2016/11/19    14:01

シリアで後手にまわったオバマ政権――ペンタゴンとCIAの対立も

オバマ大統領は歴代の大統領の中では政治執務の経験が浅いまま大統領になったということで、官僚組織と軍事組織を掌握する能力に欠けていた。しかも、彼の外交の根底にあるのは、米国の利益を求めて当初から武力で訴えれば不幸な結果を招くことになるという考えである。
 
それは、ブッシュ前大統領の強引に武力に訴える外交から生じた問題を目撃しているからである。しかも、武力に訴えれば、多額の支出を招くということもオバマ大統領は避けたいという考えであった。それ故に、外交ではまずじっくりと交渉を重ねる手段を選んだ。それが、ペンタゴンとCIAには弱腰外交と映っていた。
 
例えば、オバマ大統領はシリアのアサド政権に対して、「化学兵器を使えば、それはレッドラインを踏むことを意味する」といつも警告して、必要とあらば武力介入する構えを見せていた。しかし、それが実際に起きた時も、オバマ大統領は理由をつけて武力介入をしなかった。これには米軍やアラブ諸国そしてトルコも失望したという。なお、この化学兵器の使用はアサド政府軍ではなく、トルコが米国の介入を望んで仕掛けたものと憶測されている。そして、その背後にはCIAがいたとされている。当時のCIA長官は陸運大将で退官したデイヴィッド・ペトレイアス氏である(「al manar」)。

 
彼はその後、不倫スキャンダルで長官を辞任するが、その後もCIAはペトレイアスの動きを踏襲して、オバマ大統領に背を向けて独自のシリアでの戦略を展開していた。ヒラリー・クリントン元国務長官もペトレイアス氏を支持していた。
 

国防長官のアシュトン・カーター氏。


長引くシリア内戦に関する分析として、米国のロン・ポール研究所のネットにジャーナリストのエリック・マーゴリス氏の論文が掲載されている。その論文は以下のような内容に要約できる(「instituto ron paul」「EricMargolis.com」)。
 

  • オバマ政権における国防長官の力量不足と大統領を囲む惰弱な戦略担当の軍人指揮官らのせいでオバマ政権のシリア外交はコントロールを失い、その代わりにペンタゴンとCIAが対立して、双方がそれぞれ異なった反政府武装派を支援して戦っているという状況が続いている。長引く内戦で、45万人のシリア人が犠牲者となり、人口2300万人の半数が難民と化し、美しい国を破壊している、と述べている。
  • 更に、シリア政府に対抗するイスラム国は米国、サウジアラビア、トルコが武器と資金を提供。そして、イスラム国がパトロンの敵となってもまだその存在を利用できるとして米国はイスラム国を壊滅させないでいる。またアラブの反政府武装派勢力が戦闘能力において弱いと見るや、CIAはシリアのクルド人民防衛隊(YPG)を誘った。YPGはトルコでクルド独立を訴えるクルド労働者党(PKK)の分派である。この誘いが今度はトルコと対立を生むようにもなった。
  • そして米国主導のNATO加盟国であるトルコは長年PKKと戦い続けているが、そのトルコがPKKの分派であるYPGと戦う羽目になった。そして、最近起きたトルコでのクーデター未遂は米国政府ではなく、CIAと対立しているペンタゴンの仕業であると見られている。
  • 昨年からロシアがこの紛争に加わって空爆を始めたのはイスラム国を目がけたのではなく、米国が支援している反政府武装派に向けての攻撃であった。米国にとって腹立たしいのは、数十年かけて中東での支配を試みて来た努力を、突然現れたロシアが横取りしようとしていることである。


以上がこの論文の要約である。
 
CIAがイスラム国にも武器と資金を提供。その一方で、ペンタゴンはイスラム国と戦闘を繰り返している。この矛盾が米国の中東外交を複雑なものにしているのである。しかも、オバマ大統領にはこの二つの組織を連携させて統一する力量に欠けている。
 
その一方で、米国がイスラム国を壊滅したくない理由が二つある。ひとつは中国のシルクロードの回廊にシリアが入っており、シリアの内戦が続く限り、この回廊はシリアで遮断されたままになる。これは中国の進展を阻止するという意味で米国が求めているものである。もう一つの理由は、イスラム国が存在する限り、シリア政府軍はイラン革命防衛隊と協力してイスラエルを攻撃することに勢力を向けられない状態が続くことになるということである。これは米国にとって、同盟国のイスラエルを防衛する意味で重要である。
 
オバマ大統領自身もペンタゴンとCIAが大統領の意向にそぐわずに、それぞれが主観的に米国の軍事外交を行っていることに苛立ちを覚えていた。その具体的な表れが、2014年12月のチャック・ヘーゲル国防長官の解任とアシュトン・カーター氏の同長官ポストの就任である。アシュトン氏はクリントン元大統領の政権下でペンタゴンに勤務した経験があり、軍部の動きを統制しようとする狙いがある(「elOrdenMundial」)。

 
オバマ外交のこの統一の乱れが、ロシアのプーチン大統領がイランそしてシリアを介して中東支配に布石を打つ動機を与えている。最近はサウジアラビアと原油価格の統制で協力することを縁に、両国の関係が深まっている。ロシアの大胆な野望は中東においてイランとサウジアラビアを和解させることである。それを基盤にロシアは中東でのリーダ国として君臨することを狙っているという。
 
また、ヨーロッパに大量のシリア難民が流入したのも、オバマ外交のシリア内戦に取り組む対策が後手後手であったことが要因としてある。
 
 

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