2016/05/14    08:00

日本人があまり知らないスペイン王家の裏側――イギリスよりもゴタゴタ?

前国王のファン・カルロス1世。


スペインのフランコ将軍は、独裁政治のあとに立憲君主制に戻すことを生前から決めていた。そのため、ブルボン家のファン・カルロス王子(当時)をフランコ将軍の後継者に任命した。

スペインとブブルボン家の繋りは1701-1704年に起きたスペイン王位継承戦争に由来する。ハプスブルグ家とブルボン家の争いだ。ブルボン家の勝利に終わり、フランスのルイ14世の孫がフェリペ5世として即位した。これがスペインのブルボン王朝の始まりである。

フランコ将軍亡き後、ファン・カルロス王子が1975年に国王ファン・カルロス1世として即位した。ファン・カルロス1世は1981年に起きたクーデターを未遂に終わらせる活躍をして国民から高い支持を受けていた。

しかし、それから30年以上が経過すると、若い世代の間では独裁政治から民主化への以降で存在感を示したファン・カルロス1世の当時の活躍を知る者は少なくなり、民主政治にも色々と矛盾が生まれていた。

そしてスペイン王家のスキャンダルなどもあり、国民からの王家への支持率が低下していた。そんな中で、パナマ文書の解明は国民からのスペイン王家への信頼を更に損わせるものになった。ファン・カルロス前国王の姉のピラール王女が、1969年創設のオフショア企業「デランテラ・フィナンシエラ」の会長を務めていたことが明るみになったのである。また彼の息子も、同様にオプショア企業に名を連ねていることが判明した(「El Confidencial」)。

フランコ将軍は亡くなる1年前の1974年、容態が悪化した時にファン・カルロス王子(当時)を暫定的に元首に任命した。その時、ピラール王女が上述オフショア企業の会長に就任しているのだ。そして2014年、フェリペ6世が即位した5日後の6月24日にこの企業は解散した。ファン・カルロス1世が国王として在任中にこのオフショア企業が存在し、国王が退任するとこの企業も解散したということは、ピラール王女が弟のファン・カルロス1世の代役としてオフショア企業の会長になっていたようにも思われるのだ(「El Confidencial」)。

またファン・カルロス1世の愛人だと噂されていたドイツ人のコリーナ・ツー・ザインヴィトゲシュタインの名前も、パナマ文書に現われた。彼女は米国ワイオミング州の企業ユニバーサル・プロテクションの25000株を英国領ヴァージン諸島に移動させるつもりだったが、それができないことになった。その株を移管させることになっていた。Industrial Consultancyが、ヴァージン諸島で信託者として許可されていなかったからだという(「Publico」)。

コリーナは英国のBoss & Co Gunmakerで働いていた時には、タックスヘイブンとしてジブラルタルを利用していたという。フェリペ6世がまだ王子の時、レティシア妃との新婚旅行は彼女が勤務していたBoss & Co Gunmakerが旅行の企画を担当した。この企業を使うことになったのはファン・カルロス1世のたっての願いだったからだという(「Publico」)。

ファン・カルロス1世の父親ファン・デ・ボルボンが亡くなった時に彼は、スイスの3つの銀行にスペイン旧通貨で7億2800万ペセタ(5億2600万円)を残していたことをスペイン紙「El Mundo」が2013年に明かした。それによると、ファン・カルロス1世は3億7500万ペセタ(2億7000万円)を遺産として受領し、それを預けていたと思われるスイスの銀行口座は1995年に解約。父親ファン・デ・ボルボン(バルセロナ伯)が未納になっていた経費などをそれで清算したと王家は発表した。

しかし、それを証明する書類は王家からは一切公にされていない。すなわち、同紙がこれを暴いていなければ国民はそれを知ることもなく、またそれが脱税の為にスイスの銀行に預金されていたということも知らずにいたことになる。

スペインで最大の汚職とされている「グルテル」とタイトルのついた汚職の公判は今も続いている。政府与党である国民党の主要人物はアズナール元首相から始まって多くの議員がこの汚職に絡んでいるとされている。この汚職組織の主犯フランシスコ・コレアの資産を隠蔽する為にスイスの銀行に20年前から開設している「ソレアド」と呼ばれている口座がある。そこにはスペインの著名人の資産が隠蔽されているという。

この口座にファン・カルロス1世の3億ユーロ(360億円)の預金があることを、80年代に活躍したブローカーであるハビエル・デ・ロサが、ペケーニョ・ニコラスという政界、財界、国家諜報機関にまで人脈をつくって少しフィクサー的な活躍をしている人物に語ったというのだ(「Publico」)。

また、ファン・カルロス1世は愛人コリーナを同伴してのチャーター便でアフリカにまで行って象狩をして骨折。そのお忍び旅行がメディアで暴露された。また次女の婿が公金横領と資金洗浄の罪状で公判が進められている。それに次女も共犯者としての容疑もかけられている。

しかし、クリスマスのメッセージで当時まだ国王だったファン・カルロス1世は「国民は全て法の前で平等」と言っておきながら、次女が起訴されると、かつてスペイン憲法の起草者の一人だった人物を弁護士につけ、検事も味方になって彼女を弁護するような質問をして彼女を無罪にさせようとするのが丸見えとなった。それを見た国民は、王家の特権にうんざりしている。

昨年はベルギーでファン・カルロス1世が父親であると主張する48才の女性が現われた。スペイン国内にも50代の男性で、同じく彼が父親だと言う人物が現われた。いずれも認知の為の検査にまでは発展していない。しかし、これも国民から王家への信頼を失うまた要因の一つになった。いずれも、ファン・カルロス1世が王子の時に関係をもった女性との間に出来た子どもだとされている。

このように、国王としての信頼を傷つける出来事が重なって、ファン・カルロス1世への人気は2008年の55.4%から2014年には37.2%まで落ち込んだ。そこで国王は勇断を下して王位を長男のフェリペ王子に譲ることに決めたのである(「El Confidencial」)。

フェリペ王子がフェリペ6世として即位した時は49.9%にまで支持率は回復した。そして2015年6月には65.1%にまで人気を取り戻している(「El Universo」)。

スペインは19世紀と20世紀にそれぞれ一度、共和政を経験している。そしてフェリペ6世の曾祖父アルフォンソ13世は退位させられた歴史をもっている。その意味でも、スペインのブルボン王家の新国王フェリペ6世は国民からの信頼を取り戻すために惜しみない努力が必要とされている。

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