2016/09/19    14:50

コロンビア、武装組織との和平合意とその後――半世紀の間に22万人が暗殺された国

南米でこの半世紀の間に800万人の市民が身の安全が脅かされる被害を受け、22万人が暗殺され、4万5000人が行方不明になっているという国がある。そして、多くの住民が恐怖から居住先を変えねばならない状態が続いていた。その国が米国の支援と3人の大統領による平和を求める戦いによって、ついにその成果が現実のものとなり、市民は不安な社会生活から解放されるのが目前に迫っている。その国とはコロンビア共和国である(「El Pais」)。
 
コロンビア政府と反政府武装組織FARC(コロンビア革命軍)が断続的ではあったが、この4年間の交渉の末、8月25日に武装解除の合意に達した。コロンビアと言えば良質のカフェーの産地と言うくらいで、国としての存在感は日本人の間では薄い。しかし、コロンビアでは、この半世紀もの間、武装組織や麻薬組織が蔓延り、彼らによって殺人、誘拐、住民への理不尽な徴税、麻薬の乱用など、平和を脅かすあらゆる暴力が国民を脅威に晒していた。日本人もその暴力の対象にされた。現地で日系企業に勤務していた日本人が誘拐されたケースがある。彼らはいずれも、その後に身代金を払って解放された。しかし、2001年に誘拐された日系企業の日本人副社長は、2003年に遺体となって発見された。
 
コロンビアには武装組織として大きく分けて二つある。FARC(コロンビア革命軍)とFLC(民族解放軍)である。今回、政府と合意に達したのは最大武装組織FARCである。FARCは1964年に共産主義を信じる農民の間から生まれた武装組織である。2000年頃には2万人の戦闘員を数えるまで成長していたという(「BBC」)。
FLC(民族解放軍)はそれよりも幾分戦闘員は少ない。

そもそもコロンビアでこのような武装組織が誕生した理由は、1945年以降、政治において保守党系と自由党系の対立による寡頭政治が横行していた上に、両党の対立が激化して暴力を伴い反対政党の党首を暗殺するという事件も起きたためだ。この激しい対立から、各政党を支持する市民同士の暴動にまで発展したケースもあった。
 
その一方で、社会はあまりに不平等で、仕事も不足しており、特に農民は貧しい生活を余儀なくさせられていた。その逆境から地方でゲリラ活動が活発化して行った。それがもとになって武装組織が誕生したのだ。
 
キューバ革命はコロンビアの上述二つの武装組織にも影響を与えたという。更に、コロンビアで発展していた麻薬組織と組むことによって資金的にも豊かになり、勢力を拡大させて行った。1990年代にはFARCはコロンビア政府の政権獲得を目標にするまで組織は拡大していた。
 
しかし、2000年代に入ると米国は国内の麻薬密売の拡大を阻止するために、その生産国であるコロンビアの麻薬組織とそれに関係を深めている武装組織との戦いに資金的支援をコロンビア政府に提供するようになった。それを「コロンビア・プラン(PLAN COLOMBIA)」と呼んだ。米国はこの15年間に100億ドル(1兆円)の資金をコロンビア政府に注ぎ込んだという(「BBC」)。
 
この資金支援を最初に受けた時、コロンビアはパストゥラナ大統領の政権下であった。その後に、ウリベ大統領、サントス大統領と続き、3人の大統領によって武装組織の壊滅か、或いは和平交渉に合意するか、二者択一の道を彼らに迫るまで政府軍は強力になった。
 
2002年に政権に就いた当時のウリベ大統領は、米国から無人飛行機ドローンの提供を受けてFARCの動きを24時間追跡できるまでになった。そしてコロンビア軍も武装強化させて、彼らの組織の弱体化を図った。その成果もあって、FARCの幹部が少しずつコロンビア政府軍によって殺害された。2008年には隣国のエクアドルに越境したコロンビア軍はFARCの副司令官ラウル・レイェスら数十名が隠れていた場所を探し当てて殺害するという出来事もあった。彼の死で、FARCの戦略能力は大きく後退したという。彼が持っていたパソコンからFARCがベネズエラのチャベス政権と協力して麻薬の輸出をしていたということも明らかにされたという。
 
一方のFARCは、50年間の戦いで組織も弱体化して疲弊を見せ始めていた。遂に、2012年にコロンビア政府との和平交渉に応じることを受諾した。それまでも和平交渉を政府は試みたが、まだ当時はFARCの勢力は弱まっていなかったから協議は成功を見なかった。しかし、今回は状況を異にした。最初の協議はノルウェーのオスロで持たれた。その後はキューバのハバナに移されて現在に至っている。
 
今回、双方で合意に至ったが、まだ詳細を詰めねばならない点があるいう。例えば、停戦合意から180日で全ての武器を引き渡すことになっているが、戦闘員だった彼らのその後の経済面、社会面における社会復帰をどのような形で保障するのかという取り決めがまだ明白にされていない。彼らの犯罪行為をどのように裁くのかという点も曖昧である。しかし、50年間の犯罪を正しく裁くことは出来ないというのが双方の根本的な見解でもある。むしろ、戦闘員の社会復帰を成功させることが大事だというのが共通の望みである。
 
また、2018年からは国会に最低、下院5議席と上院5議席が約束されている。しかし、それが下院定員166議席に追加されて171議席になるとのか、同様に上院も定員102議席が107が議席になるのかまだ明確にされていない。また、選挙で得票数が35万票を超えればそれに比例して議席数も増えるとしている(「El Nuevo Siglo」)。
 
10月2日に今回の合意を国民に問うとして、国民投票が予定されている。しかし、この国民投票では承認に必要な得票数は有権者の13%とされている。すなわち、439万6626票である。半世紀に亘る国民の苦しみを配慮して、サントス大統領のコロンビア政府は、50%の過半数の獲得は必要はない、平和を取り戻すには13%の票の獲得で十分だ、という判断を下した(「infolatam」)。
 
ギャラップ世論調査によると、投票者が50%以下の場合を推定した場合に、合意への支持が67.5%、反対32.5%という予測をしている。反対支持派の理由は、武装組織をもっと壊滅的な状態に追い込み、彼らにもっと厳しい条件を付けるべきだという意見なのである。ウリベ前大統領がこの意見の持ち主であり、今回の和平交渉の結果に反対している。しかし、2010年から2期目を務めるサントス大統領は、2期目で再選された理由も多くの国民が彼が推進している和平交渉を支持した表れでもあった。サントス大統領は戦闘員にも和平に協力してもらうために当初から柔軟な姿勢で臨んでいた。交渉中もFARCの暴力活動が続けられて、それを不満として交渉が中断したことも数回あり、交渉は困難を極めた(「infolatam」)。
 
もう一つの武装組織FLCとはまだ和平交渉は成立していない。政府軍はFARCが放棄したテリトリーを彼らが占拠しないように、監視を強化する。

しかし、遂にコロンビアの将来を託す子供たちが、治安面で不安なく社会生活を送ることができるようになることに多くの市民はこの交渉合意に賛成を表明している。

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