2016/10/20    15:09

イギリスのEU離脱までの道のりは、まだまだ遠い

英国がEU離脱を決めた後、ドルとユーロに対してポンドはそれぞれ17%と19%と下落している。ポンドへの不信は今後も続くことが予想される(「EL MUNDO」)。
 
10月2日にメイ首相は保守党大会で来年3月末までにEU離脱に向けたリスボン条約50条をEU委員会に通告すると発表した。EU委員会はその通告が正式にあるまで如何なる交渉にも応じないという構えだ。また、この党大会でメイ首相は、移民はEUではなく英国がコントロールし、EU法の英国での適用を廃止するとの姿勢を示した演説を行った。
 
EUとの交渉は2年間と予定されていることから、2019年4月までには英国はEUから離脱する考えでいる。また、2020年に予定されている次期総選挙の前倒しはしないことも述べた。しかし、この交渉が予定通り運ぶことは難しいと予想される。
 
その理由は、来年4月はフランスで大統領選挙と議会選挙、9月はドイツの総選挙がそれぞれ予定されているからである。その為、実際に本格的な交渉が開始さえるには来年末頃と見られている。しかも、このような交渉は一般に5年は必要とされている。すなわち、メイ首相が指摘している2019年4月の離脱さえ日程的に難しいと考えられる。そして、2020年は英国の総選挙が予定されており、それまでの交渉の進展具合によって政権が労働党に渡される可能性さえ否定できなくなる。
 
ポンドへの不信を導いているEU離脱決定に大きく影響したとされる移民の流入について、オックスフォード大学のオルーク歴史経済学部教授は、移民に対する反感がBrexit勝利の決定的な要因となったとしている。そして、保守党が公共サービスや住宅に必要なだけの投資をしていれば、EU残留派が勝利していたであろうと指摘している(「El Pais」)。
 
マンチェスター大学のダイアン・コイル教授は、グローバル化が発展したロンドンなどは住宅不足や道路事情の麻痺などの問題があっても、成長しているということでEU残留派が勝利した。一方、小さな都市や過疎地域などでは離脱派が勝利したことを挙げた。そして、移民の増加がEU離脱に影響したとされていることについて、同氏は相対的に未熟労働者がその対象になっただけであったと述べて、移民問題がEU離脱の決定的な要因になったのではないと指摘している(「El Pais」)。
 
社会学修士のカティーさんはBrexitの勝利を批判して、「キャンペーン中に十分なる情報がなかった」「今、多くの人がBrexitに票を入れたことに後悔している」「歴史的また地理的に英国がEUブロックから出ることは許されるべきではない」「大英帝国の時代はもう終わって、新しい時代にいるという現実を受け入れるべきだ」と語った(「El Confidencial」)。
 
国民投票の結果、投じられた3400万票の中で離脱支持と残留支持の票差は833,400票という僅か2.5%の差が英国の今後の運命を変える結果となったのである。この僅かの差は英国の今後のEUとの交渉において重荷となって伸し掛かって来るはずである。何故なら、EUとの交渉は容易ではなく、しかも、EU離脱による英国経済に及ぼす負の影響は重大となることが予想されるからである。
 
特に、EU委員会では、EU離脱後に待ち構えているのは茨の道であるということの見本を他の加盟国に知ら示す為に英国との交渉には厳しい姿勢で臨む構えでいる。英国が望む通りに離脱が出来れば、それに続いてEUから離脱しようとする国が現れる可能性があるからである。
 
EU離脱の交渉から、その来るべき結果を推測できるようになった時点で、英国民の間で後悔が始まると指摘したのは、国立経済社会研究所(NIESR)のレベカ・ピゴット氏である(「El Confidencial」)。
 
2015年度ノーベル経済学賞のアンガス・ディートン教授は「Brexitにハートでもって票を入れた者は、頭で後悔するようになる」と離脱支持が国民投票で勝利する可能性が強くなった時点で述べた(「El Pais」)。
 
英国のEU離脱による結果として一番厳しい予測をしているのはロンドンスクール・オブ・ビジネスのエコノミック・パフォーマンス・センターである。ひと家族当たり長期的に見て7000ポンド(91万円)までの減収、それはGDPで最小6.5%、最大9%の後退になると予測している。OECDは5600ポンド(72万8千円)の減収、GDP 2.5%-7.8%の後退、英国財務省は5000ポンド(65万円)GDP3.9%-7.5%の後退、国立経済社会研究所(NIESR)はGDP1.5%-3.5%の後退、オックスフォード・エコノミクスは、GDP 2.7%-4%の後退をぞれぞれ挙げている。一方のEU離脱支持者のパトリック・ミンフォードマクロ経済教授は4%の所得の増加を予測しているが、それは2030年としている(「El Pais」)。
 
英国はEU加盟国としての条件である人の自由な移動は受け入れないという構えで、その為にEUの単一市場への無関税でのアクセスが出来なくなるのは致し方ないという考えでいるようだ。何故なら、EU委員会では英国が人の自由な移動を受け入れない限り、EU市場へのアクセスには関税をかけるという姿勢でいるからである。
 
人、資金、物、サービスは一体のもので、そこから人の移動だけを切り離して、それは英国がコントロールする、それ以外の3つの要素の移動の自由は認めるからEU市場への関税の障壁のないアクセスはEUでは受け入れることが出来ないからである。
 
すなわち、EU市場への英国からの輸出が課税の対象になることを意味するものになる。例えば、それを非常に懸念しているのが英国で年間150万台を生産している日産である。同社の生産車の多くがEU市場向けだからである。英国の工場で新車の生産の為の投資をするか、それともスペインにある工場に投資を増やすか、ということの二者択一の選択を迫られている。その為に、英国の工場に投資を決める場合には、英国政府にこの課税によって損失が出た場合の補償を要望しているほどである。
 
この問題については、日本政府にとっても不安の種になっている。何しろ、英国で日本企業は14万人を雇用していることからもうかがわれるように、日本企業の英国での投資は今後の現地の日系企業の発展に大きく影響するからである。
 
また、今回のメイ首相の演説の中では「全英国連邦王国がEUからの離脱を」とうたっていることから、スコットランドもEUからの離脱を義務づけたものとなっている。スコットランドが住民投票をして独立国家となり、EUに残留する余地はないことを示した。
 
しかし、今英国議会のEU離脱に反対する保守党、労働党、自由民主党の議員が一緒になって、政府が議会での承認なくリスボン50条をEUに通告するのは違法であるとして最高裁に訴え、最高裁でこの審査が始められている。最高裁で議会での承認の必要があるという判決を下すようになると、事態はまた新しい局面を迎えることになる。

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