By. Julia. Y
2016/11/12    10:00

【ベルリンから】 来年は宗教改革500周年――現代人が宗教改革に思うこと

以前、この記事で宗教改革やルター所縁の都市ヴィッテンベルクについて述べました。ハロウィンで盛り上がる10月31日は宗教改革記念日でもあり、ドイツでは毎年何らかの形でルターによる宗教改革が話題となります。

特に来年2017年は宗教改革500周年なので、新聞などで大きく取り上げられたり、多くの都市で宗教改革にちなんだイベントが行われることかと思います。

宗教改革についての特集を組んでいるDie Zeitの記事では、「95箇条の論題」にちなんで95人の著名人による宗教改革に対しての見方や、キリスト教的信仰の核とは何かといったテーマに対しての彼らなりの思想がまとめて載せられています(記事全文はDie Zeitの新聞か有料ウェブサイトでのみ閲覧可能です)。

その中から、筆者が印象的だと感じた数人の意見を日本語に要約して紹介したいと思います。
 

「イスラム教徒も宗教改革を必要としている。ルターとイスラム教は、神と人との間には何も介するものはないという認識によって結ばれているのである。アラーの慈悲は限りないものであり、こういった認識があってこそ自由は生まれるものだ。我々にはイスラム世界でのルターが必要だ。」
(Abdel-Hakim Ourghi, 宗教教育学教授)


イスラム教では、アラーとキリスト教での神は同一であると考えられているため、このようにキリスト教での宗教改革を参考にしようという発想も生まれやすいのかもしれないと思います。こういった発言は現在のイスラム世界が持つあらゆる問題を理解しているからこそ出てくるものでしょう。
 

「キリスト教とは隣人愛の宗教である。利己心やエゴイズムによって支配され、多くの人が額に汗して働き豊かさを享受できない一方で、市場を独占する者がほとんど税金も払わずにいるような社会は不正義であるだけでなく、キリスト教精神に背くものである。こういった状況は変えていかなくてはならない。」
(Sahra Wagenknecht, 野党Die Linke党首)


聖書にある「富んでいる者が神の国に入るよりは、らくだが針の穴を通る方がやさしい」という言葉を筆者は思い出しました。あまりにも格差が開くと、貧しい人が教育を受けられずいつまでも貧困から抜け出せないという悪循環が生じ、格差が固定されてしまう可能性があり、それは確かに不正義であると考えられます。

しかしながら、多くの場合、福祉を支えるための税金を多く払っているのは富裕層であり、あまりにも富裕層から税金を取るとこの記事で以前述べたように、彼らが国外へ逃れる可能性もあります。そうなると国がさらに貧しくなるため、そもそも貧困層を支える福祉が成り立たず、一体何が不正義でキリスト教精神に反するのか分からなくなります。ただ富裕層を批判するのに終始するのではなく、富裕層対貧困層という単純な二項対立を越えて国民経済の底上げをする政策を考えようとしなくてはならない気がします。
 

「私は宗教と政治体制の関係といったものに関心がある。例えば、毎年Transparency International(腐敗、特に汚職に対して取り組む国際的な非政府組織。ちなみに本部は筆者のいるドイツ・ベルリン。)が公表している各国の政治腐敗度を示した指標を見てみると、プロテスタントの国々は常に腐敗度が低いということが分かる。」
(Getrude Lübbe-Wolf, 元連邦憲法裁判所裁判官)


95人の意見には、政治と結びつけてキリスト教を語るものが多く見られます。このように、偏見が入る可能性はあるものの、ある指標に基づいて事実を言う人、無神論者としてジェンダーなどの観点からキリスト教を批判する人、敬虔なキリスト教徒として政治と宗教の結びつきの重要性を語る人など、さまざまです。ちなみにメルケル首相が所属する政党CDU(Christlich Demokratische Union Deutschlands, キリスト教民主同盟)はその名の通り、「自由、連帯、正義」を根本概念と定める中道右派の宗教政党です。
 

「キリスト教会が枝葉末節にこだわるほど、信者は離れてくものである。神を中心に沿えなければ、教会は廃れてしまう。」
(George Augustin, 教義学教授)


キリスト教に限らず、この発言は全てに当てはまることのように思います。
現代人は特に過去と比べると神という存在に対して懐疑的になっているため、教会が堂々と神について話すのを恐れている姿勢が、この発言から見て取れるような気がするのですが、しかしながらそれでは敬虔な信者は離れてしまうということかと思います。
 


「今週私は、天を裂くようなアルプスの2200メートルの地点へ登り、アルプスの頂上を仰いだ。この世のものとは思えない美しさであった。いかに私が普段懐疑的な人間であろうとしても、この場では何も疑いようはない。そこで私は天地創造に対して畏怖の念を抱いたのである。キリスト教信仰を持つということは、自然が偶然にできたと見做すことなどとは異なり、美しいものである。」
(Götz Hamann, Die Zeit紙編集者)


個人的に筆者はこの意見にとても同感するところがあります。天地創造は今この目で確かめられないことであり、神の存在も目に見えるわけではないですが、信じないでいるより何かを信じた方が少なくとも自分の気持ちはポジティブになるような気がします。

少し翻訳が冗長なところがありますが、ここで要約して載せた意見はあくまで一部であり、95人それぞれが聖職者や学者、政治家、ジャーナリストなどの立場からキリスト教や宗教改革に対しての考えを述べています。

信仰心が篤い人や無神論者、政治的思想と結びつけてキリスト教を語る人など語っている内容はさまざまですが、宗教改革は500年経ってなお現在まで大きな影響を与えているのだと感じます。また、信仰心があるかは別にして、多くの著名人が堂々と宗教や神について冷静にコメントができる点に、日本にはない風通しの良さを感じます。

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