2016/04/20    08:00

決戦投票へもつれこんだ、ペルー大統領選――フジモリ(父)政権の評価を考える

1995年の大統領選挙で勝利したフジモリ元大統領と、娘のケイコ氏。


4月10日に行なわれたペルーの大統領と一院制議会選挙でケイコ・フジモリ(40才)は39.18%を得票。それにペドロ・クチンスキー(77才)の21%とベロニカ・メンドーサ(35才)の18.82%が続いた。過半数の得票率を獲得出来なかったことから、6月5日に上位2人の決戦投票が予定されている。また、定員130人の一院制議会は、ケイコ・フジモリが率いる政党フエルサが60議席を獲得した。
 
ペルーは15世紀に最盛期を迎えたインカ帝国の中心地であり、歴史遺産マチュピチュで世界的に有名だ。金、銀、亜鉛、鉛、銅などを鉱物資源が豊富で、石油と天然ガスも産出する。また漁業も盛んである。現在のペルーはメキシコ、コロンビア、チリとで構成している太平洋同盟の一員でもある。日本のラテンアメリカにおける産業経済面での入口としてこの太平洋同盟が中心的な存在になっている。
 
アルベルト・フジモリ大統領に次いで、彼の長女のケイコ・フジモリが大統領になるのかどうか興味深いところである。しかし、アナリストの間では、クチンスキが僅差で勝利するであろうと予想されている。その理由はベロニカ・メンドーサの大半の票田がクチンスキに流れる可能性が強いと予想されていることと、国民の間で反フジモリ派が今も根強く存在しているということからだ。
 
例えば、ケイコ•フジモリには絶対に票を入れないと言う選挙民が49%もいるという。その53%は、父親のアルベルト・フジモリが行った政治に反対だったことから彼女を敬遠しているのである。彼女が大統領になれば服役中の父親に恩赦を与えるはずなので、尚更、彼女に票を入れないという(「Infobae」)。
 
果たしてアルベルト・フジモリ大統領が行なった政治は悪かったのであろうか。
 
彼の政権は1990年から2000年まで続いた。彼が政権に就く前のガルシア大統領の政権は、当時のラテンアメリカが深刻な経済低迷にあった時で、ペルーもその例外ではなかった。ガルシア政権は人民革命と称して銀行の国有化やIMFへの債務返済を勝手に遅らせたりして国内経済の復活を目指した。しかし、経済は逆に悪化の一途を辿りインフレ8000%という事態にまで深刻化した。
 
しかもIMFへの債務の返済遅延で外国からの投資はなく、国家破綻の寸前にまでになっていた。また社会的にもゲリラ組織センデロ・ルミノソが勢力を拡大して治安は乱れ社会不安は増大していた。
 
そのような不穏な情勢の中で、アルベルト・フジモリ大統領が誕生した。彼はガルシア前大統領とは反対にIMFの指導に基づいて国有財産の売却や鉱物資源などの開発のために、外資の導入を積極的に進めた。ガルシア政権とは正反対の政策を実行して行ったのだ。それによってペルー経済は立ち直りを見せたのである。
 
しかし、ペルー議会はガルシア前大統領の親派など反対勢力が強く、彼の望む通りの政策が実行出来ないでいた。そこで1992年4月5日にフジモリ大統領は、軍部の協力を得て「セルフクーデター」を行なったのある。議会を解散させ、国家非常事態の宣言をして戒厳令を敷いた。さらに憲法の機能を停止。そうして大統領の権限でゲリラ組織センデロ・ルミノソにもメスを入れた。
 
それには彼の参謀的なモンテシノス国家情報局顧問と軍部の協力があった。
 
セルフクーデターに対しては世界からの批判が強く、アメリカは人道面以外の支援は中止した。またヨーロッパやラテンアメリカはそれぞれ異なった反応を見せたが、全てそれは批判に基づいたものであった。しかし、これがその後のペルーの政治経済の回復に繋がった。ただ、今も世論はセルフクーデターという非民主的な行動を選んだことで、今もフジモリ大統領を批判する。
 
また、ペルーの治安を不安にしていたゲリラ組織センデロ・ルミノソは麻薬とも癒着していたが、貧困者を救済するのをその設立の根底においていた。それまでペルーでは、10%の白人が国の富の大半を享受し、それに白人と原住民のメスティソがその残りの富を分配していた。しかし、原住民にはそれが行きわたることはなく貧困層を構成していた。フジモリ大統領は原住民の貧困対策のひとつとして出生率を低下させることを目的に、強制的に避妊手術をさせた。それが後になって人権犯罪となって罪を被されたのである。
 
フジモリ大統領は特に貧困層への救済に強い関心を持っていたという。彼は熱心に貧困地域を訪問して彼らを励ました。それを実行した大統領は今まで誰ひとりいなかったという。
 
しかし、彼が政治的判断を誤ったのはセルフクーデターの後に制定された新憲法を使って3度目の立候補を果たしたことである。
 
旧憲法では2期しか大統領職は勤めらない。そこで、彼は新憲法では最初の立候補だとして3度目の大統領就任を果たしたのである。それが米国を始め国際社会からまた批判されるようになった。そしてその攻撃は次第に激しくなった。彼への攻撃のネタとして表面化したのが、彼の参謀的な役目を担っていたモンテシノスが議員を買収している映像が暴露された事件である。それに端を発して贈賄への疑惑が大統領にも降り掛かるようになった。そして国民からも支持を失い、訪日中に辞任を決めたのである。
 
フジモリ大統領は経済を立て直し、それまで乱れていた治安の安定に貢献した業績は高く評価されるべきである。しかし、ケイコ・フジモリ氏が大統領選挙に臨ぶに及んで、アルベルト・フジモリへの批判はまた再燃した。
 
ただ、ケイコ•フジモリ候補に反対する理由は、彼女も父親と同じ政治路線を歩むからだという漠然とした理由からである。彼女に反対する、現在スペイン在住のノーベル文学受賞者のバルガス•リョサは、アルベルト・フジモリと大統領選挙を争った人物だ。その彼は今パナマ文書のオフショア企業に名前を連らねていることが判明し、自らの脱税行為の釈明に必至で、ケイコ・フジモリを批判する余裕はなくなっている。
 
一方で、ケイコ・フジモリを支持している選挙民は、まさに彼女の父親が果たした治安の安全回復や犯罪の取締りなどを支持し、彼女は他の候補者よりも上手くやってくれると期待している。彼女の父親に協力していた人材が彼女の政策ブレーンとして協力することもを約束しているからだ。
 
彼女と決戦投票を争うクチンスキは、かつて世界銀行に勤務したことがあり、大臣の経験もある。今回の選挙では外国からの投資を促進させることを強調している。
 
フジモリ支持派とクチンスキにメンドーサらが連合した反フジモリ派の決戦投票の行方を見守ることにしよう。

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