2015/10/08    19:33

大東亜戦争の意義を語るなら、シリア難民は無視できないはずだ

ヨーロッパ各国に押し寄せるシリアからの難民の受け入れが大きな問題となっている。シリアでは5年近く続く内戦によって約400万人が難民として国外に流出し、国内でも家を追われて流浪生活を送る人々が約650万人(8日付・読売新聞)。内戦による死者は20万人を超えている。
 
過激派組織「イスラム国」の掃討を目指しているアメリカは、アサド政権にも退陣を迫る姿勢を崩していない。しかし、「イスラム国」の壊滅までは数年かかる見込みで、そこからアサド政権とも対峙するとすれば、シリア情勢の決着まで、まだかなりの時間がかかることが予想される。シリアでは内戦前に2000万人の人口がいたが、内戦後には一体どのような国が残るのだろうかと思うと、ここまで状況を放置してきた国際社会の機能不全を嘆かずにはいられない。
 

保守派は難民に冷たくてもいいのか?

日本の言論の世界で不思議なのは、シリア難民の問題について、いわゆる保守と言われる側から人道的な立場を考える議論が活発に出てこないことである。保守派の信頼が厚い安倍晋三首相も、国連での演説後の記者会見で、この問題について要領を得ない回答をしていた。

そして、今回の難民に対する対応の問題であります。これはまさに国際社会で連携して取り組まなければいけない課題であろうと思います。人口問題として申し上げれば、我々はいわば移民を受け入れるよりも前にやるべきことがあり、それは女性の活躍であり、あるいは高齢者の活躍であり、そして出生率を上げていくにはまだまだ打つべき手があるということでもあります。同時にこの難民の問題については、日本は日本としての責任を果たしていきたいと考えておりまして、それはまさに難民を生み出す土壌そのものを変えていくために、日本としては貢献をしていきたいと考えております。
(首相官邸ウェブサイト 「平成27年9月29日内外記者会見」 2015/09/29)

安倍首相は日本の難民受け入れについての記者の質問に対して、難民の問題を「人口問題」にすり替え、受け入れの前に日本国内ではやるべきことがあるという議論をしている。しかし、経済的な理由などから日本への移住を希望する移民と、自国での迫害や生命の危険から逃れるために他国へ移らざるを得なくなった難民とでは、問題の切迫度も性質も違う。同じ土俵で論じるのは、適切とは思われない。海外メディアも、「日本は難民救済という人道問題よりも、国内問題を優先する国なのだ」というトーンで報じた(参考: )。
 
国連での演説で、安倍首相は難民問題について約1000億円もの経済支援を表明している。そうした姿勢を打ち出した後の会見で、「難民に冷たい」という印象を与えてしまったとすれば、首相も不本意だろう。
 
日本で難民問題に積極的なのは、朝日新聞などのいわゆる「左翼」の側と言われる。反対のいわゆる「保守」の側では、在日の排斥を訴えるグループや、いわゆる「ネトウヨ」などが、その主張の過激さゆえに目につくことが多い。彼らの主張が、(真偽はどうあれ)「保守の側は自国優越主義で他民族に冷たい」という印象を広げていることは否めないだろう。しかし、それでは「保守」の側は、難民問題を人道的な側面から考えなくてもいいのだろうか。国際社会の状況がどうあれ、あくまで日本は自国の国益「のみ」を追求し、難民には門戸を閉ざしていればいいのだろうか。そうした点が気になったので、試しに考えてみたい。
 

歴史認識で見るシリア難民

歴史認識について言えば、朝鮮や台湾の発展を助けた先人たちを誇りに思い、アジア解放のために大東亜戦争を戦った英霊たちを顕彰するのは、いわゆる「保守」の立場と言われている。日本は朝鮮半島で、学校建設やインフラ整備などを積極的に行い、朝鮮が自ら成し得なかった近代化を手助けした。台湾でも近代化政策が取られ、ダムの建設に携わった技師の八田與一ら優秀な日本の人材が、現地住民の民生の向上に努めた。住民を搾取するだけの欧米植民地とは大きな違いがある。そして、敗戦はしたものの、日本は大東亜戦争で「東亜の解放」を掲げ、実際に戦後はアジア・アフリカの旧欧米植民地が次々と独立を遂げていった。
 
このように、自らの身も顧みず、祖国である日本の防衛のために、そしてアジアの発展のために尽くした先人を誇りに思うということは、日本の「保守」と言われる人々の多くが共通して持っている心ではないだろうか。
 
そして当時の祖先らがそうした行動を取った背景の一つには、「八紘一宇」というキーワードがあったことが思い出される。そうであったからこそ、戦中の日本は、同盟しているナチス・ドイツの方針さえも無視して、ユダヤ難民の保護に努めた。当時は、アメリカやイギリスなどの国々もユダヤ人の受け入れに消極的で、難民船の入港を拒否する事件もあった――その船はヨーロッパに戻り、乗っていた人々の多くのが、ドイツで収容所送りになった(セントルイス号事件)。そうした中で日本は、人道的に難民に対処したのだ。

歴史家の平間洋一氏は、人類皆兄弟と思うこの「八紘一宇」という思想こそが、日本のアジア政策の底流にあったと指摘。このことが、日本がユダヤ人保護に積極的に乗り出した要因だとして、次のように論じている。

日本のアジア主義も列国と同様な自己中心主義であり覇権主義であった。しかし、日本のアジア主義で特記すべきことは、「人類はみんな兄弟」と地球上の人類を総て家族と考える「同胞主義」の「八紘一宇」の大家族主義が根底にあったことである。これを示すのが、日本が世界でユダヤ人を保護した数少ない国である、という事実ではないであろうか。(中略)
 
日本では外務省の訓令を逸脱して大量のビザを発行し、六、〇〇〇名(推定)を救出したとして「正義の人賞(ヤド・バシェム賞)」を受けた杉浦千畝が有名であるが、二万名以上のユダヤ人を救出したハルピン特務機関長の樋口季一郎陸軍少将、大連特務機関長の安江仙弘陸軍大佐、上海特務機関長の犬塚惟重海軍大佐などは軍人であったためか、日本では無視されあまり知られていない。この樋口と安江の二名の名前はユダヤ民族の恩人を永久に称えるためエルサレムの丘に建立された記念碑ゴールデン・ブックに一九四一年一一月一日に名前が刻まれている。しかし、樋口少将などのユダヤ人救済活動が可能だったのは、三八年一月二一日に関東軍(参謀長東条英機)が、樋口少将や安江大佐の意見を入れて、日本や満州両国のユダヤ人に対して「八紘一宇ノ壮大精神ニ抱擁統合スルヲ理想トス」との「猶太人対策要綱」を決めていたからであった。それだからこそ、シベリア鉄道経由でソ連国境まで逃れて来たが、入国を拒否されて吹雪の中に立ち往生していた約二万名(数千名程度ともいう)のユダヤ人難民を樋口少将や安江大佐が関東軍や南満州鉄道などの協力を得て、三八年三月に救出できたのである。
 
その後、この「猶太人対策要綱」は太平洋戦争が始まると、米英系のユダヤ人が利敵行為を行うことを恐れて破棄されたが、日本軍は「全面的にユダヤ人を排斥するのは、諸民族の融和を説く八紘一宇の国是にそぐわない」と、日本軍占領下の上海がビザなしで渡航できることから、ユダヤ人難民がシベリア鉄道でハルピンを経由して陸路上海に向かうルートと神戸経由で上海に向かうルートを閉ざすことはなかった。このため終戦時には二万五〇〇〇名近いユダヤ人が上海に亡命して来たが、この数字はカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどに亡命した全ユダヤ人よりも多い。
(平間洋一 『イズムから見た日本の戦争』 錦正社 pp. 312-313)

もし人類を「みな同胞」と思う思想が当時の日本になかったならば、現代の保守派が誇っている朝鮮や台湾の統治、そして東亜の解放を助けるという戦争の大義が、いま知られているようなかたちになったかは分からない。そして、「八紘一宇」の名のもとにユダヤ人を助けた英霊たちならば、難民の受け入れを危険視し、拒絶反応を示すような現代の保守派がいたとして、どのような目で見るのだろうか。
 
「左翼」の側はこれまで、慰安婦問題や南京事件といった虚構の問題で、“人道的に”謝るようあまりにも執拗に求めてきた。そのことによって、「保守」の側では、「人道的な配慮」が求められる問題のすべてが、日本を貶めるための「計略」のように見えるようになってしまっている可能性もある。しかし、戦前の日本が「人道」にそっぽを向くような国であったなら、保守派が誇るような歴史の偉業はあり得なかったに違いない。

靖国神社に参拝することだけが、英霊の顕彰ではない。現代の私たちにとっては、先人たちがどのような国を目指していたのか、その思いに目を向け、そこから得られる教訓を考えることが大切なのだと言える。そうした点からすれば、シリア問題も、違った視点で見えるはずだ。
 
確かに、シリアの難民を地球の反対側から大量に受け入れることは、現実的ではないだろう。しかし、難民をいたずらに危険視するだけの議論はやめ、不幸な立場に置かれた人々を少しでもいたわる心を持つことはできる。そして、日本にできる貢献について、考えることもできる。そうした態度こそが実は、英霊の思いを汲むことにもなるのではないだろうか。英霊の顕彰を大切にする保守派ならば、「八紘一宇」を大切にした先人たちの思いに思いを馳せ、難民問題にも目を向けるべきだ。試みに、そんなことを考えた。

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