2016/02/23    08:00

「イスラエルは10年で消滅する」――キッシンジャー発言を考える

イスラエル西岸地区に建設されている分離壁。


2012年、キッシンジャー元国務長官が「10年後の2022年にイスラエル国家は消滅する」と発言した。そして米国の16の情報機関がイスラエルがいなくなったあとの中東について、82ページの分析書を作成したという。

イスラエルが中東で存続出来ているのは米国の支援があるからというのは明白である。安定した情勢を維持するのが非常に難しい中東で、イスラエルが米国の支援なくして存在し続けることは困難だ。

1967年に第3次中東戦争でイスラエルが奪ったパレスチナ領土にイスラエル人の入植者が40万人とも70万人とも言われている。今もイスラエル政府は入植活動を続け、しかも「壁」を建設し、入植者を守ろうとしている。パレスチナ領土に強引に入植するイスラエル政府の姿勢に世界から非難がますます強くなっている。そして、そこではパレスチナ人とイスラエル人の衝突が激化している。

今年1月にも、イスラエルはヨルダン川西岸地区の肥沃な土地を横領する意志を固めたという。パレスチナのジェリコとヨルダン渓谷をイスラエルが軍事地帯としている54%の領土と22%の自然保護地区、さらに入植している16%の領土をイスラエルは占領しようとしているわけだ。即ち、残り8%がパレスチナ人の領土となるだけであるという。PLOの組織委員長のサエブ•エレカ氏は「イスラエルはパレスチナから土地と水を奪っている」と非難した(スペイン紙「ラ・バングアルディア」)。

米国においてもイスラエル擁護派のロビイストの力も、今はかつてほどない。特に、ユダヤ系の若者の間ではイスラエルを特別に支援する気持ちは薄らいでいるという。そんな中で、米国政府がイスラエルにだけに軍事的、そして資金面で特別に偏って優遇していくことはこれから難しくなるという。

昨年、核協議の合意を達成したイランは、制裁を解除された。イランは中東での勢力の拡大に積極的に動き始めている。イランにとって、イスラエルは中東における異物としての存在であり、イスラエルが存在することは彼らにとって堪えられないことなのである。またパレスチナ自治政府もイスラエルとの戦いを激化させる方向にある。しかも、ガザ地区のハマスはイランからの支援を受けている。更に、ガザ地区にはイスラム国を支持する過激派組織も誕生している。その一方でパレスチナ住民は物資も不足し厳しい生活を余儀なくさせられている。

キッシンジャー氏は、上に挙げたそれぞれの動きが堆積し、10年後に一挙にそれが爆発して、アラブの強烈な波がイスラエルを洗い流し、国家消滅に向かう、と想像しているようだ。
 
イランの最高指導者ハメネイ師は昨年9月に「イスラエルは25年以内に存在しなくなると発言」している。
 
中東で、イスラエルと同盟を結んでいる国はヨルダンとサウジアラビアだけである。イスラエルのサウジアラビアとの同盟関係は秘密裏に進められていた。しかし、イランが核協議の合意を達成してからは、イランの脅威を強く感じるイスラエルとサウジアラビアの結束はより強くなっているという。イランが支援するイエメンのシーア派とのサウジアラビアの紛争にもイスラエルはサウジアラビアに軍事面で協力している。

そして、これにトルコが加わって、イスラエルとの関係を復活させようとしている。その動機となったのはロシアからの脅威と制裁だ。昨年11月にトルコ空軍がロシアの戦闘機Su-24を撃墜したことに端を発して、ロシアはイスラエルに制裁を課すことを決め、その実施が今年1月から行われている。ロシアは報復としてトルコを攻撃することも検討したという。しかし、トルコはNATOに加盟しており、トルコに攻撃を加えるとNATOを相手にせねばならなくなる。そこでプーチン大統領が考えたのが制裁の適用だ。トルコからの野菜、果物、軽工業品などの輸入が禁止され、トルコ企業やトルコ人のロシア国内での活動も制限されることになった。

そんな事情に置かれたトルコにとって非常に重要な国家問題のひとつが天然ガスの輸入ルートの確保である。トルコは天然ガスの国内消費の60%をこれまでロシアからの輸入に依存していた。それに代わる輸入ルートの開拓が早急に必要となったのある。そこで真っ先に検討されたのが世界2位の埋蔵量をもつカタールからの輸入、そしてもうひとつがイスラエルからの輸入である。

トルコとイスラエルは1980-1990年代は相互に親密な関係を維持していた。エルドアン大統領が結党した公正発展党(AKP)が2002年に政権に就いてからもイスラエルとは一定の外交関係を維持していた。しかし、2010年にNGO船「マビ・マルマラ号」がパレスチナのガザ地区に向かう途中、封鎖されているガザ地区に武器などを持ち込むのではないかという疑いからイスラエル軍が拿捕し、それに抵抗した乗員を発砲するという事件が起きた。結果はトルコ人が9人死亡するという事態になった。それ以後、両国の関係は冷却。双方で賠償問題の交渉は進められ、イスラエルは2,000万ドル(24億円)の賠償をトルコに約束したという。

また2013年3月にはオバマ大統領の要望でネタニャフ首相はエルドアン大統領(当時首相)にも謝罪した。両国の関係は復活しないままになっていたが、トルコがロシアから制裁が課せられるという段になって、状況は急変。トルコがイスラエルに接近したのである。トルコはエルドアン大統領の臨機応変な判断によってカタールとイスラエルからの天然ガスの輸入ルートを確立させた。

両国の関係を円滑にさせるためにも、トルコはガザ地区のハマスを支援している関係から、イスラエルにガザ地区の封鎖解除を求めている。しかし、ガザ地区にイスラム国と関係をもつ過激派組織が最近誕生してハマスとも対峠関係にある。その為、イスラエルにとってガザ地区の封鎖解除は同国の安全を考えると更に難しくなっているのが現状だ。トルコはイスラエルの置かれている現状を理解するであろうと言われている。

中東におけるイスラエルは、孤立化を避ける為にヨルダンとサウジアラビア以外にトルコを味方につけたことになる。

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