2016/05/28    15:00

ロシアとドイツを直接結ぶパイプラインを阻止する動きが活発化

2010年、「ノルド・ストリーム」の着工記念式典に臨むロシアのメドヴェージェフ大統領(当時)。


昨年12月の年度末の欧州連合会議でイタリアのレンツィ首相が、ロシアとドイツを直接結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」の建設に強い不満を表明してメルケル首相と激しく口論するという場面があった。

メルケル首相は、このパイプラインは企業間の交渉によって生まれたもので、ドイツ政府の直接関与はしていないとしてレンツィ首相の攻撃をかわした。それに対して伊首相は、このパイプラインの建設はEU全域に関係したテーマであるとしてEU加盟国の間で先ず協議されるべきだと主張した。

その後、レンツィ首相の主張に味方が現れ、「ノルド・ストリーム2」の建設に反対する動きが強くなっている。

まず、5月5日に米国のケリー国務長官は、EUのモゲリニ外交安全保障上級代表との会談を利用して、現在ロシアとドイツを繋ぐ「ノルド・ストリーム2」の建設はウクライナ、スロベニア、他東欧諸国にネガティブな影響をもたらすようになることを懸念していると表明した(「Mundo」)。

同じく、このパイプラインの建設に反対を表明したのがラトビア、リトアニア、エストニア、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、スロベニアなどで、「ノルド・ストリーム2」の建設によってEUが天然ガスでロシアへの依存度が更に高まることと、自国をパイプラインが通過しないことで通過料の歳入が得られないとして反対している。

ロシアからの天然ガスの供給はEU加盟国間のほぼ40%を占めているという。しかし、バルト三国の場合は100%依存している。2011年までは、その80%はウクライナを経由して供給されていた。しかし、ウクライナは自国の経済問題などからロシアへの未払いが生じ、またヨーロッパに供給する分の一部を掠め取ったりという事態が発生していた。

そこでロシアとEUは、ウクライナを経由せずにロシアからの天然ガスの入手ができるルートの開拓を進めた。それが「ノルド・ストリーム」と「サウス・ストリーム」の建設であった。前者はロシアのブイボルグとドイツのグライフスワルトの2都市をバルト海の海底を通して直接結ぶパイプラインで既に建設済みで、2011年11月から嫁働している。後者はロシアから黒海の海底を通過してブルガリア、セルビア、ハンガリー、スロベニア、イタリアに繋ぐルートだ。

しかし、ロシアから最初に天然ガスが到着するブルガリアがこの建設の認可を下さないという事態が長く続き、プーチン大統領は結局このルートの建設を諦めて、トルコ経由でヨーロッパに天然ガスを供給する計画を進めた。そして、2014年12月にトルコとこの合意が交された。しかし、その後のロシアとトルコの外交関係に問題が生じて、この計画も中断したままになっている。
 
総工費160億ユーロ(1兆9200億円)のサウス・ストリームの建設中止で一番被害を受けた国がイタリアであった。南ヨーロッパではサウス・ストリームの中止で、それに代わる供給ルートがまだ完全に固まっていない。

当初、イタリアはサウス・ストリームの建設には、イタリアの半官半民の石油ガス企業ENIがこの建設コンソーシアムに30%の資本で参加した。その系列会社のSaipemは海底でのパイプライン設置で20億ユーロ(2400億円)の契約も受注していたのだった(「Voltairenet」)。

一方のドイツは、「ノルド・ストリーム2」の建設は原発の全廃を計画していることから国内での天然ガスの需要が増大しているという理由もあるが、「ノルド・ストリーム2」によって北ヨーロッパは天然ガスの供給が充分に満たされることになる。
 
それではなぜ、このサウスパイプラインの建設が中止となったのか。その理由は、ウクライナ紛争が発端となってロシアが欧米からの制裁を受けた際に、ブルガリアがパイプラン建設に契約していたロシアの企業Stroytransgazが米国の制裁対象リストに載っている企業だとして米国がブルガリアに圧力をかけて同社との契約破棄を要求したからであった。

しかも当時のEU委員会のバロッソ委員長は米国の味方になり、このパイプライン建設工事の入札に違法があったとしてブルガリア政府を訴えた。それでブルガリア政府はこのプランの中断を決めたというのだ。それは同国にとって、毎年5億ドル(575億円)の歳入に繋がることを放棄することを意味した(「Voltairenet」)。

この一部始終を熟知していたイタリアのレンツィ首相は、ドイツの「ノルド・ストリーム2」の建設には内心強い憤りを感じていたようである。しかも、「ノルド・ストリーム2」はドイツ政府が先頭に立って決めたものではない。ガスプロムとEUの企業レベルでの合意であるとされてはいたが、ドイツのゲアハルト・シュレーダー元首相がノルド•ストリーム社の社長に就任しているということからも推察出来るように、ドイツのメルケル首相とロシアのプーチン大統領との後押しがあって「ノルド・ストリーム2」の建設が合意に繋がったことは明白である。

一方のレンツィ首相はサウス・ストリーム中止で自国の最大企業EMIも巨額のビジネスチャンスを失い、しかもイタリアを結ぶガスパイプランの建設が具体化されたものはまだ存在していないという事情下にある。

そして、今月5日の冒頭のケリー国務長官のこのパイプライン「ノルド・ストリーム2」の建設にネガティブな反応を見せて、この建設が複雑化していることが表面化している。しかし、ケリー長官の発言の裏には米国が液化天然ガスを今年4月に初めてヨーロッパに輸出したことが意味深長に含まれている。

4月下旬に、その最初の船がポルトガルに入港した。ケリー長官の発言に含まれている意味は、米国がヨーロッパへのLNGの輸出を将来的に狙っているということである。

TOP NEWS

解明されてきた真相

2017/08/30  12:24

どうしてバルセロナでテロが発生したのか。

今そこに危機があるのに

2017/08/25  08:00

地球外からの攻撃に人類は一致団結できるか

Appleより優秀な人材が集結?

2017/05/16  14:05

電気自動車の先端を行くテスラモーターズ

早急に業務時間改善と意識改革を

2017/05/31  14:05

教員は子供の成長に寄与することが本来の仕事

ACCESS RANKING

1

スペイン発 ファッションの国際競争

ZARAのライバル、MANGOをご存知ですか?

2

アメリカの自動車王に学ぶ「経営に貫かれる奉仕

ヘンリー・フォードの経営思想

3

あれ、自分ってナニジンだっけ?

「親日の在日」として――アイデンティティの問い

4

観光国としての実績は確か

世界の観光客を集める国、スペイン

8

指揮官である首相の参拝は中曽根首相以降、朝日

靖国神社に参拝する防大生

1

スペイン発 ファッションの国際競争

ZARAのライバル、MANGOをご存知ですか?

2

アメリカの自動車王に学ぶ「経営に貫かれる奉仕

ヘンリー・フォードの経営思想

4

指揮官である首相の参拝は中曽根首相以降、朝日

靖国神社に参拝する防大生

6

観光国としての実績は確か

世界の観光客を集める国、スペイン