2016/09/23    13:00

イタリアのアマトリーチェとその周辺を襲った地震は中世をしのぶ観光地としての将来を完全に奪った

アマトリーチェの風光明媚な風景。


米国国立環境情報センター(NCEI)によると、イタリアでは1957年から現在までマグニチュード3.5以上の地震は52回起きているという。そして、犠牲者の総数は6650人。特に、1976年から1985年の間にその頻度が増し、その数は17回。すなわち、1957年からの地震の32%がこの期間に起きているという(「El Espanol」)。
 
その中でも、1980年にカンパニア州のイルピニア市で起きたマグニチュード6.9の地震では2900人が犠牲者となった。そして、最近の地震で記憶に残るのはラクイラ市で起きた地震である。マグニチュード6.3、犠牲者は306人、倒壊した建物が多く、65000人が住む家を無くすという出来事であった(「El Espanol」)。

地震で倒壊した現地の家屋。


この地震が教訓となって、それ以降に建設する建物は耐震構造を備えて建設することが義務付けられた。
 
そして今回の8月24日未明にアマトリーチェ町とその周辺の3つの町を襲った地震であった。これまで、同国を襲った地震による被害の経験から関係当局が具体的な事前の予防策を取っていなかったことに被害を受けた町民は強い憤りを感じているという。
 
2009年に起きたラクイラの地震から僅かに7年が経過しただけである。これまで、イタリアの地質研究協会では6.3以上の地震は15年半の周期で起きる、と見られていた(「teleSUR」)。
 
2009年のラクイラ地震以後、耐震構造を義務づけた一方で、イタリア政府の主導で最近50年間に1500億ユーロ(16兆5000億円)、すなわち、年にすれば30億ユーロ(3300億円)の公共投資をして公共建物などの補強や再建をして来た。地震による建物の損害を過少にするためであった。しかし、耐震構造を備えた住宅建設を義務付けても、古い建物を地震に耐える為に補強する費用は非常に高く、それが実行されていないというのが現状であった。また、補強工事をした建設業者も大きな地震は起きるはずだと手前勝手に想像して手抜き工事や建設費用を安く済ます方法を選んでいたということも今回の地震から判明している。
 
しかも、現在もイタリアで建設されている建物の18%は必要な安全基準の認定を受けることなく建設されている、というのが現状だ。建設費用が高くつくからである。地震が起きるかどうか分からないことに多額のお金を使うことに抵抗があるのだ(「El MUNDO」)。
 
今回地震に襲われたアマトリーチェのように中世の名残りをもつ名所では、3分の1以上の建物は100年以上経過したものばかりで、それを地震に耐える為に補強工事をする費用は非常に高い。しかも、観光地で観光客は、この古い建物を見学するのも楽しみのひとつであるということから容易に補強改装もできなかったのである。
 
さらに、もうひとつこの町の住民を悩ましている問題があった。古い建造物を地震災害から保障する保険費用が非常に高いということなのである。1m2当たり300ユーロ(33000円)の費用がかかり、新しい建物の場合の500ユーロ(55000円)と比較すると非常に割高になるのである。一般に古い建物は床面積も広いことから保険をかけることも金銭的に高くつくという二重苦に置かれていた。それ故に、結局は保険もかけていないという家族が多くいたという。そして、今回の地震ですべてを失うという悲劇に直面しているのである(「LA NACION」)。
 
ローマからも130kmという比較的アクセスの良さからアマトリーチェは観光地として栄えた。しかし、町にある半分の建物は倒壊したという。町が復興しても、中世の面影を偲ばせる光景は再現できない。それは観光地としての町民の生計を奪うことを意味する。
 

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