2015/02/09    14:00

【社説読み比べ】「イスラム国」邦人人質殺害事件からの教訓

「イスラム国」に拉致された日本人の人質が2人とも殺害され、事件は最悪の結末となった。それを受けて、日本国内では、民主党や共産党をはじめ、安倍晋三首相の言動を追及する動きが活発である。

5大紙の社説では、朝日、毎日両紙が、安倍首相のエジプトでの演説が、「イスラム国」を挑発した可能性を示唆。支援が「軍事援助」に見えないように配慮する必要性に言及している。まずは朝日新聞から。

安倍政権は、集団的自衛権関連の安保法制の成立をめざしている。要件が満たされれば、他国への攻撃でも武力行使が認められ、後方支援の幅も広がる。

もし軍事支援に踏み込むようであれば、「イスラム国」が宣伝した通り、米英と同列の立場になるだけだろう。

だが、安倍首相はきのうの国会で、空爆作戦への参加や後方支援は「考えていない」と明言した。「難民の命をつなぐ」ための支援に徹してもらいたい。

たとえば、中東安定化のための国際会議の開催に、日本がもっと力を貸せないか。難民支援の独自策を打ち出せないか。

アラブ諸国、イスラエル、イランのいずれとも対話ができる日本には、米国にはない独自の立場をとる余地がある。

とくに人道支援の分野で、国連を軸にして国際社会の力を結集する。そうした方向での合意形成を後押しすべきだ。
(朝日新聞 「人質事件と日本外交 平和国家の構えを崩すな」 2015/02/03) 


日本の「軍事的関与」(自衛隊派遣)に釘を刺し、国連を軸に国際社会と合意形成をと主張する。

毎日も、朝日と同じく、「軍事支援でなく人道支援を」と強調している。

首相はエジプトでの演説で、IS対策として周辺国に総額2億ドル(約235億円)の人道支援を表明した。首相演説から3日後、ISは2億ドルの支援表明を「イスラム国との戦争のために支払った」と批判し、同額を日本人2人の身代金として支払うよう要求する映像を公表して、事件はオープンになった。

日本の人道支援をイスラム国と戦う周辺国への軍事支援のように主張するのは言いがかりだ。非難されるべきはISの行動だ。だが演説がISに利用され、人質事件を新たな段階に進めるきっかけになったことは否定できない。訪問のタイミングや対象国の選定、人道支援がどう使われるかの具体的中身、演説の表現ぶりなど、冷静に検証すべきだ。
(毎日新聞 「日本人人質事件 疑問にこたえる検証を」 2015/02/03)

 

 「集団的自衛権で日本人が危険にさらされる」は本当か?

読売は、「集団的自衛権行使がテロの危険を増す」という民主党議員の「一国平和主義」の考え方に疑問を呈している。

イスラム国は、勢力拡大のため、独善的な論理で卑劣な犯罪行為を重ねる狂信的な集団だ。常識的な交渉が通用しない相手であることも踏まえねばなるまい。

疑問なのは、集団的自衛権の行使容認により、日本に対するテロの危険が増すかのような見解を那谷屋氏が示したことだ。

集団的自衛権の行使は、各国とも認めており、テロとの戦いに不可欠な日米同盟と国際連携の強化が目的である。日本だけが安全であればいいという考え方は、「一国平和主義」に陥りかねない。

テロの危険に過剰反応すれば、日本がテロに弱いとみなされ、かえって標的にされる恐れがある。在留邦人の安全確保策を強化しつつ、テロや誘拐に見舞われた際の対応策を検討しておきたい。
(読売新聞 「『人質』国会論戦 対テロで冷静な検証が重要だ」 2015/02/03)

日経は、過激な“ならず者”とイスラム社会とを区別して冷静に対処を、と提言している。

日本はこれまで中東で一度も武力を行使したことはなく、ビジネスや技術の供与などを通して地域の平和と安定に貢献しようとつとめてきた。これは誇っていい。テロ対策としていま行っている支援もまた、食料や医療など人道的な観点からのものである。

こうした姿勢を理解しようとしないならず者がいることが、今回の事件ではっきりした。テロに屈することなく国としてテロを封じ込める手を打ち、国際的な取り組みを支援していくのは当然だ。

その一方、イスラム国が仕掛ける「憎しみ対憎しみ」の土俵に私たちが乗っかり、イスラム社会そのものを危険視するようなことがあってはなるまい。

当たり前だが、イスラム社会のほとんどの人はテロと関係ない。今回の事件でも、人質となった邦人2人の安否を気づかいテロを非難する声が、日本のイスラム社会の中から寄せられた。
(日本経済新聞 「イスラム社会と手を携えて」 2015/02/03)

自衛隊派遣を含め、最善の策を判断できる国に

産経は、タブーを恐れず、対外情報機関の創設と邦人保護のための自衛隊派遣をと、提言している。

国会では、人質事件への政府対応をめぐる論議が始まっている。より重要なことは、今後のテロに備え、国が国民を保護し、救い出す意思と能力の整備である。

それには、法制と実際の能力の双方を整えなければならない。

首相は国会で「領域国の受け入れ同意があれば、自衛隊の持てる能力を生かして救出に対応できるようにすることは国の責任だ」と語った。

陸上自衛隊には精鋭隊員による特殊部隊である「特殊作戦群」が存在するが、今の自衛隊法では、海外で騒乱に巻き込まれた邦人を護送はできても救出できない。

今国会に提出予定の安全保障関連法制が整備されれば、受け入れ同意国の権力が現地に及んでいることなどを条件に、警察権行使の一環として自衛隊を救出作戦に派遣できるようになる。確実な成立が望まれる。
(産経新聞 「邦人保護 救出の法と態勢が必要だ 対外情報機関の創設を急げ」 2015/02/03)

1990年に始まった「湾岸戦争」で、アメリカをはじめとする多国籍軍に日本は莫大な資金援助を行ったが、それが後に「カネだけ出して、血も汗も流さない」と国際社会で批判を浴びた。今回の事件では、対イスラム国の人道支援のためのカネが、「十字軍に参加した」と受け取られて、2人の日本人を殺害された。

資金力であれ軍事力であれ、日本は世界に大きな影響力を持つ大国になっている。いつまでも敗戦の痛手を引きずって、「どの国の味方になれば批判されず、安全でいられるか?」を汲々として考えるより、自ら「何を主張し、何を行うことが正しいのか」を判断し、毅然とした態度を示せる国になることが、世界の平和を実現するために求められていることではないだろうか。

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