2016/12/07    10:00

ゼネストが5カ月に4回起きたギリシャ――支持を失うポピュリスト政権と国民の苦しみ

ポピュリズム政党のシリザ(Syriza)が2015年1月に政権に就いてから、ゼネストは最近5か月で4回行われた(「El Mundo」)。
 
4回目のゼネストでは医師やジャーナリストも参加したらしい。チプラス首相は前回の総選挙でトロイカ(EU委員会、欧州中央銀行、IMF)がギリシャの政治を支配するのではなく、トロイカからの債務条件を改善し、緊縮策は廃止する。そして、公務員の削減や年金の減額はしないなど公約して勝利し政権に就いた。
 
しかし、一旦政権に就くと、ギリシャ経済の現状とトロイカからの支援金なしにはギリシャは破綻するということをチプラス首相は理解したようで、それ以後は支援金の提供を受ける為にトロイカの下僕のように彼らが要求している条件に忠実に添う形でギリシャ国民を逆に苦しめる政策を実施している。
 
11月3日も、ギリシャの労働省の前では、3000人の年金受給者が集まって年金の減額に続く減額に抗議していた。彼らは労働省の建物に向かって大声で「嘘つき」と叫び、労働省が年金受給者に年金減額の理由を説明した通知書を次々に燃やしていった。「彼ら(政府)は我々の人生を焼け尽くしてしまった。だから、我々は彼らの恥晒しの通知書を同じように焼くのだ」と一人の年金受給者がロイター通信の記者に語った。その後、彼らは国会議事堂に「盗んだお金を返してくれ」とリズムをつけて歌いながら行進して行ったという(「Dirigentes DIGITAL」)。

ギリシャ中央銀行の報告によると、ギリシャ国民の苦しみを反映して、自殺者が増えているという。ギリシャが2009年頃から財政難が顕著になり、トロイカからの支援金を受ける為に政府は極度の緊縮策を断行した。それが特に保険衛生の分野でその影響を見ることが出来るという。例えば、1歳未満の幼児の死亡率が50%増加したという。幼児の死亡率が2008年は2.65%であったのが、2014年には3.75%に増加。慢性うつ病患者は2008年から毎年増加を続け、2014年までに延べ24%の増加を招いたという。また、慢性的な病気を患う15歳以上の少年が24.2%も急増していると報告された(「Katehon」)。
 
2013年のOECDの報告によると、ギリシャでは、79%の市民が健康保健の手当てを受けられない状態にあるという。しかも、長期失業者は経済的に医薬品も医師の治療も経済的に受けられなくなっている。国民の13%は一度も医者の診察を受けたことがないと指摘した。
 
シリザが政権に就いて間もなく2年が近づいている現在、ギリシャ国民はポピュリズム政党の本来の姿を見抜くようになっている。今年6月の世論調査で、シリザは昨年に比べ13.2%の支持を失っているのが明らかになっている。今年6月の主要政党の支持率は以下のようになっている(「PASAPORTE ELECTORAL」)。

  • 新民主主義党(ND) 31.6%(+3.5)
  • シリザ(Syriza) 22.3%(-13.2)
  • 黄金の夜明け(Amanecer Dorado) 10.1%(+3.1)
  • ギリシャ社会主義運動(PASOK) 5.3%(-1)
  • 独立ギリシャ人(ANEL) 3.1%(-0.6)
  • ポタミ 2.7%(-1.4)

ギリシャの総選挙では一番多く票を集めた政党に50議席が褒美で加算されるシステムであることから、次に予定されている2019年の総選挙で新民主主義党が政権を回復することは確実となっている。同党のリーダーで父親が首相を務めたミソタキス氏(47)も着実に支持を伸ばしている。一方、ヨーロッパ全域で極右翼の政党が支持を伸ばしているが、ギリシャも同様に極右政党の「黄金の夜明け」が支持率を伸ばしている。
 
1980年代からギリシャの議会政治は2大政党が政権を担っていた。新民主主義党とPASOKの名で良く知られたギリシャ社会主義運動党が政権を交互に担当していた。しかし、ポピュリズム政党の誕生に伴って、社会民主を掲げる政党はヨーロッパではポピュリズム政党の前に支持率を落としている。ギリシャも同様で、社会民主を標榜するPASOKが国民から支持を回復出来ないでいる。シリザと連立政権を組んでいる独立ギリシャ人は僅かに支持率を落としているが、リベラル派のポタミは3%を満たさないので現状のままだと議会から姿を消すことになる。
 
チプラス首相はトロイカからの支援金が継続しないと国家経済は運営できないというのを熟知しているが、ギリシャ国民からの政府への不満も無視できない状況にある。またシリザの内部でも、トロイカが描いたロードマップについて見解の相違が顕著になっているという。
 
また、トロイカが要求している公営事業の民営化も計画通りには進んでおらず、チプラス政権はその修正案の承認をEU委員会に求めている。それが容認されない場合は、来年総選挙を実施すると彼は仄めかしている。しかし、仮に総選挙を実施すれば、EU委員会が望んでいる新民主主義党が政権に復帰する可能性が強いということをトロイカ知っており、チプラス首相のEU委員会への説得力は半減している。そこで、チプラス首相は内閣改造に踏み切った。サカロトス経済相が依然継続するが、チプラス首相が信頼を寄せる人物も同経済相の側近につけてトロイカからの定期的審査を容易にできるように配慮した人事を行った。
 
また、難民問題担当も大臣に格上げした。ギリシャでは62,000人の難民を保護しているが、その受け入れ国がないために深刻な問題になっており、EU委員会の更なる協力が必要になっている。

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