2016/11/25    13:03

イギリスがEUから離脱すれば、EUへの輸出に関税がかかる?

英国に進出している日産は英国で生産量において最大の自動車メーカーになっている。ところが、英国がEU離脱を決定したことを受けて、英国で生産される同社の車がヨーロッパ大陸に輸出されると、関税がかかるようになるのではないかと懸念されている。
 
英国政府が「Hard Brexit」でEUから離脱することをメイ首相がほのめかしているからである。すなわち、英国が移民の入国をコントロールするということである。EU圏内の規定では人、資金、サービス、物の移動の自由があるが、英国は特に人の移動に関してその自由を認めないという姿勢を取ろうとしているのだ。そうなればEU側では、EUの単一市場への英国製品の無関税での輸入を認めず、10%の関税を科すと憶測されているのである。
 
英国日産で生産されている車のうち、およそ80%がヨーロッパ大陸などに輸出されている。英国日産は、近い将来、新型車2種を生産するのに、英国で生産するか、それともヨーロッパ大陸にある日産の工場で生産するかということを決定せねばならないという問題を抱えている。ヨーロッパ大陸ではスペインに日産の工場があり、そこで新型車2種の生産は可能である。しかし、日産本社は、英国に投資して、そこで生産したいというのである。
 
10月28日に日産は、英国日産のサンダーランドにある工場で新型車2種を製造することを決めたと発表した。この背景には、英国政府と日産との間で密約があるのではないかという噂がある。表向きは、英国日産が懸念している10%の関税がかけられるのはないかという不安について、英国のメイ政権がそれを払拭する保障をしたということになっている。しかし、その詳細は今も不明で、どの報道機関もそれがどういう内容なのか、明確に出来ないでいる。
 
しかし、仮に10%の関税がEUに輸入された時に適用されるとした場合、EU市場への日産も含め英国で生産されている全自動車の輸出量から判断して、年間10億ポンド(1280億円)の関税負担がかかるようになると指摘した資料がある(「Valenciacars」)。しかし、その関税を英国政府が負担するということは、まず考えられない。
 
一方、ヨーロッパ大陸から英国への自動車の輸出はないのであろうか? それを取り上げている記事はあまりない。しかし、8月15日付スペイン紙「El Periodico」が興味深い記事を書いている。それによれば、2015年にスペインから英国に輸出された自動車は36万3499台で、トップはオペル・コルサ、フォルクスワーゲン・ポロであると報じている。しかも、ヨーロッパ大陸から英国に輸出されている車では10車種がもっとも人気があり、その内の3車種がスペインからの輸出であると報じている(「el Periodico」)。

 
例えば、カタルーニャ州にあるオペルの工場からコルサ、メリバ、モッカの3車種が英国に輸出されている。年間の輸出額は6億9300万ユーロ(790億円)で、その額は同社の売上の20%を占めているという(「SOY MOTER」)。
 
筆者がスペインから英国への自動車の輸出に言及したのは、仮にEU側が英国からの輸入車に関税を設けると、英国もそれに対抗してヨーロッパ大陸からの輸入車に関税を設ける可能性は十分にありうるということなのである。この点がどの報道にも取り上げられていない。
 
さらに重要なのは、英国に存在している自動車メーカーを見ると、日産、トヨタ、フォルクスワーゲン、BMW、オペルーボクスホール、ジャガーランドローバー、プロトン、フォードとどれも外資企業で、その中でフォルクスワーゲンとBMWはドイツ企業である。EUが関税を設けて英国産の自動車の競争力を削ぐ政策を取ると、ドイツは英国にある自国の自動車メーカーを苦しめることになるのである。
 
フィナンシャル・タイムズ紙のコラムニストウォルファン・ムンチャン氏が注目に値することを述べたことが、スペイン経済紙「Cinco Dias」に11月1日付で掲載されている。同氏によると、EUと英国の双方の最終のBrexitに達成するまでの道のりは長いが、その間に英国の単一市場への参加は保障されることになるとしている点である。つまり、関税は適用されないということになる。
 
またメイ首相は、つい最近の保守党の党大会で移民を英国がコントロールするというHard BrexitでEUと交渉を進めると発表した。しかし、日産を説得した背景に、彼女自身がSoft Brexitの方向に向かうのではないかとの憶測がある。もともと彼女はEU残留支持派であった。彼女は考えの根底で、Hard Brexitでの交渉は英国にとって困難が多すぎると知っているはずである。
 
Soft Brexitとは移民の英国への入国をある程度の制限を設けながらも認める代わりにEU単一市場への輸出も無関税でできるという意味だ。
 
また、その憶測を支えるかのように、つい先日、英高等法院が、EU離脱の手順を規定したリスボン条約50条を発動するためには議会の承認が必要であるという判決を下した。英国政府はそれを不服として最高裁に上訴するとしており、その判決が12月に下されることになっている。
 
仮に、その判決が高等法院と同じ判決になれば、前倒し総選挙を実施するという噂もある。メイ首相はそれを否定しているが、自由民主党のニック・クレッグ前党首は2回目の国民投票を実施すべきだと主張しており、労働党のオーウェン・スミス氏も同様の考えを表明している。
 
保守党内も、離脱派と残留派に二分している。ここで労働党が離脱反対を明確に示せば前倒し総選挙の実施は余儀なくされると予想されている。また、このような状況になった場合、Hard Brexitを主張し続けることは非常に難しくなるはずだ。そしてSoft BrexitでEUと交渉に臨むという形を取るであろう。しかし、フランスとドイツが来年選挙を控えているため、双方の交渉開始は早くても来年末と見られている。
 
仮に来年末から交渉が開始されても、この種の取り決め交渉には合意まで4~5年を要するという見通しは常識となっている。合意の実施までのリードタイムを含めると英国のEU離脱は10年先になると思われる。それまでに英国で政権の交代などもあり、EU離脱がEU残留に変化する場合もありうる。

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