2017/04/27    10:08

西バルカン諸国の紛争が再燃する恐れ

かつて、ユーゴスラビア社会主義連邦が存在していた西バルカン半島で紛争が再発する可能性が強まっている。その理由は、およそ20年前の紛争終了後に、西バルカン諸国が期待していたEUからの支援が十分に得られず、市民の期待を裏切る状態が続いているからである。そして、その空白を、ロシアがセルビアを基盤にして、周囲の国々をEUから遠ざけてロシアの影響下に加えようとしているからである。

1943年に誕生し、1990年に崩壊したユーゴスラビア社会主義連邦は、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニアの6つの共和国とセルビア共和国内にあるヴィイボディナとコソボの自治州から構成されていた。

紛争はまず、1991年のスロベニアとクロアチア紛争を皮切りに、1992年からボスニア・ヘルツェゴビナ紛争、1996年コソボ紛争、2001年マケドニア紛争と続くのであった。その結果、上述した6つの共和国がそれぞれ独立した国家となった。そして、コソボは2008年に独立宣言。米国、EUの一部、トルコ、日本などはそれを承認しているが、ロシアやスペインはそれを認めていない状態が現在も続いている。

2014年11月、ドイツ外務省の機密書類でロシアに言及した内容が外部に漏れたという。それによると、ロシアが戦略的に西バルカン諸国に非常に重要性を置いているということが明らかにされたという。そして、ロシアはEUの影響力からこの地域をできるだけ遠ざけることに努めるようとしていることが明らかにされたというのであった(dw.com)。

現在、バルカン諸国でEUに加盟しているのはスロベニア(加盟2004年)とクロアチア(加盟2013年)の二か国だけである。ちなみに、NATO加盟国はクロアチアだけとなっている。

EUの西バルカン諸国への政治的、そして経済的支援が及ばない背景には、EUが経済低迷に加え、ウクライナ問題そして難民問題を抱えているからである。その影響で、西バルカン諸国の問題にまで手が回らないという事情がある。そして、西バルカン諸国は当面、現状のままの状態を維持して貰えればよいという考えでいたのである。ところが、最近になって、ロシアの接近が顕著になるに及んでEU自身が危機感を抱くようになっているのである。

その為、3月にEUのフェデリカ・モゲリニ外務・安全保障政策上級代表が西バルカン6か国を歴訪したが、マケドニアの議会での19分の演説中、議員席の半部は空席、親ロシア派の野党からの抗議や罵声が飛んだという。彼女はそれに応えて、「私がそれに屈すると思っているのだったら、間違っている」と答えたそうだ。その間も数十人の議員が声を挙げてロシアを支援し、EUに反対を表明した(lavanguardia.com)。

マケドニアでは昨年12月に野党の社会民主党が勝利して、アルバニア系の政党と連立政権をつくることにイワノフ大統領が承認しない状態になっている。民族問題に発展する可能性がある。

モンテネグロでは、昨年10月に、ロシアによる首相暗殺計画を含めたクーデター未遂があったとして、野党は議会の運営に反対している。その問題の根っこにあるのは、モンテネグロがNATOに加盟することにロシアが反対していることである。モンテネグロにとって、NATOに加盟すれば、セルビアそしてロシアからの脅威から守られるという意味がある。即ち、一旦加盟すると、ロシアが同国に侵入すればNATOを相手にすることになるからである。一方、ロシアにとってセルビアに物資を運ぶにはモンテネグロの港を利用せねばならないというハンデがあるのである。

コソボ議会はセルビアとの関係正常化の交渉の中断を3月に決めた。ロシアはセルビアでの軍事強化を図っており、Mig-29を6機、戦車T-72と装甲偵察車MRDM-2をそれぞれ30台、ロシアから近くセルビアに提供することになっている。これに対抗して武装強化しているのが西バルカンで唯一のNATO加盟国であるクロアチアである(Galaxia Militar)。
また、セルビアはロシアからミサイルシステムS-300を2セット購入する交渉も進めているという(Sputnik Mundo)。

ロシアが西バルカンの勢力拡大の基盤にしているのがセルビアであるが、ボスニア・ヘルツェゴビナとの関係も深めている。ロシアは両国にとって2番目に重要な取引相手国となっている。セルビアとボスニアの全取引量のそれぞれ9.5%と5%をロシアが占めている(LA MIRADA EUROPEA)。

ボスニアではセルビア系の企業はロシアの金融機関からの融資も受けれるようになっているという。ロシアは軍事面以外に経済面においても西バルカン諸島での支援を展開しているという。その背景にあるのは将来ヨーロッパに送る天然ガスのパイプラインの設置に反対させないようにするのも一つの狙いとしてある。米国の意向を無視させるためである。

EUが西バルカンへの政治的また経済的支援を欠いている間に、ロシア以外にトルコも自国の影響力の拡大を図っている。かつてのオスマン帝国の血を継ぐトルコである。この地域での発展の基盤は歴史的に既に備えている。トルコ支援の典型的な例がコソボである。これまで多くのプロジェクトに資金的な支援をして来た。2013年にはコソボに対する外国からの投資の10%はトルコからであったという。また、トルコのクリックホールディングはコソボの電力会社を買収することに関心を示している。トルコ・エコノミー銀行はコソボに24の支店を開設している(LA MIRADA EUROPEA)。

さらに、ロシアはトルコと協力して西バルカン諸国での影響力の拡大に関心を持っているという。それは、EU及び米国による、この地域での影響力を減少させるためである。特に、トルコはつい最近の国民投票で憲法が改正されて、エルドアン大統領の独裁体制ヘと進む可能性が強い。彼はかつてのオスマン帝国を再現させるかのように近隣諸国への影響力を拡大させる方向に向かうであろう。その中には西バルカン半島も含まれる。

唯一、今後の西バルカン諸国で紛争が起こるのを防ぐには、EUが積極的にこの地域の政治と経済面での支援をして行く以外にないのである。

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