け入れ政策に不満が募っていった。そして、移民に紛れて入国しているテロリストの問題も新しく生まれて、ドイツもテロ攻撃の対象になっている。

12月にCDUの党大会が予定されている。メルケル首相は党首に再選されることを望んでいるという。しかし、彼女が次期首相として立候補するか否かについては、来年の春まで待たねばなならないであろうと、米国のシンクタンク、ゲートストーン研究所のソーレン・カーン氏が指摘している。何故なら、CSUがこれまで通り連立政権を組む用意があるか否かの決定をゼーホーファー党首が来春まで下さないであろうと思われるからであるとしている(「GATE STONE INSTITUTE」)。

9月21日付の電子紙「EL CONFIDENCIAL」が、仮に今総選挙を実施すれば各政党の得票数はCDU-CSU33%、 SPD23%、AfD13%、グリーン党11%、左派8~9%、自由党6%という予測をしている。CDU-CSUはこれまで総選挙では40%以上を獲得していた。

この予測だとメルケル首相の続投になりそうであるが、それに水を差すかのように、現状の移民問題やテロへの不安が続くようであれば、次期総選挙でメルケル首相が負けるであろう、と予測しているのが国家安全保障問題研究所(SWP)のケンピン氏である。また、ドイツ外交政策教会(DGAP)のラポールド氏は、メクレンブルク・フォアポンメルン州議会選挙とベルリン市議会選挙の敗退を前にして、メルケル首相は移民問題で彼女の責任を負うべきだ、と述べた(「EL CONFIDENCIAL」)。
 
12月の党大会で彼女が党首としてどこまで支持票を集められるかによって、彼女自身が首相候補として立候補するか否かの去就が決まるように思われる。

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