2016/08/17    15:16

アメリカに人権を語る資格はあるか――バイデン氏の発言を考える

人間の権利のなかでも、もっとも大切なものは、自分の身を守ることである。自分の身が安全であってこそ、私たちは財布の中身を気にしたり、いろいろな自分の幸福や人生について、考えることができる。
 
国家にとっても、それは同じだ。まずは自身の安全を守らなければならない。そのことが基礎になければ、いくら経済や社会保障の問題を議論しても意味がない。国の安全が脅かされている中で、国民が幸福に暮らすことは難しい。
 
国を守ることは、国家にとって最も大切な権利である。そのことを前提に考えたいのが、ジョセフ・バイデン米副大統領の発言である。
 
バイデン氏は15日、ペンシルベニア州で民主党の大統領候補であるヒラリー・クリントン氏を応援するために演説。共和党のドナルド・トランプ候補が日本の核保有を容認する発言を行ったことを念頭に、「核武装を禁止した日本国憲法を我々が書いたことを、彼は理解してないのではないか」と発言した。
 
政治家が、本当は言ってはいけないことを、言ってしまうことは時々ある。この発言もそうした類のものだ。
 
日本国憲法はマッカーサー草案をもとにつくられたから、「アメリカが書いた」というのはほとんど正しい。しかし、本来なら占領地の憲法を占領する側が書くようなことはあってはならないから、アメリカ側はなるべく日本人が自分たちで現在の憲法を書いたように装わなければいけない。しかも、その憲法は、日本から武器を取り上げ、再び立ち上がれないようにするものである。しかし、バイデン氏はつい口が滑ってしまった。
 
日米同盟は表向き、「アジアの平和と安定の礎石」である。しかし、日本がふたたび再軍備し、アジアの他の国々に脅威を与えないように、アメリカが抑えている面もある。特に、核拡散防止条約(NPT)などのアメリカの核政策によって、日本は核兵器を持たないように縛られている。これまでにも、日本の“軍国主義”がふたたび台頭しないよう、アメリカとの同盟が「ビンのふた」となって抑えているといった表現が、アメリカの軍人などから漏れることがあったが、バイデン氏の発言もそれに似ている。この点でも彼は、口が滑ってしまった。
 
バイデン氏の発言の重要性は、日米関係だけでなくアメリカ外交全体に及ぶ。事あるごとに人権の重要性に語る国のトップクラスの政治家が、「我々は日本が自衛できないようにしている」と誇らしげに語ったようなものだからだ。「人権が重要だ」と言いながら、他の国の自衛の権利を尊重しないなら、語るに落ちたりである。アメリカは海外での武力行使を、「自由と民主主義を守るため」などと正当化するのが得意だが、それが半分まやかしであることを副大統領自身が示唆してしまった。やっぱり口が滑った。政治家には、言っていいことと悪いことがある。
 
11月に迫っている米大統領選では、共和党のトランプ氏が、日本はアメリカに防衛を頼り過ぎていると述べ、同盟の見直しに言及しているために、同氏が日本の安全を損ねる危険人物かのように思われている。だが、トランプ氏の発言を見ると、日本が自分で自分の国を守ることは当然であって、その上での同盟関係だと認識している節がある。その意味では、正直な意見ではある。
 
むしろ気を付けなければいけないのは、「同盟国は大事だ」と表向きアピールしている人たちの方なのかもしれない。本当に同盟が大事だと考えているのか、あるいは日本に静かにしていて欲しいがための、「ビンのふた」としての関係なのか。
 
「同盟国は大事だから守る」と言ってもらうほうが、安心できる気はするだろう。しかし、それが長い目で見て、日本にとって最善のシナリオとは限らない。それなら、「自分の国くらい自分で守れ」と正直者にはっぱをかけられて、「普通の国」になる方がいいのかもしれない。

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